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転生、転性  作者: 影宮 広嗣
10/11

名前



「少し見ればわかる」

「ふふ、そうでしたか。……あ、自己紹介がまだでしたね。私は王族クローネ家第一王子――フィーア=カイン=クローネです。以後お見知りおきを」


 おっと、ナンパ男としたことが。王族に、しかも女にしか見えない美人さんから先に名乗らせてしまったよ。普通は男や目下の人から名乗るよね。

 まぁ、この国の人間じゃないし、美人さんも男だったし……いっか!


(……ってか第一王子!? いいのか、第一王子に女装癖があっても)


 それが国王公認だったらどんだけ自由で親ばかな教育だよ。

 と、国王にツッコみを入れたい所なんだけど……その前に、私自分の名前決めてなかったわ。生前の名前使ってもいいんだけど……メッチャここの人達カタカナ名前だし、霖なんて女っぽいもんね。まぁ、元女だけど。


「俺は――ノエル=シュロイツだ」


 取り敢えず、生前やっていたBLゲームの攻略対象の名前を使うことにした。ノエルってのも女っぽいけどいいよね。

 握手を求めるように手を差し伸べられたので、名乗りながら手を握る。

 意外と手は骨ばっていて、どちらかというと男性の手の感触だった。こんなに美人なのに手で男らしさを表現するなんて……ギャップ萌えというやつですか!?


「君は?」


 おや。私が気絶している間に、自己紹介は終えているものと思っていたんだけど……そんなことはなかったみたい。

 少年は、じっと見つめてくる美人さんに、少し居心地が悪そうにしている。


 私も少年の名前が気になるので、ジッと見つめていた。すると、ちらりと私に視線をやった少年。その表情はどこか困ったような泣いてしまいそうなもので、ドキッとしてしまった。不意打ちは勘弁って、さっきも言ったじゃないか!


「どうした?」


 いつの間にか、騎士団は解散していた。といっても、私のことをまだ警戒している隊長さんはこの場に残ったみたいだけど。まぁ、当たり前だよね。王子を素性の知れない男と少年、三人きりにするわけにもいかないだろうし。


 しゃがみ込み、少年と視線を合わせ問いかける。このまま硬直状態が続いては、困るからね。

 だけど、少年は視線を彷徨わせ未だ困った表情のまま口を開かない。

 女の子をナンパするスキルはあれど、幼い子の相手をするスキルは私にはありませんのよ。視線で何かを語られても分からんのです……分かればいいのに!!


 今大変困っております。どうしたらいいんだろうか……本気で少年が可愛いということしか分からない!!


 と思ったところで、最初に会った時想像した少年の生い立ちを思い出した。


「……名前、ないのか?」


 美人さんに聞かれないよう、少年の耳元で問いかける。私の言葉が図星だったのか、盛大に肩をびくつかせた少年は今にも泣きそうな表情だ。

 なるほど。名乗る名前がないんじゃ、居心地悪そうにもするよね。


「そうか……フィーア。コイツの名はノア――俺の弟だ」


 ふふふ、最低かもしれないけど、それならばこちらの好都合。私が名付け親になってしまえばいいのさ!

 別にいいよねぇ。少年の了承は取ってないけど、私の中ではもう弟とほぼ決定している弟候補君なんだから!


「弟さんでしたか……確かに、似ていらっしゃいますね」


 おおっと。ビックリ発言。

 少年も美人さんと私の言葉に驚いているらしく、美人さんと私の顔を交互に見つめている。その顔は、驚きに染まっていた。


 にしても私と少年が似ている? そうかなぁ……とじっと少年を見詰めてみた。……あ、そう言えば私今イケメンな身体だったんだ。

 だったら私達は似ているね。少しだけど。


 まぁ、取りあえずさ……なんか色々情報が足りないんで、今んとこの状況とかを整理したいな。


「フィーア。弟が少し疲れているようだ……すまないが、部屋を貸してもらえるか」

「あ、はい。でしたらノエルさんが寝ていた部屋を。私は父に呼ばれているので案内できませんが、シュテルンについて行ってもらえれば大丈夫だと思います。――シュテルン。ノエルさんたちをカルラの間に」

「承知」


 突然名前を与えられて混乱しているような少年を抱え、歩き出したシュテルン隊長について行く。途中可笑しな行動をすれば即刻斬ると凄まれた私は、テンションが上がった。

 だってかなりイケメンだったんですもの!!










 部屋へと案内され、室内に入ったのは私と少年。シュテルン隊長は、私達の監視も兼ねているらしく、部屋の前に気配を感じる。

 取りあえず大事な話をするので、魔力を全く使用しない能力で、この部屋に防音加工を施した。うっかり隊長さんに聞かれても困る内容だから仕方ないよね。


「……少年。何故名がないのか、教えてもらえるか?」

「ッ……」


 二人で天蓋付きベッドに腰掛け、話をする体制を整える。問いかけてみたはいいけど、少年は戸惑ったように視線を彷徨わせていた。

 名前がない理由すらも知らないのだろうか。そう思った瞬間、少年の肩付近にポンッと音を立てユーベル君が姿を現した。


「オイラが話してやろうか」

「いいのか?」

「……ユーベル、お願い」


 ユーベル君に頼む姿を見る限り、名前がない理由は知っているようだ。


「兄ちゃんは、悪魔憑きっての聞いたことあるか?」




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