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夏の渚

作者: 赤影

低い音のお経が聞こえてきた。

「もう、3時か!」僕は、ゆっくり起き上がった。

ここは万福寺の日本庭園の縁側である。

お寺の中では城と言われていて、1本の杉の木でこの離れは作られている。

夏でも庭園を撫ぜた、心地良い風が入り込んでくるこの場所で、昼寝をするのが日課だ。

「新太郎! 夏休み寝てばかりいないで勉強しろよ! 高校2年生は直に終わるぞ!」万福寺の住職が遠くから叫んだ。

「ハイー」「ぶー行くぞ」一緒に昼寝をしていた犬のラブラドルと一緒に砂浜目指して僕は駆けだした。

コバルトの空と、エメラルドの海、白い砂浜、緑の松林、大好きなこの場所は、能登半島の中間くらいにある、4kくらい続く増穂ヶ浦の渚だ。


遠くから、白い日傘に白いワンピースの女の人が、渚を歩いてくる。

太陽の光でよく見えなかったが、近づくにつれてスカートから出ている細い足が、以上に白く見えた。

「ぶーダメだよ」リードに繋いでなかったぶーが女の人に向かって全力で走っていった。

「すみません!」「いいえ!名前は?」「ぶーと言います。」

「面白い名前ね、貴方は!」とやさしく笑いながらぶーの頭を撫ぜた。

うなじの白さが、眩しかった。

「ぶー君、さようなら、又ね!」軽くお辞儀をして、何かを口ずさんで歩いて行ってしまった。


僕とぶーはボーと、都会的なその女の人の後姿を見ていた。

「ぶー綺麗な人だなー・・・・・・」

これが彼女と僕の出会いだった。




何時ものように寺の縁側で昼寝をしていると「ぶー君!」。

薄目を開けると、二人の女の人が立っていた。

「ゴメンね!起こしてしまった。」

僕は声にならない声で「どうして!」

始めて会ったもう一人の太り気味の女の人が「由美、知っているの?」「昨日散歩していて会ったの!」

「ふん!」と言って太り気味女の人は喋りだした。

「私達、昨日からここでお世話になっているの、私は恵子、越野恵子、彼女は武井由美、私達早稲田を受験するために、ここで受験勉強しようと思って、・・この田舎に埼玉の大宮から来たの、貴方名前は?」

