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16話 『騎士』


「無様だなぁ、そこで僕の戦いを見てるといいよ」


 ハリーは両手剣を男の方に向けて構えながら、倒れている権に向かって言った。


「うるせぇ、ちょっと油断しただけだ」


「また、言い訳かい?」


 そう言ってハリーは少し笑うと男に向かって力強く剣で斬りかかって行った。

 たらりと権の首筋に血が流れ落ちる。


「大丈夫ですか、ケンさん!」


 エイミーが権のもとに寄ってきた。

 権はそこらのパイプ椅子に手をついて立ち上がった。


「まだ、全然イケるね……」


 ポンポンと服を何度か叩いて土ぼこりをはらい、権も名無しに向かって足を進める。

 しかし、数歩歩いたところに花に腕を引っ張られた。


「待ってよ! 血が出てるじゃない」


「大したことねえよ、それより、エイミーだっけ? お前戦えないんだろ、早くこの馬鹿女を避難させてくれ。名無しにされた霊もたくさんいる、気をつけろ」


 エイミーは、焦った表情でうなずく。

 権は、花の手を振り払うと男とハリーの戦いに混ざった。

 ハリーの攻撃はいまだ敵に当たっていない、それどころか既にハリーは何度かの攻撃を受けているようだった。

 人間に憑依した状態でこれだけ動けている相手は、相当の力を持つ名無しのようだ。 

 隙を見て再び権も男に向かって斬りかかる。

 2対1なら、権はそう思ったが、ハリーは怒りの意をあらわにした。


「邪魔だ、どけ! これは俺の戦いだ!」


 ハリーは権を手で突き飛ばした。

 戦いの最中でそんなことは当然隙となり、二人とも、もろに男の攻撃を食らった。

 権は胸を掌底で突かれて吹き飛ばされ、その攻撃の流れのまま、ハリーも回し蹴りで腕ごと横から蹴られる。

 避難しようとしていた花とエイミーもその光景を見ると足を止めた。

 体勢を立て直すも、危険と感じ、2人は男から距離をとった。


「おい! こんな時でさえこれかよ!」


 喉がかかった声で権が叫ぶ。


「邪魔をしたお前が悪い! 見せてやる……アルナメントの力を!」


 ハリーは、堂々と立ち、剣を上に掲げた。



「「 I(アイ) am(アム) "Divine(ディバイン) Knight(ナイト)"!! 」」 



 そう叫びながら、ハリーが剣を前に構えると、突如、剣と体は銀色の光に包まれた。

 そして光の中から、まるで中世のヨーロッパの鎧をまとった騎士が現れた。

 鎧は銀色に輝き、剣を構えると鎧がぶつかり合いガチャリと音を立てる。

 ハリーは、騎士の鎧の仮名霊に憑依したのだ。


「ディバインナイト……? 権の鎧とは違う、まるで西洋の騎士みたい……」


 状況も忘れ、唖然とした花の口から言葉が漏れる。

 隣にいたエイミーは、権の知り合いということと、今の発言で、花が何となく霊斬りについて知ってる事を察した。


「あの鎧はアルナメント家の当主に代々受け継がれてきた鎧の仮名霊です。強力で頑丈な鎧ですが、扱いが難しく、19の若さでこれを使える兄様は、お強いですよ」


 焦りながらも、絶対的に兄の強さへの信頼を持つエイミーは少し心を落ち着けた様子である。


「お前に任せてられるかよ」


 権は腰から刀の鞘を取り外し、納刀した。



「「 我が名は『業火』!! 」」



 刀を鞘から引き抜くと、同時に黒い煙が鞘の中から溢れ出た。

 煙に体を包まれ、そして煙の中から赤黒い鎧をまとった武者が現れた。

 

 権の鎧の憑依を待つ暇もなく、鎧をまとったハリーは、勢いをつけた大きな一撃を男にぶつける。

 避け遅れた男の右腕を斬るも、剣は腕をすり抜けた。

 憑依された人間から名無しを取り除くには、胴体などに確実な一撃を食らわせるしかない。

 それでもやっと男に攻撃が当たった。

 さっきまでとは違う、力強い剣さばきに、男は少し動揺したようだ。

 しかしハリーが二撃目と、斬りかかるともう慣れたかのように男は剣を避けた。

 今度はそこに鎧をまとった権が飛びかかった。

 権は、空中で頭上に刀を振りかぶると、その刀は太陽の光を受け輝いた。


照天大斬(しょうてんだいざん)!!」


 空から勢いよく落ちてくる斬撃を今度こそは男も、うまく避けきれず地べたに転がり込んだ。

 すかさず、ハリーはうつ伏せに倒れた男の背中に剣を突き刺した。


「ふんっ、これくらい」


 ハリーが男の体から剣を引き抜くと、男の体はぐたりと力が抜けたようになった。

 すると男の体から滲み出るように黒い煙のようなものが出てき、やがて固まり2メートル半を超える化け物のようになった。

 体は黒く、筋肉のようなものがわかる動物的な外見に、二足で立っていながらも腕は地面にも届きそうなほど大きい。

 

「キミたちの名前なんて……もういらない……」


 名無しは、その大きな腕を横に振り権たちに襲いかかった。

 権とハリーはそれぞれの腕を剣で受け止めるも、上から圧倒的な名無しの力で押される。


「ぐぅ……重い……」


 このまま力比べをしてても潰されるのも時間の問題だ。


「きゃあ!」


 戦う権の後ろの方で女性の悲鳴が聞こえた。

 権は名無しの腕をこらえながら、悲鳴が聞こえた方に目を向けると、今まさに、先程名無しになった人達に襲われそうになっている、花とエイミーがいた。

 エイミーは花の前に立って守ろうとしているもの、戦う術が無いのであろう、顔は焦りの表情を見せている。

 今まさに、自分が押し潰されそうになっている状況でも、人が襲われそうになっている。

 ハリーでさえも1人ではこの名無しを倒せるとは思えない、かといって花とエイミーを見殺しにするなんてできない。

 権は葛藤した。



「権!!!!」



 花の叫びが権に聞こえた。

 権は刀に力を込めると刀は熱くなり炎が溢れ出てきた。

 相手がひるみ、腕の力が弱まると同時に、相手の手のひらと競り合ってた刀を滑らせて、その場から逃げきり、そのまま花の下へと駆け出した。


 

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