不審人物じゃないですっ
このページは、編集前の「不審人物じゃないですっ」という章とそんなに変わりないです。
編集していくうちに何故かページ数が増えてしまいまして。申し訳ないです。
「絶対騎士団団長はイケメンだよね。むしろイケメンじゃなきゃ認めない」
確認するべく、外へと繋がる廊下の壁に張り付き、覗き込む。
視界に入ってきたのは、綺麗に整われた庭らしきところと、そこで休憩する男たち。皆一様に剣を腰に差していた。
「! ふぉぉっ……やっべ、腹チラ見ちゃった」
汗を拭う仕草をした、マッチョ過ぎない細マッチョの綺麗に割れた腹筋。しかもイケメンの!
やっば、テンション上がってきたぁぁぁぁぁぁ!!
完全なるマッチョには興味ないけど、細マッチョなら許せる。
あ、マッチョ好きな方は申し訳ない。
爽やか笑顔を浮かべ同僚と思われる人と話をしている腹チライケメン。腐った脳をフル回転させながらじーっと熱視線を送っていると、集団の一人と目が合ってしまった。
「ッ!? 隊長、不審な人物が!!」
おいおい、失礼じゃないか。騎士(仮)にしては肌の色が私好みに白いイケメン君!
確かに私は君たちの身体を舐め回すような目で見ていたけれど……って、モロ不審者じゃありません!?
……し、仕方ない。そこは認めよう。だがしかし、それは認めるけれど決して侵入者とかの不審人物ではないことは説明させてもらおうかな。
というより、私を拾ったであろう人! 私がいる事くらい騎士(仮)に教えておいてくれよっ!
「貴様、何者だ」
あ、一回でいいから言ってみたいセリフの一つだー……って、ええ!?
考えに没頭していたあまり気付かなかったけど、いつの間にやら鋭利な剣の切っ先が私の眼前に向けられていました。
うおぉ……ど、どうしたらいいのだろうか。取りあえず、切っ先向けるのはやめていただけませんかね!?
こんな状況に慣れていない現代人ですよ!? 元ですけども。
でもでも、凄んで私を見ている隊長さん……メッチャ美形!! なんたる眼福!
私が思うに、二十代後半から三十代前半くらいの年齢だと予想されます。いやぁ、美形とか美人さんは凄むとメッチャ怖いって聞いたことあるけど、当たってるね!
それを私は今、身をもって経験している。
あ、私色々考えてて余裕そうに見えるだろうけど、そんなことないんだよ?
すごく焦ってるのよ?
「答える気はないようだな。――捕らえろ!!」
おや。考えている間に何やらやばい方向へと進んでいこうとしていないかい? 折り合えず、捕らえちゃいやあぁぁぁぁ……っという訳で隊長さん。騎士さん。すみませんが、捕らえられるわけにはいかないので、切っ先なんて気にしてられない!
神並みの身体能力も有している私は、隊長さんより早く動ける自信があったので、切っ先と迫りくる騎士達から一気に距離を取った。
背後へと勢いよくバックステップしたので、勢い余って尻餅をついてしまったのだが……。
「俺は怪しい者ではない」
「「なかったことにした!?」
スッと何事もなかったように立ち上がってそう言ってのけたら、数人の騎士達にツッコまれた。なんて鋭く息の合ったツッコみだ!
だがね。だが、ツッコんでほしくなかったよ、お姉さんは! 恥ずかしいじゃないか!!
とか言ってる場合ではありません。なーんかファンタジー小説とかアニメ、漫画で見るような詠唱のようなものが聞こえてきた。と思った瞬間、火の球や雷の槍などが飛んできましたよ。ええ、数えきれないくらいに。
ちょ、話が違くありませんか皆さん。捕えろって、生け捕りのころじゃないの? まさかのDEADorAlive?
というより皆さん私ごとお城も壊す気ですかぁ!?
「――総てを喰らえ"Falter"」
という訳で、はい。いきなりオリジナル魔法を発動しちゃいましたぁ。
恰好つけて片手を飛んできている魔法に向けて言い放ってやったぜ!
出来るか不安で賭けだったけど、簡単に出来てしまいました。ヤッタネ!
因みにこのオリジナル魔法は、私の影が幾つもの蝶の形になって、どんな魔法にも纏わりつき無効化するというものだよ。闇と破壊の属性を混ぜた、混合魔法。
チート最高! そして蝶の舞う姿が美しい!
初めての魔法、しかもオリジナルを使えたことにテンションはアゲアゲだ。
多分見たことの無いであろう魔法に驚愕するイケメン騎士団たち。しかし隊長さんだけは、訝しげな表情を浮かべ私を睨み付けていた。
「俺に魔法は効かない」
魔法を無効化し、私の手元へと戻ってきた蝶を握りつぶす。
なんだろう、凄く中二病感が半端ないけど、ここはファンタジーだし中二病にならないよね。うん。ちょっと現代人の私には恥ずかしいけど。
剣を構える騎士達。魔法が効かないなら、肉体戦ね。でもさっき私の動きを見たばかりなのに……いける自信があるのかな?
一触即発なこの空気、かなり嫌なんですけど……。と思ったその時。
トンッと腰辺りに軽い衝撃が走った。
目の前の騎士団たちに集中しすぎていたので、背後の警戒が緩かったみたいだ。
「見つけた」
「ん?」
少し下の方から聞こえてきた、聞き覚えのある声。
不思議に思って振り返ってみると、そこには私の腰に腕を回してこちらを見上げる、少年の姿があった。