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プロローグ

初投稿です。

今日は俺にとって、ただ毎日過ぎ去っていく一日ではない、もっと特別な意味を持つ一日だった。


4年前、俺は当時有名だった占い師に「アンタ早死にするけど異世界に転生することになるから今のうちに身体でも鍛えてなさい。」と、絶対に普通ではない占い結果を言い渡されてしまったが、その当時は俺も14歳という若さであり、しかもバリッバリの中二病だったので、その占いを信じ込んでしまい、当時入っていたパソコン部を辞めていくつもの運動部を掛け持ちして身体を鍛えていた。


そこからの4年間は本当に異世界転生後のために人生を捧げていたと言っても過言ではないだろう。時には異世界なんて本当にあるのかと疑った時もあった、というかむしろ中学校を卒業した辺りからずっと疑ってた。高校にも入学せず、ただ身体を鍛えるだけの生活に嫌気がさしていた。

しかしそんな生活も今日でお終い、なぜなら。


俺はたった今、命を失ったからだ。


その瞬間は唐突に訪れた、いつも通りランニングをしていたらその途中にある銀行で悲鳴があがった。ふと中を除くと、そこには覆面を被ったいかにも強盗ですって見た目をした奴らが銀行内で女性を人質にとり金を要求していたのだ。

俺はすぐさま銀行に駆け込み、人質を奪い、そして強盗と闘った。


4年間鍛え続けた屈強な俺の肉体を見て何人かの強盗が怯んだ隙に奴らを殴り倒していった。残った奴らが刃物で抵抗してきたが、軽い怪我をする程度で済んだ。


しかし、ひとつだけ予想外なことが起きた。たったひとつだがそれが命取りだった。


強盗の一人がショットガンを持っていたのだ。


俺の自慢の筋肉もショットガンには敵わない、容赦なく放たれた弾に俺の身体は撃ち抜かれ、そして…暗転。


意識を失う寸前に何となく理解できた、自分は死ぬんだと。




気がつけば俺は不思議な空間にいた。


一面が真っ白でこの世とは思えない空間、そこにこの世のものとは思えない雰囲気を漂わせる老人が1人。


「あの、俺は死んだんですか…?」


あれが夢じゃないなら、俺はきっと死んだはずだ。そしてここもあの世であって目の前の老人もただの人間ではないはずなんだ。だから俺は迷わず疑問を口にした。


「そうだ、お前は死んだ。」


老人はかなりあっさりと、シンプルな答えを教えてくれた。


「俺が死んだ後、あの銀行はどうなりましたか?」

「お前、自分が死んだというのに他人の心配か?まぁいいだろう。」


老人は呆れたようにため息をつきながら教えてくれた。


「強盗はお前の死体に弾切れになるまでショットガンを撃ち続けた、そして武器がなくなった強盗はその後到着した警察によって逮捕された。といったとこだな。まだお前が死んでからあまり時間が経ってないから今言えるのはこのぐらいだ。」


それを聞いて少しだけ安心した、だから俺は1番確認しておきたいことを聞くことにした。


「貴方は多分神様…なんですよね?」

「いかにも。」

「じゃあ…俺は転生できるんですか!?」


そう、俺は異世界に転生することを前提に生きていたも同然なのだ。ここで「そんなわけないだろ」とでも言われたらもう詰んだとしか言えない。


「お前は生前、占い師に異世界転生できると言われたのだったな。」

「はい、今は半信半疑ですけど…でも早死にするって占いは当たったわけだし。」

「だが…そのことなんだがな。」


神様は少し申し訳なさそうに言った。


「できないことはないんだ、というかお前は異世界に転生することが生まれた頃から決まっていたしな。」

「そうなんですか!?」


それは初耳だ。


「そもそも異世界に転生する人間には2種類あってな、まず生まれた頃から転生することが決まっていた人間。もうひとつは神の情けで転生させてもらう人間。」


後者の方は中学校の頃読んでたラノベなんかでよく見たシチュエーションだ。


「お前はその前者に当たるわけだが…ちと問題があってな。」

「問題?」

「あー…なんていうか、完全にこちら側の不手際で本当に申し訳ないんだが…わしの他にも神様っていっぱいいてな?そいつらが後先考えずにあの世に行くはずだった死人を情けで転生させまくったんだ。」

