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仲間とともに

世界観的にはドラ〇エの世界に近い感じ。

魔法もあればモンスターもいる。もちろん剣だって活躍する。

勇者はいるけど、そこまでチートでもない(とはいえ人類的に強い存在であることは間違いない)


*タイトル回収は少し後になる予定


"魔王を封じる剣"なるものが存在しているダンジョン、その最下層。


 俺を含めた七人のメンバーはその剣を求めて探索を続けていた。

 そんな御大層な物が眠っているからか、ここのダンジョンの難易度は半端じゃない。罠もモンスターも殺意高過ぎなんだよ、ホントに。

 だが、俺たちは一人も欠けずにその最奥へとたどり着いた。



 なんせ、俺たちは……勇者パーティーだからな!



 勇者と呼ばれる存在。それは常人には持ち得ないような特別な力を持つ人間のことだ。

 勇者の力はいくつかあるが、その一つが勇者自身とその仲間への成長補正だ。伝説によれば生身でオリハルコンの鎧を粉砕したとか、剣の一振りで湖を割ったとか、魔法で山を作り上げたとか、色々ととんでもないことがまことしやかに囁かれてる。


 まあ、さすがに伝説は伝説だと思うが。俺がこうして勇者の仲間になって、たしかに能力の向上は感じるが素手でオリハルコンはさすがに無理だ。せいぜい鋼の鎧がいいとこだわ。


 まあ一般人はそんなことできないだろうから勇者の成長補正ってのは相当なもんなんだろう。



 ぶっちゃけバケモノレベルだよ、勇者と その仲間ってのは。勇者パーティー一つで国一つくらいなら落とせるんじゃねえかな。


 とはいえ、その化け物が七人も集まって苦戦するくらいにはここのダンジョンは鬼畜なんだが。



 洞窟とか森の迷路みたいなのと違って、遺跡タイプなおかげで足元は石畳が敷いてあって歩きやすいし死角がそこかしこに存在してるってわけじゃあないが……

 陽の光も浴びず何日もジメジメしたところにこもってるせいで気が沈んでしょうがねえ。


「後どれくらいかかるのかねー。早く地上に戻って日向ぼっこでもしたい気分だよ。なあ、アスト。」

「えっ!? あ、ああ、うん、そうだね。みんなで帰りたい……よね。」


 俺のテキトーに言った言葉に対して、やけに歯切れが悪く返すアスト。


「おいおい、どうしたんだよ。ひょっとして、誰かが死ぬ未来でも見えたのか、"予言"の勇者様?」


 そう、このアストこそ我らがパーティーの勇者。やけに中性的な顔つきで、美少女にも美少年にも見えるコイツこそが、"予言"なんて力を持つ勇者なのだ。

 断片的とはいえ未来を見ることができ、誰も知らないようなことを知ることができるコイツの言葉は重い・・

 未来が努力次第でひっくり返せる物だということは知っているが、さすがに誰かが死ぬかもしれないなんてことは聞き流せない。



「い、いや、違うよ!? そんなわけないじゃないか、カレン。」

「……カレンって呼ぶんじゃねえ。俺が女みてえじゃねえか。」

「いや、カレンの本名ってカレンデュラじゃん。どっちにしろ女っぽいよ? というか、いい加減慣れなよ。」



 だぁー! 何でうちの村の連中は男にも女っぽい名前をつけるんだよ!! 子供の気持ちもちったあ考えやがれ!



「せめて他の呼び方ができればいいんだけどね。レンとかだとランとかぶっちゃうし。」

「アスト君に呼ばれた!? ランは喜び勇んでアスト君の話し相手になるよ!?」

「うおっ!? ラン、てめえ俺を突き飛ばそうとしてんじやねえ!」



 突如話に乱入してきたピンク色はランという名前のエルフだ。

 自然との調和を好みおおらかな性格だというエルフ……のくせにピンク髪なんてサイケデリックな色調、しかもアストが好きだということを公言してはばからず、最初に会ったときは見事に俺の中のエルフ像をぶち壊してくれた。

 なお、性別は女である。せめて男だったら……うん、もっとキモいことになってたんだろうな。



 って! ええい! 押すな押すな!

