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大地震

よろしくお願いします!

「マグニチュード9って……津波とか大丈夫かよ」


 スマホに流れてきた緊急ニュースを見て驚いた。昨夜24時過ぎ、北アメリカ大陸から西に200キロ程の地点で大地震が起きたらしい。

 太平洋側のアメリカ沿岸部には、津波で少なくない被害が起きているらしい。


「大変だなアメリカ……。全然気が付かんかった」


 地震の揺れや津波による人的被害。またはそれに伴うライフラインや流通など。

 スマホのネットニュース欄は全て地震速報一色である。

 日本も地震の影響で揺れていたらしいが、震度3から4であったらしく気づかなかったな。


「……とりあえず昼飯作るか」


 床に散らばった服や漫画本を一箇所に乱雑にまとめ、俺は台所へ向かう。

 咲多真桜さいたまお29歳、独身。無職。

 あだ名はサイタマ。会う人会う人に名前のことを突っ込まれて29年。いい加減うんざりしている。埼玉県に住んでるのも原因の一つだが……。

 25歳で転職しとある企業に務めたが、そこはとんでもないブラック企業だった。4年間耐えたが紆余曲折あり、先日辞表をたたき出してきた所だ。まぁ後先考えず辞めてしまった事は反省しているが、引き継ぎもしっかりやったし大丈夫だと信じたい。

 月150時間の残業、全く働かないくせに嫌味全開の上司。そもそもあのクソ上司が発注ミスを全部俺のせいにして……といかんいかん、せっかく解放されたのに負のオーラがまた全開になってしまう。

 さっさと昼飯作って、仕事探すか。


 六枚切りの食パンをトースターにセットして、その間に目玉焼きを焼き、コーヒーメーカーに水をセットして……。


「あれ、水が出ない……?」


 なんでやねん。

 断水? 水道代払ってるよな……。

 コーヒー飲めないやん。断水のお知らせなんか来てたっけ? ……もしかして地震の影響とか?

 後で確認するか。っと、目玉焼きが焦げちまう。


 勢いよく飛び出たトーストに目玉焼きを乗せて、少し醤油を垂らしてマヨネーズをかけてと……。

 コーヒーの代わりにコップに牛乳を注ぎ、出来上がった目玉焼きトーストと一緒に居間へ。

 テレビをつけると、地震関連のニュースばかりだった。


「世間がこんな状況なのに、職探しかぁ……。やんなっちまうわ全く。仕事決まるまでアルバイト探すか……? 失業保険も降りるの三ヶ月後だしな。てか無職ってやばいよな……。男としてのステータスが……」



 ブォン



「は?」



 妙に聞きなれた音と共に、目の前に文字と数字が羅列されたステータスウィンドが現れた。


 数秒間固まる俺。


 手で触ってみようとするがすり抜ける。


 なんでやねん。



「え、夢? まだ寝てんの俺?」


 目玉焼きトーストにかじりつくが、普通に旨い。夢じゃないな。

 目をこすってみる。うん。消えない。なんでやねん。


「なになに……アカウント名、サイタマ。レベル90。メイン職業、召喚術士……ってこれ。WOEの俺のステータス!?」


 World of Eden 通称WOE。世界で最もプレイされているオンラインMMORPG。日本でもMMOのジャンルでは常に1位を取り続けている超人気ゲーム。

 20歳過ぎに同僚に勧められてやり始めたが、広大なワールド、自由すぎる程の戦闘スタイル、きめ細かいディテール、使いやすいUI、話しかける度内容が変わるNPCの会話など、様々な魅力に取り憑かれそれ以降プレイし続けている。

 9年間やり続け、今では戦闘職と生産職のレベルは上げ終えているが、1ヶ月に1回ストーリーや職業バランス、システム改善のアップデートが入るという超優秀な運営のおかげで、飽きずにプレイしている。


「なんでWOEのキャラのステータスが……? てかどういう原理だよこれ……。ん?」



 見慣れたステータスを見ながら思案に暮れていたが、テレビのニュースが緊急速報に切り替わった。


「緊急速報です!! 壊滅的な被害にあったアメリカ沿岸部ですが、突如正体不明の生物が現れ民間人及びアメリカ軍を襲撃しているとの事です!! 中継が繋がっています。 現場の山田さん! 聞こえますかー! 山田さん!」


「はい、現場の山田です! ご覧下さい!!あれらが突如海の中から現れた生物です。すごい数です!」


「うぇ!!」


 ちょっと待て。変な声出ちまった落ち着け俺。

テレビには無数の生物が瓦礫と汚泥にまみれた沿岸の都市部を進んでいる様子が映されている。アメリカ軍が隊列を組み、銃で応戦しているが多勢に無勢。それほどの数だ。

 しかし問題はそこでは無い。

 どこか見たことあるのだ、あの生物。


「WOEのゴブリンやんけ……」



 ……なんでやねん。


 俺の中で今日三回目となる渾身のなんでやねんが心の中に鳴り響いた。









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