十四、 呪い 3
※本話にはショッキングな描写が存在します。閲覧にはご注意下さい。
「おお、これが人魚の肉か」
不老不死だ、妙薬だと口々に喜ぶ村人の声が聞こえた。
男の前にも肉が回ってきたが、男は手に取らなかった。
きらきらと透明な身を見て、あの綺麗だった人魚を思い、涙が溢れてきた。
「さ、それではどうぞ」
庄屋が武士に勧める。
武士は箸を取って、摘み上げた切り身をゆっくりと口の中に運んだ。
それを見て、庄屋と村人もそれぞれに自分の肉を平らげた。
「如何でございますか?」
薬屋が武士に問う。
「ふむ、こりこりと新鮮な食感だがあまり旨みはないな。
味がしなくてまるで水のよう――」
げえ。
武士の言葉を、湿った呻き声が遮った。
待ちきれずにこっそり先に食べたらしい男児が、血混じりの反吐を吐いて倒れたところだった。
その瞬間には何が起きたか分からなかった。
しかし、直後、同じように胃液をぶちまけて女子供が次々と倒れ出した時には、事態は明白だった。
幼い者や体力のない老人から順に、血と反吐を撒いて地に伏す。
妻子を助け起こそうとした男達も、胸を掻き毟ってもがきながら、同様に血を吐いて悶え始める。
「何だこげえええ」
驚いて立ち上がった武士の口から、噴水のように鮮血が噴出した。
背中からどうと畳に倒れた武士は、そのまま動かなくなった。
庄屋は鼻と口から反吐を垂れ流し、白目を向いて縁側から転げ落ちている。
さながら、辺りは地獄絵図に変わっていた。