由美はニコニコ笑っていた。

「僕は、松下新太郎です。よろしく」

「由美、勉強しよう!」とその場から二人は立ち去っていった。


「起こすなよ!」と思いながら、立ち去って行く由美の白い足を見ていた。



僕の生まれ育った漁村は坂が多い、海から直に山になる感じで、山のふもとに申し訳なさそうに300軒くらいの集落がある。

だから、村のどこからでも海が大きく見える。

地下の間と呼ばれる、漁船が20隻程止められる港がある。

夜になると港の小さな灯台が、村の中を刑務所のパトロールのライトのように照らすのだ。

僕の家から、200mくらい坂を下りて、防波堤の上を50m行くと灯台に着く。

僕はあまり弾けないホークギーターを持って、灯台に向かった。

時間はもう0時になろうとしている。

防波堤の両サイドの夜光虫が凄く綺麗だ。

灯台の階段に腰を卸して、しばらく向こう岸の巌門がんもんの明かりを見ながら、由美事を考えていた。

何故か自分でも解からないが、あの日からお寺には昼寝に行っていない。しかし由美のことが頭から離れない。



「又会ったね!」

気がつくと由美が後ろに立っていた。

驚いた顔の僕の横に座った。近すぎて僕の心臓の音が聞こえてしまうのではと心配だった。

「ギーター弾くんだ! 聞かせて!」「ダメ!今練習中で・・弾けないんだ」

「そう!好きな歌ある?」「・・・・・・・・・・」真っ白になって何も出てこなかった。

「・・・・・・・・・・・・・」「・・・・・・・・・・・・・」

「アッ」「ソッ」長い沈黙の後、何か話さなければと思ったら同時に話してしまった。

「そちらからどうぞ」「由美ちゃんからどうぞ、あっ」由美ちゃんと言って慌てて僕は手で口を押さえた。

そのしぐさが可笑しかったのか、由美はケラケラ笑った。

時々灯台の光が由美の顔が浮かぶと、長いまつ毛と円らな瞳を目に入ってくる。


それからは、生まれた街のこと、学校のこと、友達のこと、勉強のこと、趣味のこと、好きな色、天皇陛下の存在についての事、取り留めなく話した。

「由美ちゃん、空が明るくなってきたよ!」「本当だ!朝日を新ちゃんと二人で見よう!」

自然に由美ちゃんと新ちゃんと呼び合っていた。


「わぁー綺麗!」由美の目には薄っすら涙が光っていた。

そして僕らは自然と手を繋いでいた。


又明日も会う約束をして、僕は村の人に会わないように遠回りして帰った。

ベットに入ったが、全然眠る事ができなかった。

自然と頬がゆるんでくるのだった。




「新太郎!」

呼び止められたのは、金林幸一だ。

彼は同級生で外国航路の船員だ。船員は8ヶ月船に乗ると4ヶ月休む、幸一も毎日暇を持て余している。

「お寺に、都会の若い子着ているらしいぞー、幸太郎引っ掛けにいかんけー」

幸一は遊びなれている、色々停泊する港で女遊びをしたことを聞いている。

「僕はいいよ!チョット行くところがあるから」「そうか!」

幸一と別れてから、由美の事が少し心配になった。


由美はもう来ていた。「新ちゃん!」声を殺して小さく手を振ってる。

なんて可愛いんだと思った。

「今日幸一ってのが来なかった?」

「着たよ!今も二人でどこか行ってしまったの、バイクで!」

「誘われなかったの?」

「誘われたけど、由美は新ちゃんがいいの!」「昨日帰ったけど眠れなかった、嬉しくて!」

「・・・・・・・・・」

「信じてないの!本当だから、本当だから!」

「僕も眠れなかった、何故こんなに急に好きになったのだろう!自分が不思議なくらい!」

「うれしいー」

由美は僕の腕にすがりついた。由美の髪から凄くいい臭いがした。




「新太郎いるか!」

幸一はずけずけと、僕の部屋に上がってきた。

「幸一か!」

「新太郎やったぞ!」

「何を?」

「Hに決まっているでしょー」

「誰と、?」

「お寺に来てる、都会の女の子さ!綺麗な子に声かけたけどダメだったので、ブスの方で我慢したけどなー、今度は綺麗な方ともやりたいなー」

「・・・・・・・・・・・・幸一!」

「何だ!」

「もう一人の子はやめてくれ!」

「なんでだよ!」  


「僕は、あの子が好きなんだ! あの子に何かしたら僕が許さないぞ!」

「そうか!相手はそのこと知ってるの!」

「うん!」

「新太郎も手が早いじゃ!」

