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人魚咲く  作者: 黒衛
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十八、 実ガ落ツル



男は、女の首を拾って、手拭いで顔を拭いてやった。

血と汚物に汚れてもなお、女は美しく見えた。

井戸へ運んで洗おうとすると、女は滝へ連れて行けと言った。

女が住んでいる、あの白い花の咲く場所だ。

そこに、新しい女が居ると言う。


「新しい、お前?」


そうだと女は笑んだ。


「言ったろう?私は実なのさ。

 この体はもう駄目だから、新しい実を使うことにする」


男はよく分からなかったが、女がそうと望むなら言う通りにしようと思った。


首を抱いて、山を登る。

容易く滝壺へと辿り着いた。

どうどうと水音が鳴るその場所は、甘い花の香りに包まれて、村の惨劇など無かったことのように穏やかな空間であった。


女は、木の下へ行けと男に言った。

そこは特に花の匂いが強く、上等な香か馥郁たる桃の香りを思わせた。


女が待っていた。

首と丸きり同じ顔の女が、首を切り取られる前の女の姿で、木の前に立っていた。

男が近付くと、女はその手からそっと首を取り上げた。


「ご苦労」


女に受け取られた首は、手の中であっという間に朽ちて、ばらばらと粉々の木屑に変わる。

砕け崩れて砂利の上に散った首は、枯れ枝や腐った木片のようなものになっていた。


女は死んだ。

しかし男の目の前には、新たな、紛う事なき女がいる。


「さあおいで、私の仲間におなり」


女が口を利いた。

男を迎えるように、両手を差し伸べて待っている。

その声も、喋り方も、動作の端々まで、男が見知っている女そのものだった。




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