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転生、転性  作者: 影宮 広嗣
9/11

あれ、この美人さん……?



 おや、見かけないと思ったら。

 ……って、私の腰に抱き着いてるんですけどこの子ぉぉぉぉぉ!!


 なになに、今何が起きてるの!? いつの間に懐かれたし私。気を失ってたから心当たりが全くないんですけど。

 というか私を見上げる上目遣いの少年が可愛すぎて胸が苦しい!!


(そんな可愛い顔して襲ってほしいんですか少年んんんん!!)


「部屋にいなかったから、ビックリした。あんなに熱、出てたのに」


 理性が崩壊しかけている私に、追い打ちをかけるようにはにかんだ少年。声音も気を失う前に聞いた警戒心バリバリな感じじゃなく、何処となくホッと安心したような優しげな……。

 おうふ。今なら萌えすぎて吐血出来る気がする。


 というか驚いたのは私の方です。目が覚めたら豪華な天蓋付きベッドに寝かされてるし、誰もいないし。いやあ、見知った少年がいてくれて本当によかった。隊長さんにやられる前に来てくれてホント……ありがとう少年!!


 私、ぼっちだったけどぼっちが好きなわけではないからね。


「心配、してくれたのか」


 取りあえず未だに私を睨み付けている隊長さんや騎士達を置き去りに、少年と二人だけの空気を漂わせる。

 私の言葉に小さく頷く少年に、私の心はキュンキュンしっぱなしだ。私をどうしたいんだこの子は! 責任はとってくれるんだろうね!?


 ゆったりと少年の髪を撫ぜる。見た目通り、柔らかく小動物を撫でているような感覚がした。メッチャ癒される。ああ、私の弟候補よ……このままお持ち帰りしたい! 持ち帰るような家は今んとこないけども。


 このまま撫で続けていたかったけど、こちらへ足早に近づいてくる足音が聞こえてきたので、一旦手を止める。それに少年も気付いたようで、スッと私から離れてしまった。

 むぅ……騎士達がいてもくっついてくれてたのに……。正気に戻ってしまったようで、気恥ずかしそうに顔を俯かせている。


 廊下の曲がり角へ視線を向けていると、バッと人影が現れた。

 よくよく見なくてもそれは、シンプルな白いドレスに身を包んだ、絶世の美人さんだった。


「君、走るの早い、ですよッ――あら。こちらにいらしたのですか」


 君、と言って見つめたのは少年。あら、という声と共に私に視線が向けられた。少年を追って走ってきたようで、美人さんは息を乱し頬をほんのり赤く染めている。僅かに、どころかとんでもない色気が発せられている。


 それに加え私を見た時の、優しく柔らかな微笑みは……ぐはっ!!

 私のナンパ本能が告げている……美人さんはかなりいいターゲットであると!!

 今すぐナンパするのだと叫ぶ本能を何とか抑えながら、ジッと美人さんの目を見つめる。


 腰まである綺麗な紫色のサラサラストレートな髪に、若干タレ目で穏やかさを醸し出している金色の瞳。

 容姿と纏う雰囲気から全て、美人さんが高貴なお方であることを物語っているようだった。


「ふぃ、フィーア様!?」


 若干空気になっていた騎士の一人が、驚愕に満ちた声でハッキリと美人さんの名前だろう言葉を叫んだ。

 フィーアとは……なんとも容姿にあった響きの美しい名前なんだろう。

 今まで見たこともない美人さんを前にしている私は、今までにないくらいテンションが上がっているので少し思考がダメになっている。


 年齢は私とあまり変わらなそうなのに、なんとも大人びた空気を纏っている。


「シュテルン。剣を収めなさい……この方は私の客人です」

「はっ!」


 綺麗な敬礼を美人さんに見せる隊長さん。どうやらシュテルンという名前らしいです。

 ……ここでふと気づいたんだけど、私少年の名前聞いてないよね。そんな余裕なかったし、警戒されてたから聞くに聞けなかったというか……今なら聞けるかな? なんだか知らないけど懐かれているみたいだし。


 その証拠に私から離れても、手だけは服の裾を握っているのだから!!

 きゅっと少し遠慮がちに握っているのがツボです。鼻血を噴き出しそうです。ついでに吐血もしそう←


 ちらりと少年を見詰めてから、美人さんへと視線を移す。何やらかしこまった隊長さんと話し込んでいるらしい。

 容姿といい隊長さんに命令する姿といい……王族の娘か何かなのかな?

 と思ったところで、ふとした違和感を覚えた。


(あれ、この美人さん……)


「――男?」

「「えっ……?」」


 うおっ、ビックリしたぁ!

 私の考えが思わず口から出てしまった途端、その場にいるみんなの視線が私に突き刺さった。


「な、貴様……」


 え、なになに。なんで皆そんなに驚いてるのさ。こっちが驚きたい状況なんですけど?

 シュテルン隊長はなんか目を見開いてるのに器用に眉間に皺寄せてるし……メッチャカッコいい! じゃなかった。


「――よく、お分かりになりましたね。私が男であると」


 ニコリと見惚れる程綺麗な笑みを浮かべた美人さんからは、性別を言い当てられて気分を害したような雰囲気は感じられない。

 よかった、別に隠しているわけでもなかったみたいだね。


 長年女の子をナンパしてきたから、ほんの少しの違和感を見逃さなかったのよ。さっきまでは全力でナンパしろって本能は言ってたけどさ。

 美人さんは美人過ぎるし、声も中性的だからドレスを着てたら女の人にしか見えないんだけど……大きく開いたネックから覗く首には、小さいけど喉仏があったのよねぇ。



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