第8話 襲撃
夜が明け、いよいよ 山を下りて都に向かうことになった。
私は相変わらず縛られており、前に坂田金時、右に渡辺綱、後ろに碓井貞光、真ん中に源頼光、そしてその横に私がいるという構図である
(・・・・・なにこれ、完全に護送じゃん!)
しばらく、山を下りていたのだが、その間ずっと沈黙が流れ、会話という会話がなかった為、
(き、気まずい・・・)
少し質問して場の空気を和ませようと試みることにした。
「あ、あの~ちょっといいですか? 頼光様達は、どうして、この山に来たんですか?」
「貴様に答える事はない!」
貞光は、冷たく瑞季を睨みつけ質問を拒絶した。
「あ・・・す、すみません・・・」
(私・・・絶対にこの人に嫌われているなぁ~なんかすっごい睨んでくるし・・・)
「まっ それぐらいはいいんじゃねぇの?」
「そうですね、結局 見つからなかったわけですし」
貞光には嫌われているようだが金時と綱には、ある程度許容されているようで質問に答える事に同意してくれた。
「私たちは、ある妖怪を討伐に来たんだ。」
ドキッ!!タラタラタラ・・・
私の額からは冷や汗が滝のように流れ、心臓は早音を打っている。
(え、え~っと・・・それって、私?じゃないよね・・・密告者?)
≪可能性としては約50%の格率ですね≫
(ようするに、五分五分って事でしょ?・・・き、聞くしかないかな・・・ゴクリ)
「そ・・・その妖怪の名前を聞いても・・・?」
「? あぁ、その妖怪の名は・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ ドギャ バキ ゴゴゴゴ・・・
「なんだ・・何の音だ!?」
「・・・・近づいてくる、それも一つや二つじゃない。・・・どうやらつけられていたらしい」
金時と貞光は自分の得物をひき抜き、綱は、術式を組み、頼光も気を引き締め戦闘態勢に入る。
私たちの下りてきた山頂の方から黒い影が山の木々を押し倒しながら沢山の足音が近づいてくる音が響きわたり、ついにそれらは姿を現した。
「くっ・・・現れたか、”土蜘蛛”」
そう、私達の後方から現れたのは体長2メートル程の大型の蜘蛛に鬼の頭を持った 土蜘蛛の群れだった
すぐさま、貞光は刀に氷の妖気を纏わせ、前方の金時もマサカリを担いで後方にやって来て土蜘蛛に向けていつでも振り下ろせるように雷を纏わせかまえる。
「なんだよ、土蜘蛛の群れとはいえ五匹程度なら、俺だけでも十分だぜ」
「油断するな、脳筋 たいした妖怪じゃないが数が揃うとそこそこ厄介だ」
「お二人とも!あまり強くないとはいえ警戒心が薄すぎませんか?」
3人は軽口をたたきながら、後方から向かってくる土蜘蛛たちに応戦する構えをする。
(・・・・おかしい、私の知っている土蜘蛛が群れで狩りをする場合、少なくとも10匹以上のハズ…なのに、これは・・・)
牛若姫が暮らしていた山にも土蜘蛛はいたが奴らは一匹一匹は弱いが、ずるがしこい頭を使って戦略を立てる。例えばこういう状況では群れの弱小をおとりに使い、群れのボスが餌にありつく
(あっ! これは 罠だ 後方に戦力を引き付けているうちに・・・)
「頼光様!!左から来ます!!かまえて!!」」
私がそう叫んだ時、武器をかまえるよりも早く左から現れた集団が襲ってきた。
(だめ!・・・私、こんなところでまた・・・え?)
襲ってきた土蜘蛛が瑞季にぶつかるその瞬間、瑞季をかばう形で頼光は立ち憚った。その直後・・・
「大将!!」 「主様!!」 「頼光様!!」
ドガァァァァン
頼光と瑞季は土蜘蛛の激しい突進をくらい、はね飛ばされ谷沿いへと落ちていった
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