第三話「古代魔法と変態学者」
今回は設定モノを多く使ってるので、先に次の話扱いになってる書物系から見た方がいいのかもしれません
ザックはクラークに招かれ、生活感のある大部屋に入っていった。
外には女物の下着やら服やらが干してあり、6着の真っ黒い手袋、ズボンが「よそいき」と書かれたかごに入っている。
「まぁ、6人程度養ってるのさ。」
とりあえず状況が飲み込めない。義手やら義足やら装備した彼女らをこいつが養ってること以外は。
こいつは人付き合いとかめっきり駄目で、ましてや子供なんて懐かないから嫌いとまで言ってのけていたのに。まぁ昔の話だけど。
隅にあるクラークのものとみられる机にはよくわからない術式やら破り捨てられた政府からの手紙やらがどっ散らかっている。
「食堂は違う部屋。ここはいわば普段生活する部屋な。あと寝室は俺もこいつらも一緒のデカいベッドで普段は寝てる。但し俺の仕事というか研究用の部屋にはカーテン付の専用ベッドもあるぜ。スキンシップ用のな。」
のっけからあの子たちとやっちゃってる感のあることを言ってる。それは後で問いただすとして、まずは本題からだ。
「クラーク、俺は陸龍討伐師になりたい。だから魔法をお前に教えてもらいに来た。」
そう言うとクラークはにやりと笑って俺に質問をした。
「なんでなりたいんだ?正義のためか?名声のためか?」
俺は言った。
「金のためです」
「合格。魔法くらいいくらでも教えるわ。」
あたりさわり気にせずに率直なことを言ったはずなのに、快く受け入れられた。
「まぁ、お前になら貴重なタンパク源を殺されてもいいわ。正義のためとか言ったら帰らせてたけど」
貴重なタンパク源?ちょっとまて、それ陸龍のことか?
「あ、飯までは出さんけど干し肉あるけど食べる?丁度陸龍のやつ余ってるのよ。そろそろ『新しいの』入るし」
まさかこいつ………陸龍を食べて生活しているのか?
しかし高い栄養価故に、陸龍討伐師の狩った陸龍は解体されて高く売られ国の財源になっているはず。つまり陸龍の干し肉なんざ簡単に友人に出せる代物じゃないはず。つまり………
「おい、お前まさか陸龍を狩って肉を採ってるのか!?」
「え、そだよー。それがどうしたポンコツ」
おかしい。一人で陸龍を狩れる人間なんてまずいない。いないはずだ。いくらクラークでも………
「めんどくせーなー、干し肉こっから遠いなー」
かたや本人はものぐさしてる。
「よっと」
俺は信じられない光景を見た。クラークが服をはだけると、そこから触手がワサワサと出てきて伸びてゆき、干し肉を2欠片ほど取って一欠片は本人の手に、もう一欠片は俺の手に置いたのだ。
「お前………なんだよそれ…………」
「あ、説明してなかったな。長くなるけど聞くか?」
むしろ長くならない方がおかしい。何故触手が出てくる!?
「聞かせてくれ。」
「仕方ねぇなあ………」
そう言うと彼はこう叫んだ。
「おーい!エル!こっち来い!ポンコツに話するのにお前いたほうがわかりやすいんだ!」
すると、さっき道案内をしてくれた少女が彼の横に座った。
「ますたぁ、なーに?今夜の体位でも決めるの?」
「それはまた後でだ。こいつに俺とお前の出会いとかいろいろ教えなきゃあかん」
「わかった!」
軽くアウトな会話の後で、クラークは一気に喋り出した。
「まず、俺は古代魔法及びドラゴノイド魔法について研究した。その過程で重大なことがわかったのさ。それは『生身の生物の魔法適正の限界』だよ。」
ドラゴノイド、話には聞いたことがある。伝承か何かが本に載ってた。
古代魔法は存在しか知らない。
「人間が古代魔法を詠唱しようとすると、大概唱えきる前に扱う力の大きさに耐えられなくなって死ぬ。俺だって一度ここで諦めかけた。でも俺は、ドラゴノイドが偶発的なものとはいえ魔道生物であることに気がついた。そして俺は………」
「自分自身を改造して、魔道生物にしたのさ。だから副作用で触手出せるようになった。手の代わりにもなるしベッドでも大活躍だ!」
「ますたぁったらもう………立てなくなっちゃうから触手はやめてよ!」
さらっと言われたが、つまり今のこいつはもう生身の生物じゃないっていうことか。怖いな。
そしてエルというのかサイクロプスの少女、どうやらけっこうヤバい関係のようだ。主に夜。
「で、そうしたらいろいろ詠唱できるようになっちゃってなー、国に表彰された上に国の魔法学者たちの権威になった。しかし、うっかりムカつく女上司をお手製の触手で苗床にするイタズラとかしたりしたらなんか危険人物扱いされて存在自体ほとんど抹消された。家は国に用意されたよ、このクソッタレ地味な家をな。殺そうと思っても多分古代魔法で返り討ちになるからそうしたんだろうけど」
うっかり一人の人生を破壊しているあたり、クラークらしいところでもあるしその怖さでもある。
「で、ここからがエル、そして他の元奴隷の家族5人との出合いの話さ」