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13話 『新たなる霊斬り』


 時刻は午前3時を過ぎ、車の一つもない駐車場で、権は名無しと戦っていた。

 今回戦っている名無しは比較的、人間の形に近く、それほど強い相手でもないようだ。

 名無しは蹴りと拳を組み合わせて攻撃するが、それを権は腕を降ろして、必要最低限の動作で避ける。

 攻撃が当たらず怒ったのか、大振りの拳で突進してきた名無しを、またもや避け、さらに避ける際に足をかけると、名無しはその勢いのまま前方へ頭から転がり込んだ。

 

「いてぇえ!!!!」


 座り込み、頭を押さえて痛がる名無しをよそに、権は刀を抜く。

 名無しは、近くにあった駐車場の縁石を片手で引っこ抜くと権に目がけて投げつけた。

 それを権はまるで包丁で野菜を切るかの如く、容易く刀で斬り落とす。

 今度は、権から攻撃を仕掛ける。

 今まで攻撃をしてこなかった権が、とうとう攻撃してきたことに恐れる名無しに、権は刀で斬りかかった。

 

「わ、わ、うわぁ!」


 連続した権の攻撃を、どたどたと後ろへ下がりながら名無しは避けるが、肩を斬られる。

 自分が攻撃されたことで興奮し、完全に暴走状態になった名無しは、攻撃されているにもかかわらず、反撃をしてきた。

 攻撃の動作をしている権は、油断しており胴体を殴られ体勢を崩した。

 そこへ、名無しはもう数回追い打ちするが、権は慌てて距離をとった。


「いててて、いやぁ遊びすぎた、手加減はいかんな」


「殺す……!」


「悪ぃな、そろそろ終わらせるぜ!」


 権は、顔を変え、刀を構えた。


「ふんっ、日本の『霊斬り』とやらもこの程度の『名無し(ネームレススピリット)』に苦戦するとは大したことないな」


 突然、カタコトの日本語の声が聞こえた。


「あぎゃっ!」


 その瞬間、名無しの首が宙へと飛んだ。

 首を斬られた名無しは煙となり消え、その後ろから人の姿が見えた。

 そこには両刃の両手剣を持った、日本人とは思えない風貌をした、まさにヨーロッパ人のような青年がいた。

 身長が高く、髪は金髪で、青く光る眼で権をにらんでいる。


「何だお前、霊斬りか? ここらじゃ見たことないが」


「君みたいな、おそらく低級な霊斬りに名乗る名なんて持ち合わせて無くてね」

 

「は? おい!」


 青年は剣を鞘にしまい、その場を後にした。





 明るい夕日の日差しがさす古い木目調の廊下を、権と暁は歩く。

 二人は、霊導寺に呼ばれて来ていた。

 

「お、暁鬼(あかつき)じゃねえか、久しぶりだなぁ!」


 目の前から刀を腰に携えた大柄で50代くらいの男が声をかけてきた。

 その横には2メートル以上の長い棒のようなものを持った20代くらいの青年がいる。


剛岩(ごうがん)さん、お久しぶりです」


 腰を低くしながら権と暁はその男たちのもとへ寄っていく。


「おー、権も来てたか! どうよ霊斬りは、始めてから結構経ったろ?」


 大柄の男はバシンッと権の背中を叩いた。


「いてっ、まぁぼちぼちです」


 権は自分の背中をさする。

 背中を叩いたこの大柄の男は『剛岩(ごうがん)

 この地域の霊斬りの一人で、暁の先輩であり、ベテラン霊斬りだ。

 その隣にいる青年は、『紫電(しでん)

 この人も霊斬りで、剛岩の相棒だ。

 25歳で、権とも年齢が近く、権にとっては兄のような人だ。


「お前らも、呼ばれてきたのか?」


「そうなんです。何かあったんですか?」


 霊導寺に呼ばれたものの、暁と権はその理由までは知らなかった。


「何かあったと言うか、新しい霊斬りが来てな……」


 そう言うと何か悪い事を思い出したかのように、剛岩は顔をしかめた。


「先に会ってきたんですけど、ちょっと癖の強い人みたいで、さっき剛岩さんと一悶着ありまして……」


「紫電……!」


 剛岩は恥ずかしそうに、紫電の話を遮った。

 慌てて紫電は口を塞ぐ。

 暁達も何となく気まずいくなる。


「あはは、それじゃあ俺達そろそろ行きますんで、今度また飲みましょうよ!」


 話を変えるように適当な世辞を言い暁達は歩き出した。


「お、おう、またな。そんじゃ俺らも行くぞ」


 剛岩らと離れて少しすると、後ろの方から小さく剛岩の説教の声が聞こえた。





「来ましたか……」


 寺の僧の格好をした細い目の男が、暗い部屋に入ってきた暁達の方を見る。


「どうも『和尚(おしょう)』、2週間ぶりくらいですかね、権は随分ご無沙汰してたろ」


「ご無沙汰してました。和尚」


 権は軽くお辞儀をした。

 男は『和尚(おしょう)』と呼ばれ、この地域の霊導寺と霊斬りの管理者である。


「活躍は暁鬼さんから聞いていますよ、若手が活躍してくれるのは心強いですね」


 落ち着いたきれいな言葉遣いで和尚は話す。


「いやいや、権もまだまだですよ〜」


 権に変わって暁が謙遜した。


(暁さんは、働いてないだろ!)


 一応上司の前なので、権は気持ちをグッと心に押し込めた。



「ところで、新しい霊斬りっつうのは……」


「おや、さては剛岩さん達から聞いておりましたか。そうです、今回お呼びしたのはその事なんです。まずはお会いしてもらいましょうか。どうぞ、入ってきてください」


 和尚に呼ばれると、扉が開いて2人の人物が部屋に入ってきた。


「お前は……!?」


 そこには、あの時の外国人の金髪の青年と、その隣にはその青年と似た外国人の金髪の少女が居た。

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