十七、 呪い 6
※本話には残酷かつグロテスクな描写が存在します。閲覧にはご注意下さい。
男は息子が許せなかった。許したくなかった。
生かしておけなかった。人魚の仇だ。
何としてでも、殺してしまいたかった――。
男の手が石を掴む。掌よりも大きい、固い石だ。
息子の目に、一瞬恐怖が浮かんだ。
「待て……!」
がづっ!!
息子の制止は、鈍器が肉にぶつかる音で掻き消えた。
折れた歯が飛び、切れた唇から血が滴る。
男の襟を握っていた息子の手が、顔を庇うように翳された。
その上から殴りつけた。
爪が剥がれ、指が折れる。頬が見る間に腫れあがっていく。
瞼が切れ、出血した。あちこちの擦り傷から血が滲む。
それでも殴り続けた。
息子の顔面がただの血塗れの肉塊になり、弱弱しい抵抗が完全に失われるまで、容赦などしなかった。
小刻みに痙攣する息子の上から立ち上がる。
潰れて目も鼻も分からなくなった息子の顔を見下ろし、それから、一抱えほどもある大きな石を抱えて持ち上げた。
もう何も見えてはいないのだろう。
庄屋の息子は、震える唇で虚空に問うた。
「なんで……おまぇ……」
振り下ろした。
ぐしゃり、と骨が砕けた感触が伝わってきた。
びくり!と一度だけ体が跳ねて、庄屋の息子は死んだ。
眼窩からはみ出た目玉が、恨めしげに男を睨んでいる。
血染めの石を脇に捨てた時、女の声が男を呼んだ。
「おーぃ、終わったんなら拾っておくれよう」
血反吐に浸かって、女の首が笑っていた。




