8:初任務
Japan VCSO Japapn branch office
迦楼羅と緊那羅は任務から戻り各々の自由な時間を楽しんでいる、阿修羅は地下の多目的スペースで体を動かしていた。
スピーカーのスイッチが入る音が聞こえると、いつもの声が日本支部全体に響き渡る。
『迦楼羅、緊那羅、阿修羅、今すぐ部長室に集合、これから任務だよ』
阿修羅はその言葉を聞くと走ってエレベーターに乗った、阿修羅がいるのは最下層、部長室は最上層、阿修羅は剥き出しのエレベーターに座った。
部長室に着くと既に全員集まっている、阿修羅は軽く謝って金色孔雀の前に行った。
「阿修羅、初任務だよ」
「はぁ、やっとね」
「これでも早いんだけどね。
じゃあ今回の任務内容を説明するよ、今回はどこかのいんちき陰陽師が取り付いた悪霊を祓うらしい、それの尻拭いを頼む」
緊那羅はつまらなそうな顔で返事をした、迦楼羅はいつものようにポーカーフェイスで返事をする、阿修羅は初任務に心踊り何も返事はしていない。
「面倒な任務だ」
「何が?霊を倒すだけでしょ?」
「金色孔雀、あんた戦いしか教えて無いでしょ?」
金色孔雀は明後日の方を見て知らないふりをした、緊那羅からはかなりの殺気が金色孔雀に向けて放たれている。
「人間に取り付いた霊ってのは逃げるの、だからそれを追わなきゃいけないから面倒なのよ」
「それは確かに面倒ね」
「まぁ阿修羅のバイクもあるし、追うのに苦労はしないでしょ、バイクは車に乗せられるようにしてもらったから」
迦楼羅はそういうとエレベーターに乗り込んだ、阿修羅もその後を追う、緊那羅は金色孔雀を思いっきり睨みエレベーターに乗った。
地下の車庫に行くと迦楼羅の車がある、そしてその後ろには阿修羅のバイクが付いてる。
緊那羅は迷わず後部座席に横になった、阿修羅は助手席、迦楼羅は運転席に乗るとけたたましいエンジン音が車庫に響く、壁の一ヶ所が開くとそこに向かって車を走らす。
Japan mountain village
小さな山間の村、そして一つの家の前に大勢の人が集まっている、明らかにそこがおかしい、いや、この村の空気がおかしい、どんよりとしたていて任務以外では近寄りたくない村だ。
「俺はココで待ってるよ、二人は行ってくれば?」
「命令でしょ?」
「バレた?行ってきてくんない、俺お払いのあの空気大っ嫌いなんだよね」
「分かったわよ、行くよ阿修羅」
緊那羅は人を掻き分けて家に入っていく、阿修羅もその後ろを追って人を掻き分ける、誰も気にしない事に少し悲しさを覚えながら家に入った。
居間に行くと準備万端といった感じだ、緊那羅は冷蔵庫から勝手に飲み物を取り出し飲んでいる、記憶に残らないのを良いことにやりたい放題だ。
「阿修羅も飲む?」
「はぁ、それ他人のでしょ?」
「良いのよ、コッチは命がけでココに来てるんだからコレくらい」
阿修羅は苦笑いを浮かべた、前々から自分勝手な人だと思っていたが、ここまでとは逆に誇るべきモノだと思えてきた。
始まっても緊那羅は緊張感の欠片もない、今はお菓子をあさっている。
「おっ、みたらし団子がある」
緊那羅の一言に阿修羅の顔がピクリと動いた、阿修羅は生唾を飲みながら緊那羅を見た。
「食べる?」
阿修羅は無言で頷きみたらし団子を取った、一口食べると満面の笑みになる。
「おいひ〜」
「あんこもあるよ」
「本当だ、ゴマは無いの?」
「ゴマだぁ?ゴマなんて邪道よ、団子はみたらしかあんこが通例でしょ?」
「緊那羅っていちご大福嫌い?」
