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第三話 冷えきったティラミス

冬本番の冷たさが体に突き刺さるような夜。

バチンと体の中から音がした気がする。体の中の電気が着いたかのように。

徐々に、じんわりと手に感覚が戻ってくる。今何時だろうか。

ぱちりと目を開けると、暗闇が再び視界を包む。

目をこしこししながら辺りを見回す。外の明るさ的に3時といったところだろうか。完全に覚醒してしまった。今日はもう寝れないかもしれん。まぁ、睡眠はとる必要は無い。起きていると心配されるから、シャットダウンをしてる、そんな感じ。

ぬるりと静かに布団から抜け出ると、スタスタと歩く。


双眼がまろを見つめる。

ぼんやりと洗面台に立ち、考え事をする。

あの日から異様な頭痛がある。本霊様と違い、まろは人間のような身体機能は無いはずなのに。

あの日からふとした時目がくすんで見える時がある。理由は分からん。

マスターも気を使ってくれている。見て見ぬふりをしてくれているような。

いったいなんだというのだろうか。

その時ふと鏡が揺れた。凪のように静まり返っていた湖に一石投じたかのように。

鏡に映る髪が短くなる。前髪は少し伸びているだろうか。

ふいに、鏡のまろがにやりと笑う。

はぁ。とため息を着く。まろは敬うのが苦手だ。だってまろ神じゃし。敬われるべき立場じゃし。だが。

「琴絵様…なんの用ですか」

鏡の中のまろがにひひと笑う。


ふと目が覚める。隣にコトエ様がいない。

はぁ。と小さいため息を吐いた後に、がばりと布団を跳ねのける。

コトエ様がいない?

辺りを見回す。話し声が聞こえる。洗面台?

音を立てないように静かに近づく。なぜ忍び足をしているのかは分からない。気付かれては行けない、そんな気がした。

「何しとる」

気がしただけだった。

3秒とせずに、暗闇から冷たい視線が注がれる。

「…あー、いや。その」

「…大丈夫じゃ。二度寝するぞ」

ふぁと欠伸をし、布団へ戻っていくコトエ様。

大丈夫、震えた声でそう言う目は何も見ていないように見えた。

どこからか吹く、冷たい風が体を貫いていく。


あの日以来明らかにコトエ様の様子が変だった。ぼうっとし、遠くを見つめることが増えた。かと思いきや顔をしかめたりと異常である。そして何より、笑わなくなった。苦笑いばかりしていて、ずっと思い悩んでいるような。

なんとか声をかけても、大丈夫だの一点張りで何も分からない。突然距離ができ、壁ができたような気がする。同じ屋根の中にいるのに、コトエ様だけどこか別の場所にいるような。ふとした時に、他人に戻ってしまうような。

近年稀に見る豪雪で、外を出歩けない。だから、息苦しいような気がする。だからだ。

「コトエ様、何か食べたいものでもありますか?」

「…あぁ。うむ。お主の好きなもので良いぞ」

貼り付けられたような笑み。目の奥が寂しそうに遠くを見つめる。表情が暗いのは吹雪く外を眺めているから。多分。


食欲がなくなった。元より、食べる必要は無い。ではなぜまろは今まで食べてたのか。

味覚がなくなった。元より、なくても構わない。ではなぜまろは今まで食事を楽しんでいたのか。


まろがまろでなくなっ


「コトエ様!」

ハッとして目をあげる。

手からこぼれ落ちたお箸が床を跳ねる。

転がったお箸をぼんやりと見つめる。

あぁ?お箸を落としたのか。

重い体を動かし、ゆっくりと手を伸ばして拾う。

「…コトエ様?大丈夫ですか?」

「ん?あぁ。床が汚れてしまったな。ティッシュかなにか取ってくれるか?」

「床の話じゃありません…コトエ様の話です」

じっと二つの眼がまろを見つめる。

ふと綺麗な目だと思った。吸い込まれそうなほど深い黒い瞳。いや、少し茶色っぽいだろうか。その瞳の奥には強い覚悟が見えた。

どれくらい見つめ合ったのだろうか。

ふっとコトエ様が俯き、ぽつりと言う。

「まろには記憶がないのじゃ」

こんばんは。ヒラメです。

皆さん、奉納祭お疲れ様でした。無事に?終わったようでなによりです。

さて。

一話完結を連載に切りかえた時、私はどのようにこの話を落とし込むつもりだったんでしょうね?

しっちゃかめっちゃかの急展開が続くでしょうが、暖かい目で見守ってくださると嬉しいです。

ではまた。

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