9:温泉
Japan VCSO Japapn branch office
阿修羅は最近、日本支部にある隠し通路を見つけた。
まだまだ知らない事の多い日本支部を探険している時、行き止まりに行き着いた、普通行き止まりには扉か何かが近くにあるはず、しかしそこには一面壁、何も無くて逆に怪しいと思い壁をよく観察した、そうすると一つだけおかしな箇所を見付けてそこを押したら行き止まりの扉が開いた。
一人で入ろうとした阿修羅に声をかける摩和羅女。
「阿修羅、何だコレは?」
「隠し通路?」
「何か楽しそうだ!行ってみよう!」
阿修羅は摩和羅女に手を引かれて中に入った。
中は薄暗く何故か足下に灯りがある、不思議がる阿修羅をよそに摩和羅女はどんどん中に入って行く、ジメジメして埃っぽい空気が不気味さを際立たせる。
「何か肝試しみたいだな!」
「そうね」
「阿修羅、別れ道があるぞ!」
二手に別れた道、阿修羅の不安は積もるばかりだが、摩和羅女の好奇心を抑えるに値しない。
「はぁ、どっちがいい?」
「むうぅぅぅぅぅ、コッチ!」
摩和羅女は阿修羅の手を引いて右に行った。
どのように登り、どのように曲がったかもう忘れている、今の現在地の予想すら出来ない阿修羅を尻目に摩和羅女は迷路気分で足を進める。
ガタン!ドスン!
大きな音が聞こえた、何かが開き何かが落ちる音、摩和羅女は怖くなり阿修羅の後ろに隠れた、阿修羅は全く気にせずに進み続ける。
音の根源は砂埃に包まれている、今までと同じような道に現れた奇怪な光景、摩和羅女は阿修羅の服を強く掴み阿修羅の陰に隠れた。
「痛たたた、何よコレ?」
「誰?」
砂埃が晴れかけた時、埃を叩きながら土煙の中から出てくる人?
「緊那羅?」
「そうよ、あんた達何してるの?」
「私達は隠し通路を見つけたから探険、緊那羅は?」
「壁に手を付いたら壁が凹んで足下が開いて落っこちた」
緊那羅は明らかにイラつきながら言い放つ。
「それもこれもあんた達探してたからこうなったのよ」
「私達を探してた?」
「そう、何だか知らないけど今回は女だけの任務だって、呼んでも来ないから私が捜してたらこれだ、早く出て部長室に行くわよ」
阿修羅はばつが悪そうな顔をして頬を掻いた、緊那羅はその表情を読み取りフリーズする。
「もしかして―――」
「迷った!アタシ達は帰り道が分からないぞ!」
阿修羅を代弁して摩和羅女が言い放つ、その無神経さに緊那羅は頭を抱えた、阿修羅も合わせる顔がない。
「しょうがない!根性で抜け出すわよ!」
「おー!」
「…………お」
やけくその緊那羅と楽しんでいる摩和羅女に阿修羅は着いて行くので精一杯だった。
道は果てしなく続き流石の摩和羅女も事態を把握しはじめたその時。
「緊那羅、何か肩に付いてるぞ」
「何?」
緊那羅は肩に付いている何かを手に取った。
「イヤァァァァァァ!!」
物凄い声で叫ぶと何かを投げ捨てて摩和羅女に抱きついた、阿修羅は気になり緊那羅が捨てた何かを見た。
「クモ?」
「お、お願い、クモ!クモだけは、ダメ!」
阿修羅はこの非常時に緊那羅の驚き方を楽しんでいた、いつになく女の子っぽい反応を見せた緊那羅に阿修羅は近づく。
「この子がダメなの?」
阿修羅は手に持ったクモを緊那羅の目の前に差し出す。
「イヤ!お願い、辞めてぇ、お、お願い阿修羅、やだぁ、怖いよぉ」
泣き出した緊那羅が可哀想になり遠くに投げた、そして残ったのは摩和羅女に抱きつき、いつもの欠片も無く女の子のように無きじゃくる緊那羅。
