表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1

はじめまして。よろしくお願いします。

恋愛において、最も辛いことはやはり失恋だ。


「ねえ、私の相談に乗ってくれない?」


 ーーだが、好きな人に恋愛相談をされることはさらに辛いことだ。これは、好きな人の恋の成就を手伝うある男の話。




 今年から高校に通う萩洋介(はぎようすけ)はその日、いつも通りに学校に向かい、授業をうけていた。


「二次関数をみたらまず平方完成をしろ〜。そこから頂点を求めて………」


 洋介は文系であり、数学は苦手だ。基本的に授業をきいても理解することができないため、大体無視して自習している。そのあとで、友人に個別で質問している。その方がわかりやすいからだ。


 気が付けば授業も終わり、放課後。洋介は部活動に所属していないため帰宅だ。()()()()()


「で、今日の数学の授業で分からなかったところはどこなの?」


 そう言って話しかけてくるのは姫金沙羅(ひめかねさら)。艶やかな黒髪はミディアムにそろえられ、シルクのように滑らかな肌は窓から差し込む光を浴びて輝いている。飛び抜けた美人とまでは言わないが、ふとしたときに浮かべる笑みは見る者を魅了する。


 諸事情があり、洋介は沙羅と放課後にこうして勉強会を開いている。文系の洋介と理系の沙羅ではそれぞれ得意な分野が異なるため、こうしてそれぞれの分からない部分を教えあっている。


「平方完成ってのは分かるけど、実数解ってなんのことかが全く分からん」


「あー、それはね、グラフとx軸の接点の数のことをさしてるの。難しい言葉使ってるけど、結局はそれだけなの」


「ふむ…ということはyに0を代入したときのxの数を求めるってことか?」


「そういうこと!」


 沙羅は、教えることも相当上手く、理系科目がからっきしの洋介にも分かるように、簡単に説明してくれる。だから、沙羅は洋介にとってなくてはならない存在となっていた。


 しかし、現在は7月。あと少しで夏休みがおとずれることになる。夏休みに入れば今のように放課後にともに勉強をすることができなくなる。


 いや、洋介にとってそれ以上に辛いのは沙羅と共に過ごす時間がなくなることだ。共に勉強をし、教え合ううちに、洋介は沙羅に対して単なる勉強仲間以上の感情を持つようになっていた。端的に言うと、既に惚れていたのだ。


 だから、夏休みの間にも沙羅と少しでも接点を持てるように、行動を起こそうとしていた。


「ねえ、萩くん聞いてる?」


「もちろん。今岡がまたパソコン室のパソコンをバグらせてんだろ。これで何回目だ?」


「さぁ…二回に一回はダメにしてるよねー」


 だが、洋介は決して勇気がある人物ではない。基本的に自分から行動を起こすことは少なく、何事においても先手を取られることが多い。つまり何がいいたいかと言うと、夏休みに会えないかと誘うのにヘタれていた。


「そういやもう直ぐ夏休みだけどさ、何か予定とかある?」


「いや、今のところない。姫金は?」

 

「う〜ん。今のところはないかなぁ…」

 

 だったら夏休みの間もこうして一緒に勉強しないか、そう洋介が口にしようとしたときだった。


「ねぇ、ちょっと聞いてほしいことがあるんだけどさ、いいかな?」


「ん?どうしたんだ?」 


 沙羅は一拍おいた。ここで遮って自分の意見を言わなかったことを洋介はこれから後悔することになる。


「私、好きな人がいるんだ」


 瞬間、洋介の世界が黒に染まった。だが沙羅は構わず続けて言う。


「ねえ、私の相談に乗ってくれない?」

 

 







 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