表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狂禍四魂  作者: 発戸あいす
第3章
66/76

65.崩壊

 棚から資料を取り出し、内容を確認しては、また棚に戻す。結局は、その繰り返しだ。電子媒体に記録されたデータであれば、単語検索などに頼ることもできたのだろう。デジタル社会だからこそ、紙媒体による保管が漏洩対策として機能する。それもわかっているが、どうも不便に感じてしまうのは、現代人の性なのだろうか。


 ただ、古い資料はそこまで数が多くなかったのが、救いであった。実際、椿つばき狗骨ひいらぎが協力することによって、数時間で目を通せる程度の量だった。しかし、肝心の情報は発見することができなかった。


「やっぱり、直接的なしずめの情報はここにないと見て良いかも……」

「え、えっと、これからどうしましょう?」


 情報庫に見当たらないとなると、次にどこを探すべきか。


「鎮の情報が残っているとしたら、神器の出処……」

磐境いわさか研究所のことですか?」

「そう……」


 磐境研究所こそ、朱盃さかずきすいを誘拐し、神器を生み出した諸悪の根源。神器や霊魂術という特殊能力について、秘密裏に研究していた組織だ。


「ただ、磐境研究所は所在地含め、多くが謎……」

「でも、確か潰れてはいましたよね?」

「例の内部リーク以降、一切の音沙汰はない。裏社会でも情報だけ吐き出して消滅したとされている……」


 ちなみに、内部リーク以前は、そもそも磐境研究所という組織があることもわかっていなかった。


「結局、何があったのでしたっけ?」

「告発者曰く、研究所で内乱が起きて、職員が全滅したらしい。真偽は不明だけど……」


 内乱の原因などについても、特に言及されていなかった。


「な、なるほど。ただ、少なくとも、その告発者は生存できた研究所関係者?」

「そうなる。告発者を見つけることができれば、鎮の情報も得られるかもしれない。ただ、現実的じゃない……」


 今から、告発者を特定するのは不可能だろう。告発者に繋がる情報が何もないからだ。


「研究所跡地の発見なら、可能だとは思う。大規模な実験施設だったろうし……」


 未だに所在がわかっていないということは、人里離れた山奥などにある可能性が高い。人力で捜索するのは難しいが、航空写真と人工知能による自動画像検出などを駆使すれば、候補となるような廃墟は発見できるだろう。もちろん、その辺りの知識を狗骨は持ち合わせていないが、はいに頼めば良いだけの話である。


「ひとまず、磐境研究所の所在特定とか関係者捜索については、皆に情報共有して、協力して進めるべきかな……」


 せつや鎮という単語を出さなければ、皆に余計な憶測を生む恐れはないだろう。


「そ、そうですね。でも、急に磐境研究所の話をするのも不自然ではないでしょうか?」

「適当に、まだ見ぬ神器が存在する可能性があるから、捜査が必要とか言っておけば良い……」


 未発見の神器があるのかどうか、明確にするに越したことはない。実際、きざみという隠れた神器があったのだから、納得できる理由にはなるだろう。







 一方、かす監獄では、新たな囚人が収監されてから、二週間が経とうとしていた。こまにとっては初めてとなる変化だったが、意外と慣れるのも早かった。


 二人目の囚人は会話ができないという難点があるが、そもそも看守と囚人は会話をする必要がない。なぜなら、この場所は更生目的の施設ではないからだ。看守に求められるのは、一方的な監視である。


 一日の報告作業をするため、狛は看守室でパソコンの前に座る。内容の大半は、囚人の詳細な記録だ。ちなみに、二人目の囚人について、狛視点では記憶が戻るような気配はない。実際にどうであるかは、まゆずみによる再尋問の際にわかるだろう。


 その後、作業を終えて、画面を閉じようとする狛だったが、新たな連絡メールが来ていることに気づいた。差出人を確認すると、天老であったので、少し身構える。ただ、特に緊急というわけではないようだ。メールを開き、内容を黙々と読む狛。次の瞬間、目に飛び込んできたのは、狛には到底無視できない文章だった。


「……は? 何これ?」


 もう一度文章を読むが、見間違いではない。そして、冷静に内容を理解すればするほど、困惑という感情が芽生えてくる。怒るように立ち上がる狛。そのまま一直線で、看守室に設置された固定電話に手をかけた。


「こちらは自動音声応答システムです。名前をお願いします」


 受話器を耳に当てると、自動で機械音声が流れてきた。


「……から獅子じし狛」

「声紋認証。唐獅子狛、確認しました。次に、用件をお願いします」

「今すぐ、天老に電話を繋げてほしい」


 狛の言葉の後、システムが音声認識をする時間として、一瞬の静寂が訪れる。


「すみません。できません。他に用件はありますか?」


 わかってはいたが、機械音声で淡々と述べられるのも、妙に苛つく。


「……天老に早急な伝言をお願いしたい」

「畏まりました。五秒後に録音を開始します。録音時間は最大一分です」


 直後、機械音によるカウントダウンが開始された。その間に、狛は話す内容を頭の中で簡潔に纏める。


「お世話になっております、唐獅子狛です。先ほど連絡された特別房における囚人処遇の急遽変更について、意図のご説明をお願いします。早急な返答お待ちしています。以上です」


 感情を抑えるように、狛は言葉を紡いだ。


「録音終了。ただいま天老に転送します」

「……」

「転送完了。天老が内容を確認中。しばらく、お待ちください」


 それから数分間、無言の時間が続く。


「天老から返答が送信されました。内容を読み上げます」


 天老にしては、返答がやけに早い。想定済だったということなのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