「わぁぁぁぁぁぁ!」
「緊那羅、もういないよ」
「グスンっ、ほ、ホント?」
阿修羅は同性ながら緊那羅が可愛く見えた、今なら女子校の生徒の気持ちが分からなくもない。
再び摩和羅女が先頭に立ち歩き始めた、緊那羅は未だに阿修羅にしがみついている。
「緊那羅、もうクモ出てこないから離れて」
「でも、でも、もしかしたら出てくるかも、そしたら……………」
また泣きそうになる緊那羅、いつもの緊那羅の威勢はない、そこにいるのは怯えた女の子、世の中の男が見たら一発で惚れるような甘い声を出して。
「緊那羅は何でクモがダメなの?」
「く、クモ!?」
「はぁ、クモはいないよ、クモが嫌いな理由が聞きたいの」
「小さいころご飯を食べてる時にクモが上から落ちてきて、私のご飯の上に乗ったのを気付かずに一緒に口に入れちゃったの、そしたらクモが口の中で暴れ回って………、吐き出したけどそれがトラウマになって見るだけで意識が………」
阿修羅もその話を聞いただけでトラウマになりそうだった、その点阿修羅は苦手なモノが少ないのでそういう気持ちが分からない。
3人は行き止まりに着いた。
「もしかしたら出れるかもね」
「ホントか!?」
「多分ね」
「クモクモバイバイ」
阿修羅達は壁を触って何かが無いか確かめた、摩和羅女が一ヶ所おかしな所を押すと3人の足下の床が抜けた。
下は滑り台のようになっていて3人は下り続ける、ある程度滑ると落ちて何かに乗った、3人が落ちた所はゴンドラのように上昇している。
「はぁ、何これ?」
「何か上がってる!アタシ達上がってるぞ!」
「もう何も無いわよね?」
ゴンドラは上昇しきり止まる、そして目の前の扉が開くとゴンドラは傾き3人は外に放り出された。
「イヤァァァァァァ!」
「ワァァァァァァ!」
「キャァァァァァァ!」
ドスン!!
3人は何とか隠し通路から脱出出来た、多少手荒いがこの際出れれば関係ない、そして3人の目に最初に映ったのは…………。
「お疲れさま、皆楽しかった?」
「「「ボス!?」」」
「いやぁ、全部見させてもらったよ、緊那羅とか可愛かったね」
金色孔雀は大きなモニターを指差すと、そこには今まで阿修羅達が通って来た道。
「おい、どういう事?」
「はぁ、見てたの?」
「どういう事何だ!?」
「コレはダークロードを追い詰めるタメの迷路だよ、本来はホーリナーに無線機付けて放り込むんだけど、今回は君達の遊びだから見学してようかな、って」
緊那羅は完璧にキレた、相手が支部長という事をすっかり忘れて胸ぐらを掴んでいる、さっきまでの怯えを全て怒りに昇華した。
「中にスピーカーくらい付けなさいよ、それと助けに来るとかしなさい」
「まぁまぁ、………ホレ」
「キャー!!」
金色孔雀はポケットからクモ……、の人形を出した。
「お願いお願い!もう怒らないから、く、クモは辞めて!」
「緊那羅、人形よ、人形」
「ニンギョウ?」
「そう、ボスのイタズラ」
何かが切れる音と共に緊那羅が無言で立ち上がった、後ろで笑ってる金色孔雀に回し蹴りを放つ、そして倒れた金色孔雀ボコボコに蹴り飛ばす。
「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!ってか殺す!」
その光景に阿修羅と摩和羅女は言葉を失った、緊那羅の顔がトラウマになりそうなくらい恐ろしい顔、負のオーラが部屋全体を包みこんでいる。
「すみません!もうしません、だから許して下さい」
「緊那羅、任務聞く前に殺したら任務に行けなくなるでしょ?」
