第二話「クラークを訪ねて」
ここからは登場人物の視点から書いていきます
俺はかつて国の騎士団に所属していたことがある。しかし、ギャンブルで稼ぎ始めてからはそちらを本職としていたので魔法の基礎などがうろ覚えになってしまっているのだ。
そのような状況では陸龍討伐師も糞もない。
そして俺は魔法の復習をするため、最近あまり良い噂を聞かないが自分とかつて騎士団として戦った腕の立つ魔法学者、クラークに会いに行くことに決めた。
「確かあいつは、最近山奥に引っ越したんだよな」
人気のない山奥に向かっていく。
しばらく歩くと、人影のようなものが見えた。髪の長さからして、女の子だろう。
声をかけた。「すいませーん、クラークさんの家どこだかわかりますかー?」
彼女は驚いたように俺の方を振り向いた。どうやらサイクロプスの少女のようだ。綺麗な一つ目は、冷ややかに俺を見て、こう言った。
「情報誌の取材?それとも政府の人?マスターに手は出させないわ。さっさと帰って。それとも痛い目見ないと……」
まずい。なんか俺怒られてる。
「落ち着いてくれ。おじさんはザックっていってね、クラークの友人なんだ。」
そう言うと彼女は、
「ザックさん!?マスターが言ってたよ、あいつギャンブル得意だからって騎士団抜けたとか!」
どうやら本当にクラークは情報に疎いらしい。俺がギャンブラーとして出世した事、そして堕落した事さえ知らなかったようだ。しかしその「ギャンブル得意だから」という無垢な一言は今の俺にとっては嫌味にすら聞こえた。
「ねぇ、服を脱いで?」
な、何を言うんだこの子は!いったい何をしようとしている!?
「ザックさんなら、背中に火傷のあとがあるはずだってマスター言ってた。マスターがエルフ魔法の流れ弾当てちゃったって笑ってたよ」
なるほど、本人確認か。取材とかをクラークが拒んでいるならこのくらいのことはしても無理もない。しかし今の話で気がかりなことがある。まず、あいつが俺に火炎魔法をミスって当てていたを黙っていたことと、もう一つは、この子の喋ったことの言い回しだ。
この子は今、わざわざ「エルフ魔法」と言った。つまり、「エルフ魔法とは別の魔法」をクラークがこの子に教えている可能性がある。一般に、魔法といえばまずエルフ魔法を思うからだ。
エルフ魔法以外の魔法なんて、勉強家が存在を知っているか知らないかと言われている。
俺は火傷の跡を見せ、そして彼女に道を案内して貰った。
ふと俺はとんでもないことに気がついた。
ローブのような服から時折見える彼女の手足が全て、金属と魔力を含有する鉱石のようなものでできていることだ。口には出さなかったが、クラークは何か恐ろしいものを作っているのではなかろうか。
そして、不気味なほど色気のない、大きく無骨な建物に俺は案内された。
「マスター!ザックさん来た!ザックさん!あのポンコツってマスターが言ってた人!」
ひどい言われようだ。まぁ大して強くなかった俺が悪いのだが。
しばらくすると、着の身着のまま、懐かしい友でありマッドサイエンティスト、そしてド天然に定評のあるクラークがやってきた。
「久しぶりだな、ザック」
「こちらこそだ、クラーク。今日は頼みがあって会いに来た。あといくつか聞きたいことがある。」
「まぁ上がれや。飯は出さんがな。」
そう言うと彼は建物の中に案内してくれた。
何人もの少女が中にはいた。
「ますたーおなかすいたー!!」
「まぁまぁ、お友達まで来てくださってるんだから静かにしてなさい」
少女たちは皆なにかしら、四肢のどこかがサイクロプスの少女と同じように、金属と鉱石でできている。
「おい、暫く会わないうちに何があったお前」
「まぁいいだろ、全部後で話す。」
俺はただ、その少女たちの幸せそうな表情、そして四肢への違和感のなさそうな仕草のことが気になって仕方がなかった。
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