「そんなんじゃないよ」

「わかったあの子にはなにもしない!新太郎、今夜バイクもう一台借りてくるから、あの都会の子誘って走ろうぜ」

「いいけど!僕免許ないぜ!」

「関係ないね!そんなこと、こんな田舎に警察張っているわけが無いよ、じゃなー!」

幸一は一人で時間も決めて、部屋から出で行った。


僕は免許を取ったが、免許書が来る前に事故を起こし、その免許は無効になってしまい、親からはバイクに乗ることは禁止されていた。



由美と灯台で待ち合わせしていた1時間前に幸一が来た。

「新太郎行くぞ!」

「・・・・・・・」

「後ろに乗りなー」

二人乗りでしばらく走ると、原付の小さなバイクがあった。

「これで二人乗るの?」

「どうせ無免許なんだから、二人乗りも関係ないだろ!」

「それもそうだけど」


万福寺の裏には、200個ほどの墓がある。その間を幸一は100円ライターをカチカチいわせて、その灯りで墓の中に進んでいった。

窓ガラスをコンコンと叩き、「恵子!幸一だけど・・・・恵子」と低い声で言った。

「きゃー」由美の声だ。

「僕だよ!新太郎・・新太郎だよ」

「火の玉と思って、顔を覆ったら今度は低い声がしたので、もうびっくり!脅かさないで!もう」

「恵子ちゃんは?」

「トイレにいっているの」


奥からドタドタト音がして、駆けてきた。

男の足を音だ。

「住職だ!シー」

「どうしたんだ?びっくりしたような声が聞こえたんだけど」

「すみません鼠がいたので!」

「そうか!明日薬でもまくか!勉強しっかりしなさいね! では・・・おやすみ」

「おやすみなさい!」


「由美どうしたの?あら!幸一」恵子がトイレから帰ってきた。

「シー 恵子ドライブに行こう!由美ちゃんも、バイク2台あるんだ」と幸一が言うと二人は、ニコッと笑って顔を見合わせて頷いた。


二人は素足だったので、幸一は恵子を由美は僕がおぶって、恵子がライターを点けたり、消したりして墓の中をバイクの止めてあるところまで向かった。

誰となくクスクスと笑うと、何故か4人とも可笑しくなって皆で大笑いした。


僕達の村から、10kほど走ると松本清張の「0の焦点」の舞台となった、「関の鼻」という観光地がある。

昼は観光客も多いが夜になると誰もいない所だ。

僕達は「関の鼻」に向かってバイクを走らせた。

原付バイクは小さく身体を密着しないと乗れない、由美の胸が僕の薄いTシャツを通して時下に感じる。

真夏だが夜中の風は、肌に少し冷たく感じた。由美も寒いのか僕の背に胸をよりいっそう押し付けてくる。

女の子とこれだけ接近した事の無い僕は、夢の中のような気持ちだ。

「このまま何所までも走っていたい」と心の中で思った。



関の鼻に着いた僕達は、流木を集めて、海岸で焚き火をした。

二人ずつ向かい同士で、岩場に腰を下ろして座った。

しばらくすると、幸一と恵子は長いキスをしている。

僕は由美の顔を見た。                  


すがりつくような由美の瞳だ。

「幸一僕ら先に帰るよ!」返事も返ってこなかったが、由美の手を引いてバイクに乗った。

なんとなく気まずくその夜は分かれてしまった。



次の日、いつもの灯台であった時、幸一の話になった。

僕と幸一は幼稚園から同じで、幸一の母親は早く亡くなったこと、今は父親と兄と3人で暮らしていること、漁村なのに僕が刺身を食べれなかったのに、幸一が鰤を釣ってきて自分で刺身にして食べさせてくれてから、食べれるようになったこと、愛の無い殺伐とした今までの人生で、人を愛せなくなっていることなど、由美に話した。

由美は「幸一さん、可哀想!」とボッンと呟くように言った。

「恵子ちゃんに言った方がいいのか、僕は判断できないけど、今の恵子ちゃんには何を言っても無駄かもしれないね」

由美は長い時間話さなかった。

そして「恵子は本気だと思う、誰ともそんなに簡単に付き合う子でないもの」

その夜もなんとなく暗い気持ちで分かれた。




昼ごはんを食べていると電話がなった。

「新太郎チョツトお寺にこないか!」住職だ。「ハイ! 行きます。」

住職というと白いひげをはやしたおじいさんをイメージすると思うが、万福寺の住職は31歳、京都の大谷大学を卒業して跡取りのいないこの寺に養子になったのは、僕の5年生の時だ。

