第5話「家族と過去」
「……で、エルちゃん以外の5人について教えて欲しいんだが」
俺はクラークに言った。
「おう、わかった。おーい、お前らみんなこっちこーい、ポンコツ野郎がなんかお前らのこと知りたいらしい」
「「「「「はーい」」」」」
5人の返答が一斉に聞こえ、こちらに皆やってくる。
「まずこの両腕を魔道機関にしたやつがリンって名前だ。まぁやんちゃで手に負えん。良い子ではあるんだがな」
「えへへー、そーなんだよいーこなんだよー!」
少し頭が足りなさそうな獣人の少女が俺に言う。
「で、こいつがレオン。男だ。片足だけ魔道機関にした。もっとも、クソッタレ商人が切ったわけではないのだがな。龍に噛みちぎられた」
「はじめまして。僕がレオンです。」
4つの目を持つ少年がこちらを見た。
「なぁ、こいつも愛玩奴隷として売られてたのか?」
俺は聞いた。クラークは、
「あぁ。何せ少年はセレブの女とかが飼いたがる。まぁこんだけかわいいと仕方ないがな」
クラークはわしわしとレオンを撫でる。レオンは、ふふっと笑いながら嬉しそうにしていた。
「で、この子がシャルル。エルフだ。」
凜とした顔のエルフの少女。この6人の中で、唯一魔道機関を手足の代わりに付けていない五体満足な少女だ。
「こいつは虐待されていたのさ。だけど四肢は失っていなかった。だから本来改造する必要はなかったんだ。本人の願いで結局魔道生物になったけどな」
「父さんがいつも言っているポンコツとはあなたですか、ザックさん」
父さん、彼女はクラークをそう呼んでいるらしい。元の親がどれだけ惨たらしい虐待をしたのだろうか、どれほどこの子にクラークは優しくしたのだろうか。傷跡も何もかも魔道生物の再生力で消え去っているが。
「で、この単眼くんがフェイ。陸龍がこいつから親も何もかも奪っちまった。両手、右脚は最初から切られてたな。商人はなんか怪我がひどかったからほっといたらそこから化膿してく、だから切った、とか言ってたな。良い子よ。常に俺のケツを狙ってくるがな」
「マスターは、僕を助けてくれたんです。虐待を待つだけの、商品だった僕を」
俺は聞いた。
「実際、この子に掘られたことあるかクラークよ」
「あぁ。おかげさまで魔道生物になってから見事にケツ処女喪失だバカヤロー」
………愛は時として凶器になるのだ、そう感じた。
「で、こいつがビオラ。原獣人の子よ。原獣人は力がなまじっか強いもんで普通なら商人なんざ殴り倒して逃げる。だから、商人のやつは手足をズタズタに切り裂き釘で板に固定して売ってた。惨たらしかったなぁ。こいつが一番馴れるのに時間がかかった。何度か腕噛みちぎられたなー。まぁ30分もすりゃ再生するけど。あと乳触るたびに指飛ばされた」
「クラークは私がどんな態度を取っても、決して手を上げずに優しく接してくれた。だからこそ信じられるんだ。まぁ助平だがな」
原獣人の少女は笑ってそう言った。
その後、ふと気になって俺はクラークに聞いた。
「なぁ、お前って痛覚は残ってるの?」
「そうだが何か」
俺は驚いた。腕を噛みちぎられる、普通なら失神するクラスの痛みを何度も耐えながらこの少女の心を開こうとしたクラークに。
「以上、こいつらが俺の家族。まぁ魔法教えてやるお代と思って、リンの面倒見てくれや。楽しいのは良いが、こいつに付き合ってると研究が進まん」
「おーい、皆あとは遊んでて良いぞー」
クラークはそう言って皆を解散させた。
…
皆がいなくなってから、俺は聞いた。
「なぁ、あの子達って商人から性的虐待とか受けてなかったのか?」
クラークは笑って、
「フェイとレオンはそもそも女性向けだったから商人は手ェ出してないし、他の奴らも処女だった」
……だった、………?
「で、今は?」
「全員非処女」
「お前ってやっぱクソだな」
俺がそう言うと、クラークはニヤリと笑った。
「うるせぇ、そんな事言ってると魔法教えてやらんぞポンコツ」
種族については追記します
ここまでがストック分で、以降はぼちぼち書きます