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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第四十一話(野村姉川の合戦編)『奇妙丸道中記』第五部
373/404

373部:新館

https://17453.mitemin.net/i457438/

挿絵(By みてみん)


主役は奇妙丸さんです!

近江国の担当地から、各与力の近江衆を率いて集まった、柴田と佐久間。

六角家を破った軍団には、多くの在地土豪や、京都からの腕自慢の者が仕官し、新参衆が続々と加わり増強される。

その軍団は、小大名級の動員力を備え、今や瀧川一益の北伊勢軍と劣らない。柴田勝家の軍団と、佐久間信盛の軍団は織田軍の準主力軍と言えるだろう。


柴田の与力には、蒲生賢秀・忠三郎親子に青地元珍、柴田に救援された進藤賢盛。

佐久間の与力には山岡景隆と景宗、佐久間が拠点とした永原城の永原重弘、池田景雄。

これに安土在番の中川重政の与力に建部寿徳と永田景弘が従う形だ。


そして坂田郡を調略にかかっていた丹羽長秀には坂田堀氏とその縁戚の多賀氏が従い、さらに与力を務める蜂屋頼隆と木下秀吉の両大将が一軍を形成する。彼らの力を結集すれば、柴田・佐久間軍団に並ぶ戦力となる。それに新参与力の混成ではないので、歴戦を誇る一軍である点、戦闘力では負けていない。


それぞれが、浅井家領内の田畑を放火し、浅井家の経済に深刻な打撃を与える方針で動いた。近隣の住民についてはあらかじめ戦火を避けて、堅固な造りの寺院に逃げ込んでおり、また、縁を頼って田舎へと疎開していたので、人的被害は最小限に抑えられていると判断してのことだ。


******

越前国境、金ヶ崎の朝倉帰還軍二万。


もうすぐで越前入国という処で、浅井家の伝令が次々と朝倉軍に情報をもたらす。

「信長が湖北まで大軍を率いて来たと連絡が入っています」

報告を聞く景鏡は明らかに不機嫌だ。そして越前兵の中にはまた引き返すことになるのか?と先行きについての混乱と動揺が起きていた。


「今更、引き返すのも面倒だ」

救援の大将:朝倉景鏡は、周囲の進言を聞き入れる気が全くない。

副将:朝倉景健は不安を覚える。

「しかし、浅井家が倒れれば、織田と正面切って戦わねばならぬ。浅井を守るべきではないか?」

「ならば、お主が向かえばよかろう。我が領地は遠いのでな、このまま帰還させて頂く」

「まったく、どこまでも・・・。分った。好きにするが良い」

景鏡に呆れ果てる。


朝倉景健と副将:前波新八郎は、景鏡と別れて大野軍一万を除いた残り八千で浅井家を救援することに決めた。その旨を一乗谷の義景に早馬で知らせる指示をする。

そして、金ヶ崎主将、敦賀朝倉家の景恒の父、景紀に出陣を請うた。

朝倉景紀は隠居の身であったが、子息:朝倉景恒の汚名を晴らす為、兵二千を率いて従軍することを決めた。


******

甲斐国、織田新館。


今日は信玄が、娘夫婦の新居にお邪魔していた。

「この新館は、木々の良い芳香がするのう。松姫に相応しい居館だ。

婿殿、儂は其方を気に入ったぞ。甲斐に残るつもりはないか? 出来れば武田家の養子として迎えて、我が家督を譲りたいほどの気持ちだ、この居館から松姫と政務を取ればよい」

「ええ?!」

「お父様、一門の方々が聞けば立腹しますよ」

松姫がもう身内の争いはこりごりですという表情だ。信玄にすれば、甘い言葉を振られた後の奇妙丸の反応も見てみたかったのかもしれない。

「ハッハッハッハ。いや本当にそのくらいの気持ちでお主を気に入っている。元服を渋られている理由は分からぬが、信長殿もお主に家督を譲るつもりは間違いないだろう」

「父はまだまだ現役ですから考えてもいないのではないでしょうか」

「近江では信長殿が、横山城や小谷城に迫り、一触即発の空気だそうだ。信長殿の合戦のお点前、存分に見せて頂こう。先の金ヶ崎では痛い目にあったようだが、武運尽きていなければ、また桶狭間の再来となるかのう。

浅井長政と織田信長の、戦神いくさがみに愛され奇跡を起こす大将*同士の戦いがどうなるのか、儂は楽しみなのだ。きっと上杉輝虎も春日山でそう思っているだろう」

信玄の下には随時、畿内の情勢が届けられている様子だった。


*浅井長政と言えば六角から独立した野良田の合戦、信長と言えば今川義元から勝利した桶狭間がある。


奇妙丸を甲斐に向かわせ、武田家との同盟関係を強固なものとし、向後の憂いを取り除き、遠江高天神の小笠原や、三河の徳川も動員できた信長の戦略は今のところ功を奏している。

と見えるが、

今回の信玄入道は、それを分かっていても、長政との決戦見たさに、あえて策に乗っている。

ということだろう。


*******

6月21日 小谷城。


越前の国主:朝倉義景から、急使の連絡があった。

「今度は一門の朝倉景健が軍勢を率いて後詰に来て下さるようだ」

「それは朗報」

長政は不愛想に答える。

「なんじゃ、長政その目は、何か不平でもあるのか?」

「織田軍は城下の民家や田畑を破壊して回っています・・。父上はこれをみて、何も感じないのですか?」

「何も感じぬ訳はないであろう。六角に従ったのも、朝倉に従ったのも、国を富ませ民を養うためだ」

「その結果が・・・。今更ですが、

 もう、織田と雌雄を決し、一刻も早く浅井領から引き揚げさせる。それしかないでしょう。私が出陣します。それで宜しいですか?」

「好きにせよ」

長政は死を覚悟して、織田軍に突撃する気持ちを固めた。


******

同日、虎御前山。


「御注進、磯野、新庄軍が湖岸に沿って北上してきています」

幌衆からの早馬が、本陣に情報をもたらす。

「我が軍に加わる様子か?」

「その連絡はありません」

「ふうむ、ご苦労。そのまま監視せよと伝えよ」


磯野・新庄に手を出さないということで、不安に思う万見仙千代。

「このまま合流されても具合が悪いのでは?」

「そうだな・・。小谷城に入城する直前で叩こう」

信長の考えに賛同したいが、不安に思う大津伝十郎。

「城からの援軍が来るのでは?」

「ならば迎え撃てば良い。合流させぬことが肝要、全軍に周知徹底せよ。磯野・新庄を阻止し、長政を城から引きずり出して討ち果たす!!!」

「「ははっ!!」」

浅井家の検問強化のため湖北からの情報が断絶しており、朝倉家の後詰の動きが読めないが、万見・大津ともに主:信長が決断したのだから覚悟を決めた。主命を全うするだけだ。


******


https://17453.mitemin.net/i458430/


挿絵(By みてみん)

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