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オトナだけの町  作者: 佐原凍理
2/2

後編:ハジマリときっかけ

ぜひ、お読みください。就寝のお供にでも。

 昔、昔といってもほんの少しだけ、スーパーのおばさんがまだ若いと言えるほどの年齢だった頃、町に一人のジャーナリストが訪れました。彼は都会でも田舎でもなく、そのはざまにあるくらいの町がとても好きでした。そして、その訪れた町を記事にして紹介するのが彼の仕事でした。当時、彼がこの町を訪れたのも、仕事の一環でした。彼は好きなことができるこの仕事が好きで、誇りに思っていました。彼はこの町の色々な所を訪ねては、何枚も写真を撮りました。

 そんな風にして町を回っていると、角から飛び出してきた二人の子どもとぶつかってしまいました。彼は割と鍛えている方だったので、突然の衝撃にも耐えることができました。実は、この二人の子どもは後の少年と少女なのですが、そんなことは彼にも本人達にもわかるはずはありません。とにかく、彼は謝った後、怪我はないかと心配しました。そんな彼に対して、小さな少年、といっても少女よりは大きいのですが、はひどく彼を警戒していました。

「おまえもほかのおとなみたいにおかしくなっちゃったんだろ!?■■■ちゃんに手は出させないからな!」

勿論、少年が彼を警戒するのにも理由があります。最近、大人達が突如として訳のわからないことを言い始め、子どもたちにひどいことをし始めたのです。それは例えばてるてる坊主にしたり、晩ごはんのおかずにしたり、あるいはゴミ箱にしたりと、ひどいことの限りを尽くそうとしていました。そして、今残っている少年の仲間は少年と少女と近所に住む大学生のお兄さんだけでした。お兄さんはおかしくなり始めた大人達を見て、まだおかしくなっていないうちに子ども達を守ろうとしていました。しかし、最近は立て続けに守るのに失敗して、家で塞ぎこんでいるのでした。話が逸れましたが、そういう理由で見知らぬ大人を見た少年は、こいつもおかしくなっているのだろうと思ったのです。少女は少年の陰に隠れて小さく震えながら

「お兄ちゃぁん……」と小さく助けを求めるだけです。少年は相変わらずその小さな拳を構えて

「守らなきゃ…■■■ちゃんよりも年上なんだから、守らなきゃ…!」

と彼を警戒するばかりです。

 彼が少年に弁解しようとしたその時、鈍い音がしました。彼が鈍器で頭を殴られたのです。殴ったのは大学生のお兄さんでした。お兄さんは引きつった笑みを浮かべると、

「大丈夫だった?僕ね、今日誕生日なの。祝わない奴は大人どもみたいにどうかしてる。君達も祝ってくれるよね?祝え祝えよほらお前ら祝えよ!」

そんなことを言いながら、少年達にまで手に持ったコンクリートブロックで殴ろうとしてきます。しかし、その手を止める者がいました。彼です。間一髪気絶を免れることができた彼は、突然襲われて硬直してもおかしくないのにお兄さんを止めたのです。ですが残念なことに、お兄さんがもがくと拘束はあっさり解けてしまいました。ただ、お兄さんはまたコンクリートブロックを振り上げることはせず、引きつった笑みのまま、どこかへ去って行きました。

 ひどく危険な目に遭った彼は、もうこの町で取材を続けるのは難しいと判断し、この町を去ることにしました。そこで、折角なので目の前の少年達に別れのあいさつをしました。

「危なかったね。僕はもうこの町を去ることにするよ。君達も気をつけてね」

そう言って彼が踵を返して立ち去ろうとすると、彼の背中に何か異物が肉に食い込んだような感覚を覚えました。彼が振り向くと、そこにはどこから取り出したのか、カッターを握りしめて彼に刺している少年がいました。動揺した彼が咄嗟に少年を突き飛ばすと、少年はそのまま少女の手を掴んで逃げようとしました。しかし、掴む力が弱かったせいか、少年は少女の手をとれないまま、それに気がつくこともなく、何処かへと逃げていきました。残された少女は、申し訳なさそうに、かなり控えめな声で、

「私も連れていってくれませんか」

と言いました。少女は生まれてこの方この町の外に出たことがなかったので、外の世界を知っている彼についていけば、楽しいと思ったのです。さらには、頼みの綱のお兄さんもおかしくなり、自分を守ってくれていた少年がいなくなったことで、やけっぱちになっていたのもありました。

 しかしながら彼は、そんな少女に

「ふざけるな!こっちに来るなよ!このガキめ!」

と罵声を浴びせて走り去ってしまいました。全力疾走で少女から離れていく彼を見ながら、少女は若干涙目で

「そんなことないもん」

とだけ呟きましたとさ。

これにておしまい。


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