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Words that I could’t say〜good-bye〜

作者: 朧牙

彼と一緒に入ったイタリアンレストラン。

周りに人はなく、物静かなBGMとキャンドルライトだけがその場を演出していた。

恋人たちが食事をするには、お洒落とも言えなくはない雰囲気。


だが、彼の瞳に私は映っていない。彼は携帯のディスプレイに見入っていた。


私たちの出会いは3年前。

料理はイタリアン・香水はジパンシー・コーヒーよりも紅茶と

お互い妙に気が合っていたのを覚えている。

だけど、その関係を今日終わらせようとする私がいる。


倦怠期?陳腐な言葉だと思う。ただ、私がもう限界なだけだ。


「ねえ、私の話、聞いてるの?」

「えっ、あぁ。」


そっけない返事。彼は私を見ようともしない。


ずい分前から、彼に新しい女ができているのは気づいていた。

唯一の救いは、彼が私にそのことを悟られてないと思っていることだった。


「新しい女でもできた?」


彼の驚いた顔が見たくて、カマをかけてみる。

彼の瞳に、やっと私が映った。

明らかに動揺した彼の目とその場を何とかやりすごそうとする素振り。

私は思わず、笑みがこぼれてしまう。そして、追い討ちの一言を吐き出す。


「私、知ってるのよ。」


沈黙が流れ始めた。


「ごめん。」


どれ位経ったのだろうか、沈黙を先に破ったのは彼だった。

そして、それはお決まりの言葉。


「やっぱり、そうなんだ。私ね、カマをかけてみたの。

あなたが嘘をつくならつきあい続けようと思ってた。

だけど、嘘をつく甲斐性がないなら始めから・・・。」


不覚にも言葉が掠れてしまい、目に涙が溜まっていくのを自覚する。

冷静を装ってたはずなのに、自分が弱いことを痛感させられる。


「ごめん。」


男はこういう時に、同じことしか言えないのかと思いつつも、

私は幕引きの言葉を告げる。


「私たちもう終わりだね。」

「ちょっ、ちょっと、待てよ。」


私はその言葉を無視して立ち上がる。

私の瞳の中には、もう彼は映っていない。


『さようなら。』


がのど元まで出てきた。だけど、私はそれを飲み込んだ。


『いい友達でいてね。』


というのは振る側の傲慢だと思う。だから


『さようなら。』


という言葉を選んだ。でも、言えなかった。

それはなぜだかわからない。だから、私は感謝の言葉を紡いだ。


「ありがとう。」





BGM推奨:Dido『thank you』

■今までに寄せられたコメント紹介


by 中華

taishin君の作品第二弾。いや〜〜〜切ないよ〜!!と言うか、私の偏見かもしれないけどtaishin君(男)が書いたというのに女性が書いたように思えてしまうよ。すごいねー!


by taishin

お褒めの言葉ありがとうございます。一人よがりの文になってなければいいのですが・・・。


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