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17話 『絶体絶命』

 

 権は刀を鞘にしまって腰に戻し、花とエイミーの方へ向かって走る。

 今にも名無しはエイミーに襲い掛かりそうだ。

 助けようにも、彼女らの間を挟むのは4人の名無し。

 しかも、この名無しはさっき無理やり名無しにされたばかりの一般人で、まだ形状は生きていた時と同じだ。

 肉体もあるし、充分にまだ助かる。

 その分無闇に斬る事が出来ず、尚更タチが悪い。

 名前を求めてであろう、名無しはぬらりと体を前に突き出しながら本能的に権に寄ってくる。


(斬らなければ大丈夫か? やむ終えん、すまん!)


 権は寄ってくる名無しを蹴り飛ばし、彼女らの方へと近づいていく。


「来ないでください! 来たら刺しますよ!」


 迫り来る名無しに、エイミーが小さなナイフを両手で構える。

 その声も聞こえてないか、理解できてないのか、名無しはゆっくりながらも足を止めない。


「な……まぇ〜……?」


 その名無しは自分が名無しであることをまだ自覚できていないみたいだ。

 しかしながら本能的に彼女らの名前を求めているようだ。

 エイミーはかっと目を見開くと、震える腕に力を込めた。


「どけぇ!」


 今まさにエイミーがナイフで刺そうとしていた名無しは、横に吹き飛びエイミーの視界から外れる。

 そして名無しがいた場所には権が立っていた。

 エイミーは安堵したようで、その場にへたり込んだ。



 権が一時戦闘から離脱した事により、ハリーは1人で今回の原因の巨大な名無しと戦っていた。

 しかし、先程まで二人掛かりでギリギリ抑えていた名無しだ、ハリー1人では相手の攻撃を耐え抜くことがやっとだった。

 それでも、ハリーの扱う鎧の仮名霊『ディバイン・ナイト』は高い防御力で、さほどダメージは少ない。

 しかし、相手の猛攻は防ぎ切れず防戦一方になり、ハリーは苛立ちを覚えていた。

 そんな中、1人の被害者の名無しがハリーの名前を求めて寄ってきた。

 あまり害は無いが、必死に戦っているハリーの背中にひっついてきた。

 そこに、権が再び戻ってくる。

 すぐに、ハリーの背中にひっついている被害者の名無しを剥がしてやらないと大変だ。

 まるで、赤子を背負いながら命がけの戦いをしているようなものだ。

 しかし、ハリーは自分で、背中にひっつく名無しを掴み剥がすと地面に叩きつけた。


「待てっ!」


 そんなまさか。権はハリーに向かって叫ぶ。


「邪魔だっ!」


 しかし、ハリーは一切の迷いも無くその被害者の名無しに剣を突き刺した。

 名無しは力尽きて消滅する。

 その時権の頭の中で何かが切れた。

 戦いをそっちのけで、権はハリーに飛びいて2人は地面を転がった。

 そして、権はハリーに跨ると、胸ぐらを掴み上げる。


「お前ッッッ!! あの人はまだ助かったのに、なんで殺した!」


「邪魔だったから斬ったまでだ、お前も邪魔だ! どけ!」


 ハリーは上に跨る権の頬を殴って退かす。


「っのやろぉぉ!!!」


 激しく怒っている権だったが、そこへ名無しの拳が飛んでくる。


「ぐはっ……」


 生身でその攻撃を受けた権は地面に倒れこむ。

 ハリーもすぐさま起き上がろうとするが、名無しはその隙を見逃さなかった。

 ハリーは何度も上から殴りつけられて起き上がれなくなる。


「どけっ やめろっ! クソッみんな俺の邪魔ばかりしやがって!」


 鎧のおかげでダメージは少ないものの、何度も地面に打ち付けられて思うように動けずにいた。

 その時、ハリーの剣が名無しに弾かれて遠くへ飛んでいった。


「剣が、あぁ!」


 弱々しい声を上げてハリーは焦り出した。

 剣が無くなって意思が弱まったのか、じわじわと、鎧が消えていく。

 段々と名無しの拳が身体に伝わってくる。


「うわ、うわああああああ」


 あの、高慢なハリーから想像できないような悲鳴をあげる。

 その時、ハリーは消えかけ鎧の間を縫って奇跡的に名無しの攻撃から抜け出した。

 地べたに手をつきながら一心不乱に逃げ出す。


「死ねない! こんなところで、俺は死ねないんだ!」


「お兄様!」


 エイミーがハリーに呼びかけるも、その言葉はハリーには届かない。

 名無しの近くにはまだ、倒れてうずくまる権がいる。

 誰かが、あの名無しを止めないと。

 エイミーは手に握りしめていた、小さなナイフを手から離すと名無しに向かって走り出した。

 そして、落ちていたハリーの剣を持ち上げると、名無しの前に立ちふさがった。


「わ、私がみんなを、守ります!」


 震え交じりに名無しに向かって叫ぶが、名無しは何の反応もない。


「ヤァッッ!!」


 エイミーは声で身体を無理やり奮い立たせて名無しに斬りかかった。

 しかし、そんな弱々しい剣もろとも、エイミーは名無しに殴り飛ばされ、地面に頭を打って気を失った。


「クッソォォ!」


  権は地面に拳を叩きつけて無理やり起き上がろうとするが、顔を上げるとそこにはあの名無しがいた。

 絶体絶命か……



「「我が名は『天照(てんしょう)』!!」」



 その時、最も頼れるあの声が聞こえた。

 そう安堵すると、目の前が暗くなってくる。


照天大斬(しょうてんだいざん)!!」


 薄れゆく権の意識に、その声と名無しの断末魔が聞こえてきた。


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