宗教信に燃え、お寺に近い子供達を集めて日曜日に勉強を教えた。

僕の中3までその日曜会は続いた。僕達の恩師だ。


お寺に行くと幸一が座禅をされていた。

「新太郎もここに座れ!」住職は強い口調で言った。


「お前達は、越野恵子さんと武井由美さんを夜連れ出しているというのは・・・本当か!」

「彼女達はここにバカンスに着たのではないことは知っているだろう!」

「はい!!」

「新太郎も、幸一もこの夏は、お寺には出入り禁止だ。」

「はい!!」

「彼女達も夜は外出禁止にした。お前達は1時間座禅だ。」

「はい!!」



これから1週間、灯台に行くが由美は来なかった。

夏休みも半分が過ぎてしまった。

お盆は、学校の広場で夜遅くまで盆踊りがある。

友達に誘われたが、広場には行かずにぶーを連れて灯台に行った。



ボーと海を見ていると、ぶーが急に立って走って行った。

「ぶー何所に行くんだ!」

しばらくすると向こうからぶーと由美が駆けてくる。

僕も由美に向かって駆けた。

そして思い切り由美を抱きしめた。

「会いたかったの!  会いたかったの!  会いたかったの! 」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕も・・・・・」



「盆踊りを見に行く許可をもらったの、新ちゃんここにいると思ったよ!」

「来れないと思ったけど、毎日ここに来ていた!」

「そうなんだ、嬉しい!」


そして自然に軽く唇に唇を重ねた。          


8月25日の夏祭りに会う約束をして、由美と別れた。

10日間会えないけど、由美の勉強の邪魔にならないように我慢することにした。

僕は10日間土木のバイトに行くことにした。


能登のキリコ祭りは、各地で夏から秋にかけて行われるが、僕達の漁村ではキリコの人足をするには、伝統の衣装を着なければならない。

男は、上は白のワイシャツに黒のベスト、下は白のトレパンにゲートル、ワラジだ。

女は、浴衣に襷がけ、小さなエプロンをして、浴衣を膝までまくり上げお腰を見せる、お腰の色は、未婚は赤、既婚はピンク、子供のいる人はブルーなのだ。


昼頃、由美は僕の家を訪ねて来た。

母に由美を紹介してから、「由美、元気だった。」「新ちゃんも元気!」と家族がいたので短い挨拶をした。

由美にどのようなお祭りか説明すると「由美も参加したーい!」

「由美は、無理だと思うけどなー」

「どうして、ねーどうして」

「結構、乱暴なんだよ、怪我したら困るし!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「お祭りは、暗黙のルールがあってね!最後お宮さんの中に入ったら休まない事と、御神輿を本殿の中に入れて鳳凰を取るまで永遠に続けるんだ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「その時、御神輿を本殿に入れないようにキリコで邪魔して、ぶつかり合うんだよ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「毎年、喧嘩も多いし、怪我人もでるんだよ!」