「はぁ」


嫌な予感がする。


「そのせいであの世は亡霊不足に陥ってな、現世とのバランスが取れなくなったんだ。このままだと亡霊が仲間欲しさに現世に降り立ち生きてる人間をあの世に連れ去ったりなんて違反行為も増えたりするわけで…」

「あの世もあの世で大変なんですね…。」

「今は後先考えずに死人を転生させまくった神達はみんな降格させられてただの霊になっているが、これ以上異世界転生者を増やすと困るって言うか…」

「ち、ちょっと待ってくださいよ!じゃあ、俺は転生できないんですか!?」


もしそうだとしたらその神様達のせいでこっちは大迷惑だ。


「いや!そうとは言っとらん!要は異世界転生した奴らをあの世に連れ戻せばいいんだ。」

「連れ戻す?」

「そうだ、異世界転生した奴らの中にはその世界に良い影響を与えた者もいるが…そうでもない者もいる、そういう奴らをあの世に連れ戻していけばいい。5人ぐらい連れ戻せば…まぁ1人ぐらいは転生させる余裕ができるだろうな。」

「どうやって連れ戻すんですか?」

「…本当に、君には迷惑ばかりかけることになるんだが。」


神様は俺に頭を下げてから言った。


「転生した人間を転生した先で死なせることができれば、そいつはあの世に行く。死に戻りや不死といった能力でもない限り、倒すのに苦労はしても死なないということはないだろう。だから…君に転生した人間を殺す旅に出てほしい。」

「お、俺が!?」


人を殺す旅に出る、なんて物騒な旅だ。当然俺は人なんて殺したこともないし殺す勇気もない。


「無理ですよそんなの!」

「しかしそうでもしないと君を転生させることができないのだ!旅が終わったら君には一切不自由はさせない、約束する!」


いくら転生のためとはいえ人を殺すなんて、そんなことできるわけがない。


「いいか、君に殺してもらうのはどうしようもないような悪人ばかりだ。そいつらによって困らされてる人々もいる。だから君は奴らを殺しても気に病む必要は無いんだ!そもそも元々死ぬはずだった人間なのだから!命を奪うんじゃない、元に戻すだけだ。」

「と言われても…」


やっぱり気は乗らない。


「頼む!君にしか頼めないんだ!君のような屈強な身体を持ち、大人数の強盗相手にたった一人で立ち向かうような勇気と正義感を持った者にしか頼めないんだよ!」


神様は俺に土下座をした。


「そんな、頭を上げてください。神様に土下座されるなんて…」


正直、俺に断る理由はない。人を殺すことさえ除けば。そう、それさえ目を瞑れば少し面倒事に巻き込まれるだけなんだ。


「…わかりました、やります。俺がその仕事を引き受けます。」

「本当か!?」

「ええ、困ってるのはお互い一緒ですし。」

「本当にありがとう、しかし丸腰で闘うのは辛いだろう。わしにはチート的な能力を君に与える力はないが、君が闘いやすくすることはできる。」


そう言うと神様は俺の胸に手を当てた。すると神様の手から何かが俺の胸を伝って全身から流れ込んでくる感覚を感じた。


「なんですか、今の。」

「君はこれから色んな異世界を巡るだろう、その世界に君が適応する力を与えた。言語やその世界特有の力を扱えるようになる素質等だな。力自体を与えたわけではないから特訓は必要だが。」


なんだか力が湧いてくる感じがした、死んだ俺が言うのもアレだけど、生きる気力が湧いてきたって感じ。


「ではこのリストに書かれた人間を殺していってくれ。」


神様に黒い紙を渡された、そこには5人の人間の顔と名前が記載されていた。


「なんか…みんな笑っちゃうぐらい悪人面だな。」


思わず笑いそうになるが、この人たちをこれから殺すのだと思うと笑えなくなる。


「最後に、君が自分の口で自分の名前を口にするのだ。そうすれば契約成立ということになり、君の旅が始まる。」


俺は深く息を吸った、ここで俺が自分の名前を言えばもう後戻りはできなくなる。深く吸った息を吐き出し、覚悟を決めた。俺は…


「戸城…雄騎。(トシロ ユウキ)」


名乗った瞬間に目の前に扉が現れる。


「契約成立だ、さぁ雄騎よ。その扉を開けば君が行くべき世界へ行ける。行って、闘うのだ。」


扉が開く、目の前に大自然が広がる。吸ったこともないような澄んだ空気が肺を満たす。

不安や恐怖、そしてほんの少しの期待と希望を胸に抱え、俺は1歩を踏み出した。

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