「阿修羅、それは任務を聞いたらボスは死ぬって事なのか?」
「そうね、あんたを殺すのは任務を聞いてからでも遅く無いわよね」
支部長の権限が地に落ちたところで緊那羅の蹴りが止まった、金色孔雀は仁王立ちしてる緊那羅の足下に土下座しながら任務の内容を話し始めた。
「今回の任務は大型温泉テーマパークの女湯の霊の退治です、温泉が大好きな女の人でそこに居座ってるようです」
「温泉か、緊那羅、せっかくだから有休気分で行かない?」
「そうね、任務はサッさと終らして温泉を楽しんじゃおう」
「ヤッター!温泉だ!アタシは温泉は始めてだ」
3人は金色孔雀の事など忘れてエレベーターに乗り込んだ、金色孔雀は複雑な気持ちだった、死から免れたのは良し、忘れ去られたのは悲しかった。
Japan Large spa
その大きさに阿修羅と摩和羅女は呆気にとられている、緊那羅は色々と調達しに消えた。
「阿修羅!凄い大きいぞ!」
「そうね、早く任務終らせて楽しもう」
「うん!」
緊那羅は浴衣やら何やらを一式集めてきた、そして3人は温泉に入る前に霊を探した、任務を早く終らせないと温泉を楽しめない、自分達の邪魔を排除するタメに霊を探している。
「いたわよ」
「はぁ、あんなど真ん中に」
阿修羅が腕輪に触れると得物が現れる、得物は長刀、名は夜叉丸。
夜叉丸に気付くと霊は歪に変化した、そして…………逃走。
「はぁ、何で逃げるの?」
「大丈夫!アタシに任せろ!」
摩和羅女は腕輪に触れ得物が現れる、得物は暗器の針、名は針鬼。
摩和羅女は走りながら狙いを定めると霊の頭に当たる。
「ストライク!」
霊は倒れると消えた、一発で急所を突いたのである、針と同じくらいの急所を走りながら走ってる敵を一発で、それが示すは暗殺の天才、神に愛された暗殺屋、阿修羅は恐れから震えた。
「よし!温泉入ろう!」
「阿修羅、アイツはあんな性格でも最強のバックよ、隠密では世界でも最強レベル、まあ接近戦なら最弱レベルなんだけどね」
阿修羅は苦笑いを浮かべながら摩和羅女の後を追った、苦笑いの理由は摩和羅女よりもはしゃいでる緊那羅。
二人は先に温泉に入ると阿修羅は呆れながら後を追った、摩和羅女と緊那羅は周りの迷惑を全く考えずに……………。
「(迷惑ってかかるのかな?)」
飛込んだ、大きな水しぶきが他の客にかかるが、嫌な顔をするだけで誰がやったかは咎めようとしない。
「気持良い!」
「阿修羅、気持良いぞ!早く阿修羅も入れ!」
阿修羅はゆっくりとつかった、摩和羅女はホーリナーなのを良いことに泳いでいる、緊那羅は周りの人を退けて自分だけのスペースを作った。
「はぁ、職権乱用とはこの事ね」
「何してんだよ阿修羅、私達は生きる神よ、いちいち気にしてたら神に近付いた意味が無いじゃない」
「阿修羅!緊那羅!外にも温泉があるぞ!」
「行くわよ!」
緊那羅は阿修羅を担いで露天風呂に向かって走った。
摩和羅女は思いっきり飛び込むと、続けて阿修羅を担いだ緊那羅も飛び込む。
「ひゃー、極楽極楽」
「爺」
「うるさい、温泉は日本人の心よ、あんたも日本人なら楽しみなさいよ」
阿修羅はゆっくりとしたいタイプだった、温泉はゆっくりと一人でしたいという願望を二人は見事に打ち崩した。
その後も阿修羅は二人に振り回され続けた、楽しくもあるが温泉なのに疲労が溜る一方だった。
いつの間にか10話をまであと1話、早いですね、次回はついに物語が動き出します。
読んでいただけたら光栄です。