 魔術師の貧弱なステータスでは俺には勝てんわ!



「というか、お前魔術師なんだからちゃんと安全な真ん中にいろ! 前に出てくるんじゃねえ!」

「ええー、いいじゃん別にー。アスト君の予言とフィリアちゃんの索敵をかいくぐってくるのなんていないでしょー。」

「楽観的過ぎるわ! もう少し緊張感を持て!」

 


 まったく、このお気楽ピンクは……



 なおしつこくアストに絡もうとするランを見かねたのか、フィリアの手がランの肩に置かれアストから力ずくに引き剥がす。


「あ、あの、フィリアちゃん? どうして無言で引っ張るの? 割と肩が痛いっていうか顔が怖いって言うか。」

「いいから、だまって、もどれ。」

「痛い痛い痛い! ギブギブギブ!!」

「…………」

「というか、待って! せめてカレンはアスト君から引き離すべき、って痛い痛い! なんかメキッていったー!? 私の肩から聞こえてはいけない音が!?」

「よけいな、ことを、いうんじゃ、ない。」



 そうしてラン(変態)は後ろの方へと引きずられて行った。

 ありがとう、フィリア。


 フィリアは盗賊……とはいっても罠とかを解除したり索敵を担当したりと俗に言うシーフというやつだ。ステータス的には前衛に近いから、完全に後衛なランであれば物理的に引き剥がすことができる。

 見た目ならフィリアのほうがか弱く見えるんだけどな。ちんまりとした猫耳娘だし。

 

 ちなみにフィリアは俺の幼なじみでもある。同じ村出身で、小さい頃から共に育った仲だ。



 まあ、幼なじみはもう一人いて


「まあまあ、もう長いこと進みっぱなしだからランちゃんも疲れてるのよん。そろそろ休憩したらどうかしらん?」



 ……この、犬耳な上に普段から(ダンジョン攻略中だろうと)ヒラヒラのフリルを身に付けた、なんというか色々と属性を盛り込んだ濃い奴がもう一人の幼なじみなのだが。



「まあカモミールちゃんもちょっと疲れたから休憩したいな☆ っていうのが本音なんだけどねん☆」

「自分自身にちゃんつけるの止めようぜ? ほんとマジでイラッとくるから。」

「てへぺろ☆」

 


 う、うぜえ……。なにがてへぺろ、なんだよ。



「あら、てへぺろじやないわ、『てへぺろ☆』よん♪」

「ええい! ナチュラルに思考を読むんじゃねえ!」



 まったくこの幼なじみは……。

 一番納得いかねえのが、コイツこの見た目で盾役ってことなんだよな……。しかも普通に頼りになる。そこがまたうざい。


 というか、コイツについた二つ名が《無敵要塞イモータルガード》だぞ!? だれがこんな要塞にこもりたいんだよ!? 見た目とのギャップが……いや、意外と身長高いしがっしりしてたりするから、納得と言えば納得なんだが!



 くっそ、ホントに俺の二つ名と交換してほしいわ! 俺の二つ名なんて《厨二乙》だぞ!?

 確かに珍しい闇属性持ちで、調子に乗ってた時期はあったけどぉ! 



 ああ……俺も《闇纏いシャドウクロス》とか《影と夜の支配者ダークソウル・オブ・ドミネーター》とか、かっこいい二つ名が欲しかった!!




「それで、カレンどうする? 休憩する?」

「ええ、なんで俺に聞くんだよアスト……。そういうパーティーの管理とかはグロウリーの仕事だろ?」


 

 俺は細かいこととか分からんからな! 戦うのは得意なんだがそれ以外は正直さっぱり過ぎてまるで参考にならん。昔からフィリアやカモミールにはもっと周りを見ろとかお小言を言われてばっかだしな……。



「はあ、そうやってなんでもかんでも僕に押し付けるのやめてね?」

「とかなんとか言いながらもちゃんと仕事しようとするグロウリーはさすがオカンだよね~。」




 俺の言葉に反応してグロウリーとペチュニアから声がかけられる。


 グロウリーは剣士、正確に言えば剣聖と呼ばれるほどの剣の達人なのだが、普段はただの優男でパーティーのオカン的な存在である(なお、うちのパーティーは全員グロウリーに胃袋をつかまれている)。とはいえ戦闘モードになってスイッチの入ったグロウリーはなかなか獰猛な雰囲気を漂わせてくるのだが。


