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煙の旅人  作者: さい
1章 忘れた世界
10/17

10.骨漁りと宝



 掲示板を確認していると、一枚の依頼書が目に留まる。



発行元:カルントギルド

依頼主:ブラギウ・マーカー

対象:遺品回収

ランク:D

個体数:

内容 : 襲われた商隊の遺品の回収。付近の廃村に、スカベン・コレクターが収集した可能性あり。補足情報あり。



 遺品回収か、討伐依頼のついでに受けてみるか。

 この類の仕事は、信用になる。武力自慢の討伐よりも、街での立ち位置はずっと良い。

 

 依頼書に手を伸ばすと、近くで依頼を吟味していたティネルが、声をかけてくる。


「スカベン・コレクターかー、あいつら不気味でなんかやなんだよなあ」

「その魔物はどんなものなんだ?」


 ミレナリアには存在しない魔物だった。


「うーん……。ここら辺だと、廃村とか馬車の残骸にいるんだけど。あと、死体置き場とかにも来るぜ。ここら辺だと“チビ墓荒らし”って呼ばれてる!」

「そうか、危険性はあまりないみたいだな」

 

「攻撃しなきゃ襲って来ないけど、野営中に地図やらランタンやら盗んで行くんだ。ふつーに困る」

「知能はあるのか。助かったよ」


「あとその依頼主、ブラギウ・マーカーってやつ。そいつは、この辺りの商会のまとめ役の一人だ。金払いはいいけど、貸しは絶対忘れねえって有名」

 

 ティネルが肩をすくめる。

 

「つまり、繋がっといて損はない相手ってことだな」

「ま、そういうこった」

 

 簡単な情報が聞けたので、受付で補足を聞き、ギルドを発つ。


 

――


 

 情報によると、この辺りで商隊が襲われたらしい。

 視界の端に、荷馬車の残骸が見えた。あれか。


 近づいて、現場を確認する。


 付近には乾いた血と木片が散らばり、襲撃の惨さがまざまざと伝わる。木製の荷馬車には裂かれた布が掛かり、半壊している。

 死体は回収されたらしく、もう残っていない。


 依頼品は身につけていた短剣と、ペンダントだ。

 

 周囲と荷馬車を検めるが、見つからない。これは、例の魔物に持って行かれたか、盗賊にでも取られたか。


 魔物と盗賊のどちらが面倒か、と考えながら伝えられた廃村へと向かう。



 

 廃村は、十棟ほどの小さな村だった。周囲を探ると、付近に小さな魔力反応があった。

 これがスカベン・コレクターなのだろう。


 注意深く近づいて、様子を伺う。

 廃れた家屋の中に、スカベン・コレクターは居た。


 ぱっと見は小さな子供だ。


 土色の痩せすぎた肌に襤褸(ぼろ)を纏い、目が異様に大きい。手足は薄い皮膚が付くだけで、骨のようにも見える。

 

 明らかに角度が違う首には、戦利品だろうか。依頼品のペンダントが掛かっている。それがまた、異様な雰囲気を際立たせている。


 崩れ落ちた棚を漁っているが、動きがやけに静かだ。漁る指先が、骨と骨を擦り合わせるような、乾いた音しかしない。


 目当ての物はなかったのだろう。コレクターは、立ち上がった。

 

 そして、こちらに気づき、首だけがぎしりと動いた。人間なら折れている角度だ。さらに見開いた目。目蓋のないそれは、外れて落ちそうだった。


 


「……ニク、ニクニク…………キラキラ……いたい……」

「! 話すのか!」


 構えた抜き身の剣を見て、聞き取りづらいが言葉を発した。

 

 高位の魔物は人の言葉を介すが、これはどう見てもそんな存在には見えない。


 しかし、コレクターは人に近い思考力を持っているようだ。

 首を狙って噛み付いて来ず、及腰で出入口の方を見て、逃げ道も確認している。つまり、こいつらは本能で噛みつく獣ではない。

 

 討伐は依頼内容に含まれていないが、どうするべきか。危険性はかなり低いとは思うのだが。

 