由美はニコニコしながら、何も言わず楽しそうに頷いている。

説明する度に、瞳が輝いてきた。

その瞳に負けてしまった。

「ジャー最後は参加しないと約束だよ!」

「わぁー  ありがとう新ちゃん!」


「お袋!由美ちゃんに祭りの衣装ある?」


浴衣姿の由美を見た時、なんと可愛いのだろうと思った。

勿論、お腰色は赤だ。


由美は、子供のようにはしゃいでいた。

お客さんにお料理を運んだり、お酒を注ぎに回ったりして、もう人気者だ。


辺りが薄暗くなってきた時、「御立ちだぞー」の声でお祭りは始まった。

ドンドコ、カンカン、ドンドコ、カンカンと太鼓と鐘が鳴り響いた。

僕達高校生の男が人足するキリコと、女の子のキリコは違っている。

「この子初めてなので、お願いします。」と周りの子にお願いをして、僕は自分のキリコに戻った。

村を練り歩きながら何度も休憩する。

その近くの家々では縁側を開放し、知らない人でも料理を振舞う。

休憩の度に僕は由美のキリコに行った。

「由美!大丈夫」

「大丈夫よ!凄く楽しい!」

「あの家ビール飲もう!」

「ビール飲むの?」

「今日は何でも有さ!」


「オバちゃん!ビールちょうだい!」「そこに冷やしてあるから、自分で持って行って!」


「由美言ったでしょう!何でも有だって」

由美は僕の目を見て、ケラケラ笑った。


キリコ行列が海岸線に出た時、二人で抜け出して何時も会った灯台に行った。

キリコの灯りが,緩やかに動く海面に写る。

ズート僕の手を由美は握り締めている。


「綺麗ね!」

「そうだね」

「今日のこと、一生忘れない」


長い沈黙の後、僕達は長いキスして、僕は由美を抱きしめた。

長く短い時間が過ぎていった。







「新ちゃん・・・・・私達明日帰るの!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


停留所の脇で、瞳に一杯の涙の溜まった由美の顔を見つめている。

「もう、泣かないで手紙書くからね!」

「うん・・・・・・・・・・・・・・」

由美は弱く頷いた。

「受験がんばってね!」

「新ちゃん!ありがとう・・・・・・」


それから何も言えずに佇んでいると、赤のラインの入った北陸鉄道のバスが来た。

由美はバスに乗る時も、僕から目を離さなかった。

「由美ちゃん!さようなら!」

僕は周りの人も気にせず叫んだ。

由美は一番後ろの席に行き、窓をから小さく手を振った。

思わず僕は動き出したバスを追っかけた。

バスは見る見るうちに離れて行く、立ち止まり大きく手を振った。

「由美ちゃんー!」


バスの中の由美の顔が段々小さくなっていく!

バスが見えなくなってから、海岸に向かって走った。

向こう岸に、由美の乗ったバスがゆっくり走って行くのが見えた。


「さようなら」と繰り返し心の中で叫んだ。



これが高二の夏休みの出来事だった。


新ちゃん元気!

色々お世話になりました。ありがとう!感謝しています。

学校で恵子と会うと、能登の話題ばかりです。

由美の部屋には、お祭りの時撮った新ちゃんとの写真を飾ってあります。

朝起きると「おはよう」眠る時は「お休み」と新ちゃんの顔を毎日見ています。

ベットに入って目瞑ると、あの青い海、白い砂浜、灯台から見た神秘的な夜光虫の光、

そして、新ちゃんの笑った顔が浮かんでくるのです。

何時も幸せな気分で眠りに就く事ができます。

能登では勉強はあまり出来なかったけど、毎日4時間くらいの睡眠で今は頑張っています。

新ちゃんの高校生活はどうですか!

来年、大学生になったたら又能登に行くことを目標に机に向かっています。

がんばります!では

          大好きな新ちゃんへ   由美より


由美ちゃん!僕は元気です。

でも、由美ちゃんの事が頭から離れず、昨日も先生に質問されたのに気がつかなくて「新!何ニタニタしているんだ!」と叱られました。

その時は、由美ちゃんの柔らかい唇が頭に浮かんでいたのです。


由美の黒い髪が大好きです。

由美の大きな瞳が大好きです。

由美の柔らかい唇が大好きです。

由美の白いうなじが大好きです。

由美の少し小さい胸が大好きです。

由美の細い指が大好きです。

由美の少し大きいお尻が大好きです。

由美の白い長い足大好きです。

由美の笑顔が大好きです。

由美の全てが大大好きです。


夏休みが終わったばかりだけど、早く夏休みが来て欲しいです。

                可愛い由美へ    新太郎




僕達は1週間に一度こうやって手紙を交わした。



暗い海の向こうに、漁船の灯りが見える。

波の音と松林の風の音、そして砂を踏む自分の足音。

手に由美からの手紙を握り締めて夜の渚をトボトボ歩いている。


クリマスイブに届いた由美からの手紙、

最後の文書・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・眠れない夜が続きます。

この手紙で最後にしましょう。

楽しい夏の日の思い出をありがとう!

     新ちゃんへ

               由美より


受験勉強に疲れきった由美の精神状態は、恋愛どころではなくなったようだ。


立ち止まり手紙の束を砂の上に、そしてライターで火をつけた。

炎の色が以上に綺麗だった。


由美ありがとう! 幸せになって!


新太郎の夏の恋はここして終わった。


                   完








              


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