街を歩いていたら、路上ミュージシャンが「浮気がバレた男の詩」なる歌を熱唱していた
今日の夕方、街を歩いていると路上ミュージシャンがライブをしていた。
普段、そういうのに興味なく通り過ぎるが、彼の言った歌のタイトルが気になり、俺は思わず足を止めた。
「次の曲⋯⋯『浮気がバレた男の詩』聴いてください」
なにそのタイトル。
声を出さず、心に浮かんだツッコミは、彼のギターの音とともに宙に溶けた。
「オレの浮気がバレた次の日~
君はいなくなったね
やけに広く感じる部屋
そりゃそうか家具がほとんどなーい」
物理的に広がっててワロタ。
「部屋に残されたのは俺と冷蔵庫
右からも左からも開く優れもの」
ちょっと冷蔵庫自慢しててワロタ。
「冷凍庫の引き出し開いたら
見つけたよ
君から僕への
last message~~!」
おっ、いよいよサビかな?
「飲みかけのCoolish!
すすりかけのCoolish!」
バカなの?
「浮気なんて慎重にしなきゃダメなのに
スマホのロックを誕生日にしちゃってたー!
(0427、死にな)」
何をコーラスしとるんだ。
「なんて俺はfoolish!
底なしのfoolish!」
これ言いたくて、Coolishって言ってたの?
やっぱりバカなの?
「Coolishと
恋の魔法は
とても似てるよねー」
何が?
「Coolishも~
恋の魔法も~
一度とけたら、とけてしまったら~!!」
溜めるな、そんなことで。
「冷却期間があっても
もう元には戻らなぁぁぁあい~!」
お前は何を言ってるんだ。
その後もソイツは歌を続けてた。
「また聞きたいよ君からの
Hold me tight」
「そんな妄想して
アホみたい」
「好きな魚は
金目鯛」
ムリヤリ韻を踏むな。
「でも本当に好きな魚は~~~!」
「シャケェ⋯⋯」
最後まで聞いて、俺は急いで家に帰った。
ツッコミを心に留める自信が無かったのだ。
家についた途端、叫んだ。
「シャケいらん!」
─おわり─