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第3話

   

「おお! ついに完成したぞ!」

 遠山博士が歓喜の声を上げた。太郎助手が入力したプログラムを、装置内の起動画面で確認し終えたのだ。

 日頃は彼をよく思っていない太郎助手も、こういう時は、素直に嬉しくなる。

「おめでとうございます、所長」

「ありがとう、太郎くん。君が手伝ってくれたおかげだよ!」

 タイムマシンから出てきた遠山博士は、満面の笑みを浮かべていた。外で待っていた太郎助手に右手を差し出し、がっちりと握手をする。

 太郎助手は、遠山博士の肌の温もりを気持ち悪く感じながらも、顔には出さずに質問した。

「それで、どうします? 早速、過去へ行ってみますか?」

「いや、それは……」

 と、口ごもる遠山博士。今まで彼は、タイムマシン製作の動機を、具体的には話していなかった。

 しかし太郎助手の方では、薄々察していたのだ。遠山博士は未来ではなく過去へ行きたいのだ、と。

 口では「過去へ行くなら慎重に。些細な行動ひとつで、大きく歴史が変わってしまうから」と言っているものの、それは本心ではない。やり直したい出来事があって、だからこそタイムマシンを作り始めたのだ、と。

「いや、今日はもう遅い。試運転は明日にしよう」

 研究所の殺風景な壁にある、たった一つの小さな窓。そちらに視線を向けて、外が暗くなっているのを確認してから、遠山博士は宣言するのだった。



 その数時間後。

 真っ暗だった研究所の中が、昼間のように明るくなる。灯りのスイッチを入れたのは、太郎助手だった。

「大丈夫。あいつは今頃、ぐっすり眠っているから……」

 自分に言い聞かせるように呟いてから、太郎助手はタイムマシンに乗り込んだ。

 二人は研究所の二階に住んでいるので、一階で異常があれば、すぐに駆けつけることができる。だが今夜は、祝杯ということで遠山博士は深酒しており、ちょっとやそっとの音や光では起きてこないはずだった。

「明日が試運転なら、今のうちだ」

 シートに座った太郎助手は、タイムマシンを立ち上げる手順に入っていた。いくつかの起動ボタンを順番に押して、必要事項を入力していく。

 そうした作業をするうちに、気分が高揚した彼の口からは、独り言が飛び出していた。

「あいつより先に……。僕が過去へ行く!」

 宣言と共に、タイムマシン始動のレバーを押す。



 走り出す自動車のような振動が、彼の体に伝わってきた。

 これが、時間を遡る感覚なのだろう。

 続いて、視野がおかしくなった。目の前が真っ赤になったのだ。いや、真っ青になったのだ。緑一色になったのだ。

 目まぐるしく変わるのが眩しくて、瞼を閉じてみたが効果はなかった。どうやら見えているのではなく、そう感じているだけらしい。

 視覚異常のせいか、頭も痛くなってきた。ズキンとした鈍い頭痛ではなく、ピリッとした痛みだ。刺激物を食べて舌が痺れたような感覚が、口の中ではなく脳内を走り回っていた。

 そうした気持ち悪さが続いたのは、数分かもしれない。あるいは、数時間かもしれない。そもそも時間の中を移動している以上、それらは体感時間に過ぎず、実際には『数分』も『数時間』も存在しないはずだった。

 だから太郎助手は、ひたすら耐えて……。

   

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