第2話 妖刀の刀鍛冶
私が今後の方針について悩んでいると、おもむろにぼんやりとした記憶が蘇ってきた。
どうやら、私は、あの事故で死んで、この世界に妖怪として生まれ変わったらしい。
転生した私の名前は、”牛若姫”この恐ろしの山の妖怪の親玉、牛鬼の一人娘で、なにをかくそう一族の姫である。
父や仲間の妖怪たちは、よく人里に下り 人間を襲って食べていた。
そんな事を続けていたせいで本腰をあげた人間たちによって討伐されることになってしまった訳だ。
ある日 いつものように人間の街を襲いに行った父たちは、人間の軍隊に襲撃されたのだ。
これが普通の人間だったなら大妖怪である我が父、牛鬼が負けるはずがなかったのだが・・
なんと襲撃してきたのは妖怪退治のエキスパートのみで構成された軍隊だったのだ。
仲間の妖怪たちは、次々と倒されていき 父も瀕死の重傷をおいつつ、命からがら私と共に、この鍾乳洞に逃げ込んだのだが・・そこで遂に父は、力尽きて息を引き取ったのである。
父も仲間も失い、怒りや絶望、悲しみなどで一度精神が崩壊したおかげで、
どうやら私、武部 瑞季としての記憶が蘇ったらしい。
(前世の人間としての記憶が戻った今の私にとってお父様と仲間たちがやってきた事は
自業自得だから討伐されてもしかたないんだよね~。だからといって私も殺されたくないし・・・)
心の中で自問自答したあと、自分の今の姿をあらためて水鏡で覗き見ながら胸や腰回り、顔を念入りにチェックする。
「ちょっと異形だけど・・・前世よりずっと美少女に生まれ変わってスタイル抜群なわけだし、正直、復讐とかに興味ないし、私は平和に楽しく第二の妖生?を暮らそう。」
「とりあえず、今やるべき事は・・・あれ?ど、どうしよう~!!急に瑞季としての記憶が戻ったせいか
妖怪としての記憶が色々と吹っ飛んでるよ~~!!!」
色々と記憶が虫くいだらけという事実が発覚して、そのことに絶望し、のたうち回っていると突如、頭に電流のような物が走り、頭に流れ込むように牛若姫の頃の能力の記憶が戻って来た。
「思い・・・出した! こういう時は、身体情報解析術式 展開!」
術を発動すると私の目の前にステータースのような物が現れた。
牛若姫 15歳 種族:牛鬼(亜種)
体力:18000
妖力:10000
妖術
火炎術、風術、錬成術、治癒術、万力、幻想術
固有能力
剣豪、人化、身体情報解析、密告者
称号
牛鬼の姫、復讐者、血に酔う者、剣鬼
装備
なし
「このステータスが強いのか弱いのか 今一つわからないけど・・・とりあえずは、妖怪と、ばれない様に、人化かな?」
人化の能力を発動しようとした、その時、脳に再び電流が走り、頭に直接、声が響いてきた。
≪報告します、人化を使用中は、他の妖術は一切発動できませんし全ての身体能力も半減します。≫
「あ、そういえば そうだっけ・・・・って誰!?」
≪あなたの固有能力:密告者です≫
密告者は自分の現状に最適な助言や警告を脳内に連絡してくれるいわば、脳内ナレーターである。
「う~ん、じゃぁ、とりあえず、お父様の躯をこのままにしておけないし、埋葬が先かな え~っと・・火炎術・・・鬼火!」
父の大きな躯を見て、私は妖術が使えるうちに父を火葬することにした。
父の遺体は、私の鬼火で少しずつ音を立てながら その身を燃やし骨だけになっていく
「お父様・・・安らかに御眠り下さい・・・」
手を合わせて黙祷を捧げた。確かに父を失った悲しみはあるが不思議と人間に復讐したいとまでは思わなかった。
(あまり牛若姫だった頃の記憶が思い出せない・・・むしろ前世の記憶の方がハッキリしてる)
考え事をしている間に鬼火が消え、その場には牛鬼の骨と角だけが残されていた。
「あとは、この骨を埋葬して・・・あ!!そういえば私、剣豪スキルを持ってるのに武器を持ってない!」
今まで妖怪として生きてきた牛若姫にとって強大な妖術さえ使えれば武器など必要なかったのだ。
「人化したら、妖術は使えなくなるし・・・どうしよう 密告者!」
≪進言いたします。妖怪牛鬼の遺骨を錬成し、武器を作成することを お勧めします。≫
「え!?う~ん、遺骨を・・・・お父様、あなたの死は無駄にはしません。」
数秒だけ「そんな非人道的な」と考えてから「そういえば妖怪になったんだし・・ま~いっか」と、ためらわずに、私は父の亡骸を使って武器を錬成することに決めた。
(生き残る為だし、きっとお父様も許してくれるよね?)
心の中で軽く謝り、許してと手を合わせ、自己完結してから
「錬成術式・・・鍛冶発動!」
私が両手を前にかざし術式を発動すると赤い五芒星の魔法陣が展開され、鬼火で焼け残った遺骨を錬成術で少しずつ高温で溶かし、凝縮し鋭く磨き上げていくと、一振りの赤い刀身に黒い柄と牛の頭を模した鍔のついた日本刀が誕生した。
≪錬成が完了しました。妖刀:牛頭 が作成できました。≫
完成した牛頭を掴み、赤い刀身を見る。
「・・・さすがお父様の遺骨で作った妖刀・・すっごい禍々しいんですけど。」
妖刀 牛頭の刀身は赤黒い禍々しい妖気を纏っていた。
(憎い・・・んげん・・・・・血を・・・我・・・に・・・)
「? 何か聞こえたような・・・まいっか これで護身用の武器は手に入ったわけだしさて、残る作業は・・・」
牛頭を鞘に納め、腰にさし、もう一度ステータースを開いた。
このとき、牛若姫に忍び寄る妖気に気づく者は、いなかった。
応援ありがとうございます。面白い、続きが気になると思っていただければ、画面下部から
評価していただけると、とても嬉しく、励みになります。コメントも随時募集していますので
「ここをもっとこうしたほうがいい」や「ここが良かった」など書き込んで頂けると嬉しいです