14話 『名家』
和尚に呼ばれて暁達のいる部屋に入ってきたのは、外国人の青年と、少女であった。
青年は背が高い良い体格で堂々と立ち、比べて少女は小さく、二つに結んだ金髪の綺麗な髪も相まってまるで、おとぎ話に出てくるお嬢様かのような雰囲気があった。
二人の要旨はどことなく似ており、両方とも目の色は青に輝いていた。
「お前はあの時の!?」
権は急に声を上げて驚く。
権はその金髪の青年に見覚えがあった。
昨夜獲物の名無しを奪った男だ。
「ん? どこかで見たかと思ったらあの時の低級霊斬りじゃないか」
金髪の青年は、権に気づいたみたいだが、なんとも興味のなさそうで馬鹿にしているような態度だ。
「なんだと!?」
その目に見えた失礼な態度に権は声を荒げた。
それを見ると金髪の青年はニヤついた顔をする。
「なんだよ、なんだよ! 権、お前このイケメン兄ちゃんと知り合いなのか?」
勝手に盛り上がった二人についていけてない暁は驚いた顔をして尋ねた。
「『ケン』だって!? まさか君があの『ヒカリ ケン』なのか!?」
突如、その名前を耳にすると、青年は驚いて権の方を見た。
その勢いに、権も動揺する。
「あ…ああ、そうだが」
「ハッハッハッ! まさかあの『名無しの霊斬り』が、君とはね。噂では相当な腕前と聞いていたが、所詮噂は噂だねぇ」
金髪の青年は呆れた顔をした。
『名無しの霊斬り』とは、権の持つ異名である。
本来の名前を持たずして、その特別な体質と強さは他の霊斬り達にも一目置かれていたのだ。
そのことは金髪の青年も耳にしていたのか、昨日の戦いを思い 想像とは違ったようだ。
悪いところを見られてしまったものだ。
「てめぇ、あれは加減をしていたのであって……」
しかし、昨日からのその態度に、権の胸の怒りもじわじわと沸き立つ。
「実戦で負けておいて言い訳とは見苦しいね」
「……!!」
その突っぱねた態度に、権の堪忍袋の緒は切れた。
権は、体を前に出したが、慌てて暁に腕を掴まれた。
「まてまて、権! 何があったか知らんが落ち着け!」
暁は全く訳が分からない様子で、とにかく権を抑えるようにする。
「なんだ? あの程度の腕で僕に喧嘩を挑むのか!」
応じて、青年も権に立ち向かう。
「待って、お兄様! また、喧嘩をしてしまうのですか?」
青年の隣にいた金髪の少女が、青年の袖を引いて止めた。
また、というのは、剛岩らともこのような喧嘩をしたのだろう。
「2人ともそこまでです」
和尚が声の通る大きな声で2人を静止させる。
2人は睨み合うが、しばらくするとふんっと目をそらした。
やれやれと和尚はため息をつく。
「落ち着いたところで、紹介させてもらいますが、この2人は見ての通り海外からの異動です。近頃、海外の霊斬り文化も取り入れる動きがありまして、それもあり、最近は『嵐』もあり、ここらの名無しが増えましたのでこちらに異動してもらいました」
和尚が落ち着いて話す。
『嵐』は、名無しの群れが場所を変えながら増える現象である。
権達が行ってきた最近の名無しとの連戦は、通常の霊斬りが戦う量の何倍も多い。
この地区の霊斬りは人手不足だった。
「へー、そうなんすねー! お、自己紹介しないとね! 俺は「火狩 暁鬼」で、こっちは相棒で息子の「火狩 権」です、よろしくお願いしまーす!」
暁は、場を和ませる為か、変に陽気に振る舞った。
相変わらず、権はムッと青年を睨んでいる。
「僕は、『ハリー・爽夏・アルナメント』
誇り高き霊斬りの名家『アルナメント』の当主さ」
ハリーは誇らしげな顔で自己紹介をする。
「『アルナメント』って俺でも聞いた事あるぞ……確か相当なお家柄だったような」
思い出したように暁は目を丸くする。
「そうか? 俺は聞いた事がないな」
驚く暁をよそに、権は興味無さそうに振る舞う。
すると、暁は苦笑いをして、他の人に見えないように権の背中を叩いた。
「そ、そっちの女の子は〜?」
暁が恐る恐る聞く。
静かに見守っていた少女は急に声をかけられて驚いた。
「わ、私ですか? 私は、『エイミー・春香・アルナメント』です。お兄様のパートナーをしております」
少女は上品な言葉遣いで話す。
大人しそうなエイミーに暁は少し嬉しそうに話しかける。
「って事はハリー君の妹さん?」
「あ、はい、そうです」
急に自分に注目が集まったからか照れながらエイミーは答える。
和尚も会話に参加する。
「エイミーさんは、霊斬りに成りたてで、まだ自分の仮名霊を持ってないそうです。まあ、ハリーさんがお強いので大丈夫そうですが。ちなみにお二方は名前の通りハーフで、お母様が日本人の方で、日本語はお上手です」
「自己紹介はもういいだろう」
ハリーが割って入った。
和尚が苦笑いで、話し始める。
「そうですか……、それではお仕事について話しますが。最近ここいらで少々強めの名無しが出たようで、恐らく霊斬り2組は必要かと『影者』からの報告がありました」
「オショウ、『カゲモノ』とはなんだ?」
ハリーが聞く。
「『影者』とはいわゆる忍びの事です。影で情報調達の為に働いてる霊斬り達の事を言います。まず、君達の前に出る事は無いでしょう。」
「その話を俺達にするって事は、コイツらと2組で、倒せって事か?」
権が、嫌そうにハリーに指を指して和尚に聞く
「そうですね、ですがもう少し敵の動向を探り、一旦作戦を練りますので、当分は通常勤務となります」
「用件はもう終わりか?」
ハリーは、つまらなそうに聞く。
「え、ええ、そうですが」
「それならもう帰らせてもらう」
ハリーはその場を立ち去ると、権の目の前を通る時に鼻で笑った。




