不思議の国
さしずめ、不思議の国。
見たことのない大きな植物がそこらじゅうを這っていて、でも不思議と生臭くはない。
空には適度に雲が散らばっていて、真っ青な無機質な空は見上げていて心地いい。
流れる風も見える自然の風景も、誠の心を落ち着けてくれた。
いつの頃のことだったか詳しくは覚えていないが、よく誠はこの国に来ていた気がする。
……結局気がするだけだが。なによりこんな世界があるなんてこと自体信じられない。
遠い昔の夢物語。
幼稚園くらいのことに見ていた、そんな夢の中の世界。
きっと、そんな感じだ。
「明晰夢……ってやつかな」
夢でありながら夢だと自覚している夢。
今見ているこの世界は自分の夢だと自覚している。
なにより誠はついさっきベッドに横になり、眠りについたばかりなのだ。
夢以外なにものでもない。
「さすが夢、デジャブ感すげぇな」
幼い頃のかすかな記憶から引き出されたかのようなこの世界は、なんとも見覚えのある世界だった。
ぐっと背伸びをする。
学校に行って、勉強して、部活に行って、友達と駄弁って、帰ってくる。
そんな普通の毎日を送っている誠にとってこの夢はなんとも心が安らぐものだった。
所詮、夢。だけれどこの世界自体が自分の夢によって見れているのは事実。
普通でないこの世界は、久しぶりに自分を落ち着けてくれた。
「それじゃ、目が覚めるまで満喫しますかね」
それが、彼の物語。