 ペチュニアの方はヒーラーだ。なんともまあ、間延びした言葉遣いをするほんわか幼女ではあるのだが、勇者補正なしで世界で二番目の回復魔法の使い手らしい。見た目八歳くらいにしか見えないが、実年齢は十代後半らしい……。いわゆる合法ロ



「ん~? 何か変なこと考えてない~?」



 おっと何でもない。ペチュニアの機嫌を損ねるとオカンに怒られてしまうからな。なんせ、この二人は付き合っている。

 とはいえ、見た目八歳の幼女であるペチュニアと実年齢通りの見た目してるグロウリー(21歳)が並ぶと犯罪的……というか、グロウリーがロリコ



「カレン? 何を考えているのかな?」

「え? いやいや何でもないデスよ!?」


 あ、焦って言葉遣いが変になってしまった。

 まあ、グロウリーの性癖については置いておくとしても、男女比3:4のこのパーティーで唯一のカップルなんだよなぁ。

 だれだよ、同じ男女混合のパーティーだとカップルが誕生しやすいとか言ったの。あ、アストとランはカップルではない判定だからな。愛情が完全に一方通行だしな!


 いや、待て。さっきから俺の思考読まれすぎでは?



 ……って、また思考が乱れてる。ダンジョン攻略に集中しなきゃならんのに。うーむ、俺も相当疲れてんのかなぁ。



 案外、疲労ってのは自分自身では気づきにくいものだったりする。

 だからこそパーティーメンバー全員のコンデションとかを把握してくれてるグロウリーにみんな頭が上がらなかったり。



「うーん、アストも調子悪いみたいだし、ここまでの探索でみんな疲れてるしね。ちょっと早いけど、ここら辺で今日は終わりにしようか。一晩ぐっすり寝て、シャキッとしてから攻略を再開しようか。

 それじゃあ、ペチュニアは結界を張ってくれる? あと、カレンは食べられそうなモンスターを狩ってきて。」

「ほいきた~」

「おう!」



 影を身にまとい、ダンジョンの風景に同化しながら一人で歩く。こういう使い方はあまり好きじゃないが、闇属性的には得意分野だ。

 コソコソと食べられそう、かつ、弱そうで俺一人でも狩れそうなモンスターを探していく。



 そんななか、なぜか今までのことが頭をよぎっていく。

 どこにでもいるような、田舎の村のガキ大将だった俺。勇者の伝説に憧れたりしたけどどこか遠くのことみたいで、自分がそうなるなんてこと全く考えてもいなかった。

 そんな俺がひょんなことからアストに出会って、そのパーティーメンバーの一人に選ばれてしまった。


 最初のころはこんなのより俺の方が強い! なんて調子乗ってた頃もあったなぁ。


 それがいつだっけか。アストの奴に命を救われて。


 いつのまにか勇者パーティーの一員であることに誇りを感じていた。



 《"予言"の勇者》 ストック・アストロメリー

 《至剣しけん》 グロウリー

 《慈愛》 ペチュニア

 《無敵要塞イモータルガード》 カモミール

 《蒼の波紋ポセイディアウェーブ》 フィリア

 《桃色の魔弾ラブハリケーン》 ラン


 そしてこの俺、《厨二乙》ことカレンデュラ!

 この七人が俺たち勇者パーティーのメンバーだぜ! なんて胸を張って言えるようになった。



 危険もあったし、死にかけたことだって二度や三度じゃない。それでも誰一人欠けることなくここまで来ることができた。

 だからこそ、この日常が嬉しくて。尊くて。



 だから、こんな毎日がこれからも続いていって欲しいって、むしろ絶対続いていくはずだって、この時の俺は信じてた。

 







 

 ……ところでさぁ、やっぱり俺だけ《厨二乙》っておかしくね?


面白いと思っていただけたら、ブクマ、評価等お願いします。

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