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さん

 昔々……といいたいところですが、実際は十年ほど前のお話です。

 ある国の王様とお妃様はなかなか子供を授かりませんでした。

 理由はわかりません。しかし、二人が夫婦になって四年間、一度もそのような話はなかったのです。


 とても仲の良い王様とお妃様。


 それは国中の人達が知っていました。

 王様に使える国の宰相様もこのことに大層心を痛めておりました。いつもお二人を近くで見守っていたため尚更です。

 意を決して宰相様は魔女がいるという山に行き、一つのお願いをしました。


「どうか、王様とお妃様に御子をお授けください」


 本来、魔女に頼み事をするには対価が必要でしたが彼女は何も望みません。まだ、何もいらないと断られてしまいます。

 宰相様から視線を外した魔女は微笑みながらこう言いました。


「もう既にお妃様のお腹には新しい命が宿っていますわ」


 お城に帰って早速、お妃様を侍医に診てもらうと魔女の言う通り子を授かっていました。

 皆が待ち望んだ、お二人の子供です。


 国中の人が期待する中産まれたのは、真っ白な肌と銀色の髪を持った、それはそれは愛らしいお姫様でした。

 雪降る季節に産まれたお姫様は、銀の髪と青い瞳という雪の妖精のような見た目もありまして、王様は雪にちなんだ名前を付けることにしました。

 しかし、その名前もすぐに呼ばれなくなってしまいます。


「なんで?」


 それまで老人の話を静かに聞いていた少年は、不思議そうに訊ねました。

 せっかくもらった名前を呼んでもらえないなんて、どれだけ寂しいだろうと、少年は自分のことに置き換えて考えてしまいます。やはり、悲しくなってしまいました。

 そんな少年を見た老人は優しく頭を撫でながら、哀しそうな声で答えます。


「……悪い魔法使いに呪いをかけられてしまったんだ」


 王様とお妃様の元で子供が産まれたことを知った悪い魔法使いは、お姫様を見ると一つの呪文を唱えました。

 するとどうでしょう、お姫様は急に眠りについてしまったのです。

 先程まで元気よく泣いていたというのに、静かに寝息を吐いています。これだけでしたら、寝かしつけてくれたのだろうと思えましたが、とても信じられない事を魔法使いは言いました。


「姫に一つの呪いをかけました。これから姫は、雪の降る間だけ目を覚ますことになるでしょう」


 今居るお姫様の部屋から姫自身を出すこともいけない。もし言ったことを守れないのなら、一月も経たずに死に至ってしまう、と。


 王様は魔法使いを罵りました。


 当たり前です、やっと生まれた我が子が死んでしまうかもしれない呪いをかけられてしまったのですから。

 しかし、魔法使いはそんなことは知らないとばかりに、王様の目を見ます。


「姫の部屋に出入りできる者は世話をするただ一人だけ。それも生きるに必要な世話以外で部屋にいることは禁じます。そして、このままだと姫は十六歳になる頃にずっと目を覚まさなくなってしまうかもしれません」


 そんな恐ろしい言葉を残し、魔法使いはその場から一瞬の内に居なくなったのでした。

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