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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第三十話(伊勢編)『奇妙丸道中記』第三部 織田冬姫
207/404

207部:御師(おんし)

津田坊丸は奇妙丸に同行し、末盛の留守居は佐久間理助が担う。

佐久間理助と平手汎秀とは、ここで別れる。汎秀は津島に帰陣する予定だ。

津島からは、信長の命で赤幌武者・川口宗勝が三河大浜に津島兵を率いて出陣しているため、津島の守りが手薄になるからだ。

「今度は、我が邸宅で奇妙丸様にお茶を御馳走したいと思います」

朱武者・平手汎秀が奇妙丸に挨拶する。

「うむ。楽しみにしておく」

「冬姫様に汎秀殿が大活躍してくれたと伝えておきます」

山田勝盛が汎秀に感謝しつつも冷やかしていう。

「はっはっは、それは是非」

佐久間理助は、山田勝盛に分かれる前に一言がある。

「勝盛殿!次は是非、ゆっくりと手合わせをお願いしたい」

弓頭まで上り詰めた勝盛を、一段の武芸者と認めている理助。傍に居るだけで血が騒いでいたのだ。

「よし、それに戦場で功を争う日を楽しみにしている」余裕のある勝盛。

「それから奇妙丸様」

「おお?!」

突然、話を振られて驚く奇妙丸。

「奇妙丸様の実力もなかなかのものと、そこにいる於勝から聞きました!」

奇妙丸をチラ見して舌をだす於勝。

「はっはっは、では正月に清州で」

於勝が、理助に何か吹き込んでしまったようだ。

「約束ですぞ!」念を押す理助。

「ああ、確かに。それでは、達者でな」

「「ではっ!」」

船が出港し、見送りの汎秀と理助が手を振っている。


船に乗った奇妙丸一行も、末盛城の人々に手を振る。

一同に向かって奇妙丸の掛け声が響く。

「さあ、熱田宮宿で、冬姫達がまっているぞ!」

「「おう!」」

各員が持ち場に戻る。於勝と於八も、冬姫の笑顔を思い出し気持ちが上がる。

心の底から早く熱田に行こうと思った。


奇妙丸が、船首付近で川風を受け止めている服部政友に聞く。

「政友、熱田から西の湊はどこが栄えている?」

熱田湊から伊勢湾を南下し、北畠氏の拠点に近い伊勢大湊が最終目的地だ。

「瀧川一益殿が抑えている蟹江、伊藤氏の長嶋、同じく瀧川殿の拠点・桑名、四日市庭、白子湊、安濃津湊、松坂の細汲湊、伊勢神宮のお膝元大湊などでございましょうか。

旧守護・一色家の守護所が置かれた楠も素晴らしいですが、安濃津湊が随一の湊町として栄えておりました。しかし、驕れるものも久しからず。明応7年(1498)大津波を受けて灰燼に帰した事があります。」

「帰りは各湊町をみて帰りたいものだな」

「そうですね」

にこやかに答える坊丸だった。


*****


熱田に到着した冬姫一行。熱田には先に伊勢からの使者が到着していた。

「冬姫様、お待ちしておりました」

伊勢山田御師おんしの福島大夫を名乗る。

「父上様の命で、お迎えですか?」

「はい。私が特別に派遣されました」

「兄上を待たなくて良いのですか?」

「奇妙丸様の処へは、別の使者が赴いています」

「そうですか」

「では参りましょうか」

「そう」

奇妙丸と合流することを考えていたので、福島の出現は予想外だった。

「冬姫様、どうなされましたか?」

不安気な表情の冬姫に、心配になった於妙が尋ねる。

「いえ、なんでもありません。伊勢に急ぎましょう」


伊勢御使と名乗る使者の言葉を信じる一行。

御師の安宅船に案内するので、使者に即され安宅船への渡し板を登る冬姫。

渡り終えたところで、板が外された。

「「ええ?」」

驚く冬姫の傍衆達。

誘拐だと気づく女中衆。

「冬姫様が攫われました!」

「「大変よーっ!」」

湊が騒然とする。

「何をするのです!?」

御師・福島大夫に抗議する冬姫。

「うっ」

安宅船の乗員が、騒ぐ冬姫に手刀を決めて気絶させ、気を失い倒れこむところを抱え上げた。

その片腕は、手首から先を失くしている。

「出航―――!」

船員と思われた男が声を上げる。

「上手くいきましたな、弾正殿」と御師・福島大夫がその男に声をかける。

気絶した冬姫の顔を見る山路弾正。

(この傷の恨み、晴らさでおくべきか)


「「「冬姫様――――――――!」」」

湊に残された於妙やお仙にお久、女中衆達の叫び声が、次第に遠ざかり波の音にかき消された。


*****


復活の山路弾正、117部以来の登場で御座る。

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