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織田信忠ー奇妙丸道中記ー Lost Generation  作者: 鳥見 勝成
第二十四話(安祥編その2)
154/404

154部:小相撲予選、1・2番

<安祥八幡宮境内、土俵前>


奇妙丸の為に特設された陣幕に、小瀬清長が駆け込んできた。

「奇妙丸様、まずは予選から開催いたします。観られますか?」

「うむ。皆わざわざ集まってくれたのだからな。それから、昨日の件はどうなった?」

「はい。大相撲の前に、小相撲(十歳未満の年少の部)も開催します」

「そうか、有難う」

良い仕事をしてくれたと、清長に親指を立てて楽呂左衛門ロルテス仕込みの合図する。


奇妙丸の隣の床机椅子しょうぎに腰かける信成が、心配気に聞く。

「ただ、優勝者に何を引き出物にするかを決めておりませぬが」

「そうか、それは私が考えても良いか?」

「奇妙丸様が?」

「そうだ」うん、と頷く奇妙丸。

「わかりました、ならば安心してお任せいたします」

「ありがとう」

信成の協力に感謝する奇妙丸。


清長の合図で、法螺貝が吹きならされ、これから相撲大会が開催されることが町中に知らされる。

信成が開会を宣言し、集まった強者達に大会の決まりを知らせる。

安祥八幡宮を取り囲むように、諸豪族の家紋が入ったのぼりが立ち並び始め、風に泳いでいる。

「皆の者、5人抜きしたものから、本人がここへ名前を申告してくれ、本戦の勝ち抜き戦の対戦表を作る」

「それから、八幡神に正々堂々と戦う事を誓ってもらう!」

「おおー!」

「それでは、奇妙丸様、お願いします」

土肥弥次郎が壺を捧げ持つ。

「清めの塩じゃー!」

奇妙丸が壺の中の塩をガシッと掴み、下手投げに観衆に向かって投げる。奇妙丸の居る高台から下手に居る観衆は皆、喜んで塩を浴びている。

「おおーーー!」

中央の土盛りされた土俵と、その周囲、東西南北に造られた臨時の土俵、計五面で予選が始まった。

景気づけに、一斉に爆竹が鳴らされている。


血気に逸る者から、先んじてどんどんと五人抜き戦が行われる。相手の

小瀬清長が、次々と事務的に捌いてゆくので、混乱は見られない。

諸豪族の子弟達や、百姓、町人の子供たちが身分に関係なく実力を競う。


年少の部、虎松の登場である。

政信は、安静のため見に来ることはできないが、虎松の勝敗の結果を楽しみにしていることだろう。

子供の部、終盤に高橋虎松が登場してきた。

「虎松、頑張れ!」

奇妙丸の関係者が固唾を飲む。

一戦目は既に四人抜きしている強者、酒井重忠の弟・与七郎(忠利・1559年生まれ)が相手だ。

しかし、肩で息をして疲労の色が見える。

「勝負!」

正面からぶつかり合い、正々堂々力の勝負を両者が仕掛ける。

「押せ!押せ!」

虎松が声援を受けて、右に左に体当たりに押して前に進む。

与七郎は、一度下がって体勢を立て直し、反撃に出ようとするが、虎松はその機会を与えず、前に突進する。

最後は与七郎の首元を強く突っ張って、土俵の外へ突き出した。

「おお!虎松が勝ったぞ!」


次の二人目は、渥美半島から船で来た戸田虎千代(康長:1562年生まれ)。

「虎、虎対決だな!」戸田虎千代が虎松に景気よく声をかける。日に焼けて逞しい体躯だ。

「負けない!」虎松が自分の左右の胸を交互に手の平で叩き気合を入れる。

「勝負!!」

いきなり激しい張り手の応酬。

お互いが反動で離れたところで、虎松は姿勢を低くし今度は懐に飛び込むように突撃しぶつかる。

虎千代は姿勢が崩されたまま、なすすべなく土俵外に押し出された。

しかめっ面で天を仰ぐ虎千代。

「船酔いしたみたいだ」と言って、「ペッ」と血を吐き出す。


「また勝ったー!」盛り上がる虎松応援団。

「やるではないか!」奇妙丸が身を乗り出す。

虎松は予想外に瞬発力を備えている様だ。


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