「その首のペンダントを返してくれるか?」

 

 首元を指差し話しかけた。

 とりあえず、会話を試みてみよう。剣先を下に向けて、敵意がない事を示す。


「……?…………キラキラ?……だめ、だめ」


 輝く物が好きなのか、だめらしい。


「交換はどうだ?」

 

 亜空間に光る物はあっただろうか、と空間を裂いて中を確認する。心当たりはあるが、お眼鏡に叶うかどうか。


 一枚の羽根を差し出す。以前討伐した光冠鳥の羽根だ。滑らかな表面は薄く発光し、室内だとそれはよく目立つ。


 

「……タカラ、タカラタカラ!」


 その声は、餌にありついた野犬のそれに近い。彼らにとって“キラキラ”は食い物と同じなのか。


 気に入ったのか、羽根を持つ手に向かってぴょんぴょんと跳んでいる。


「だめだ。交換」


 交互に羽根とペンダントを指差す。

 すると、どうやら伝わったらしい。首からペンダントを外し、こちらに差し出してくる。


「コウ、……カン?…………コウカン!」


 

 無事にペンダントを受け取り、短剣の行き先を訊ねる。


「短い剣は持ってるか?」

「……いたい…………キラキラ……ナカマナカマナカマ……」


 どうやら、他のコレクターが持っているようだ。

 

「案内してくれたら、もっとキラキラをあげよう。いいか?」

「…………キラキラ、タカラ……いい……」


 何だか気が抜けるな。だが、穏便に事が済みそうで良かった。

 

 こっちだ、と言いたげに案内をされた先は、放棄された野営の跡地だった。

 

 住処、というよりは溜まり場ってところか。


 そこには、三体のコレクターが居た。首の曲がり方と、身に付けている物はそれぞれ違う。


 案内させたコレクターと俺を、目を見開いて見ている。

 言葉にするなら、「どうして人間連れて来た?」ってところだろう。面白い連中だな、と密かに笑んだ。


「…………キラキラ……キラキラ……」

「はいはい、ありがとな」

 

 礼を催促される。

 同じ物だとつまらないな。


 そうだ、虹殻虫の甲殻はどうだろうか。角度によって油膜のように変化する美しい甲殻だ。蒐集家にも人気が高い。


 甲殻を渡すと、まじまじと手元を見つめている。

 さあ、どうだ。


「……はいはい…………アリガトナ!」


 気に入ったようだ。


 

 さて、本題だ。

 短剣を持っているのは、誰よりも戦利品を着飾ったコレクターだ。こいつが群れのリーダーのようだ。

 

 そんなコレクターには、一際良い物と交換してもらおう。



「こいつと、あー……。いたい、きらきらを交換してくれるか?」

「?……キラ、キラ?……」

「ここが開くんだ。中にきらきらを入れておけるぞ」

「キラキラ!……タカラ、イレル……いれる!」


 渡したのは使い古した、金属製の煙草ケースだ。輝きはやや弱いが、こういう物も良いだろう。


「ほら、交換だ。交換」

「コウカン!……コウカン!」


 早く早くと急かされながら、交換をする。

 コレクターから短剣を受け取り、これで依頼完了だ。

 


 ついでに、この廃村の連中とは顔見知りになれた。いつか役に立つかもしれん。こいつらは、ただの“墓荒らし”じゃない。おそらく、街の誰よりも早く、外で起きたことを知る。


 あのコレクターには目印もある。後は、俺の事を覚えているかだが。まあ、あの知能なら大丈夫か。




 

 依頼品は直接、ブラギウ商会に持ち込み、確認を取るそうだ。報酬の支払いもそこで行われる。

 


 それにしても、まさか魔物と交渉をするなんて思っても見なかった。ミレナリアでも冒険者をしていれば、こんな愉快な出会いがあったのだろうか。



 感傷に浸るなんて柄ではないが、そう思わずにはいられなかった。

 


妖怪の餓鬼を元に作った魔物がこんな事に。

小話でランの話を書いたからでしょうか。

気に入ったので、ついついフラグを残してしまいました。


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