第三章 掃討作戦(4)
作戦は、『最大限の効果』の評価で幕を閉じた。
掃討部隊の被害は、死者ゼロ、負傷者ゼロ。使用弾薬数は、通常の同等作戦における使用数の六分の一。
現地暫定作戦評価ミーティングをしている向こうで、村が燃えている。
結局、小屋に隠れた山賊をあぶりだすために、何発ものナパーム弾が撃ち込まれた。
たまらずに飛び出してきたものは、一人残らず、シャーロットが倒した。
ありていに言って、皆殺しだった。
「ウィザード部隊の尽力に感謝する。まずは、早々に帰投行軍を開始しよう。これから十分間の準備時間の後、行軍開始!」
イバンはアルフレッドを含めた五人の前で彼らをねぎらい、それから号令をかけた。
隊員たちは、たいして使いもしなかった銃弾薬を行軍サックに安全に収め、いそいそと帰り支度を始める。
笑顔で戦果と無事を喜び合う声も聞こえる。
そんな中、ウィザード部隊の誰もが、呆けていた。
東部でミネルヴァと新連盟の小競り合いばかりを経験してきた彼らにとって、非戦闘員が関わる戦闘は初めてだった。
そしてその初めての戦闘で、非戦闘員も含めて皆殺しにしてしまうという悪夢のような経験をしてしまったのだ。
笑ったり冗談を飛ばしあっている周りの兵士たちは、一体何者だ?
目の前で、抵抗するでもない人々が殺されたんだぞ?
僚友がそれをやったんだぞ?
彼らにとって、『武装勢力の掃討』とは、つまり、こういうことなのか?
様々な疑問がアルフレッドの心の内に湧いてくる。
まだ震える体を支える心には、シャーロットの無表情がむしろ頼もしかった。
やがて、準備のためのわずかな十分は過ぎ、兵士たちは立ち上がった。
前に進む心の準備の済んでないアルフレッドを残して。