「あんなもんは大福じゃない、プラスとマイナスでマイナスだ」
阿修羅は力説する緊那羅を横目に団子をひたすら頬張っている。
しかし二人の甘い時間は引き裂かれた、ビリビリと肌を突くように空気が張りつめる、そして霊が体から引き離されると丸くなって山の方に飛んで行った。
「はふら、ほうわよ(阿修羅、追うわよ)」
「はほひほふ(あと一つ)」
二人は団子を頬張りながら片手に団子を持ち窓から外に出た、車の所まで行くと既にバイクの準備をしてあたる。
「お前ら口に色々付いてるぞ」
二人は手に持った団子を全て食べ、口を拭いてバイクに跨った。
「私と阿修羅は先に行ってる、後から追って来なさいよ」
「了解」
「緊那羅、しっかりつかまって!」
阿修羅がアクセルを入れると前輪が軽く上がる、阿修羅は霊を見ながらバイクを走らせた。
山道に入ると舗装されてない道をフルスロットルで走る、阿修羅は霊を追っている、ただそれだけで楽しかった。
「阿修羅、何か感じない?」
「居心地は良くないわね、何か引き寄せられてるみたい」
「私もよ」
阿修羅と緊那羅は嫌な予感がしていた、村に入った時から感じてた不安、最初は悪霊祓いの空気だと思った、しかしこれは何かがおかしい。
平地に行くと霊は止まった、二人はバイクを降りて霊の近くに行くとある事に気付く。
「阿修羅、囲まれたわね」
「殆んどはステージ3、ステージ4が…………3体、厄介ね」
「先に雑魚を片付けるよ」
「はい」
阿修羅と緊那羅は腕輪に触れる、得物は阿修羅が夜叉丸、緊那羅は羅刹、緊那羅の得物は納刀された刀。
阿修羅と緊那羅は背中合わせになる、背筋を凛と伸ばし切っ先を斜め下に向けるのが阿修羅、腰を低く落とし柄を握って抜刀の瞬間を伺っているのが緊那羅。
「多く倒した方がこの団子を食べる権利が貰える、それで良いわね?」
緊那羅胴着の懐からタッパに入った団子が出てきた。
「はぁ、いつの間にそんなの?」
「そんな事は気にしない、来たわよ」
緊那羅はギリギリまで霊を引き寄せると鞘走りを利用して両断する、一回斬ると納刀して再び同じ構えをとる。
「私に納刀させなかったら誉めてあげる」
霊が3体同時に襲いかかってくる、緊那羅は真ん中の霊を斬ると納刀し、逆手で柄を持つと右の霊を抜刀と同時に斬る、左の霊は回し蹴りで倒すと鞘で頭を砕く。
その間の時間は4秒、羅刹という名前の通りである。
「弱いんだから逃げてれば良いのに」
霊が5体同時に阿修羅に襲いかかって来る、阿修羅は右足を軸にして一回転する、5体の内3体が両断された。
勢い余って霊に背を向けたところで、背中に夜叉丸を添わせ、大きな弧を描きながら振る、背中に回りこんでた霊が股から頭にかけて両断され、振り向き様に横薙に斬って全てを殺した。
「はぁ、つまらない」
阿修羅は先程から何体もの霊を倒しているが、汗一つ流れていない。
ある程度倒して阿修羅の近くに緊那羅が来た。
「私は12、阿修羅は?」
「勝った、14」
「あんたのは無駄にリーチが広いのよ」
「はぁ、それより厄介者が3体残ったわよ」
「先に2体倒した方が勝ちよ」
「はぁ、話しが違……ってもう行ってるし」
緊那羅はステージ4の1体に向かって走って行った、懐に潜り込もうとするが棍棒が振り下ろされる、緊那羅は鞘ごと受け止めるとそのまま抜刀して腹を斬ろうとした、しかし手の平で軽々と刃を握られる。
「頑丈な手の平ね」
緊那羅は無理矢理引き抜き霊の手の平を斬った、そして納刀と同時に間合いをとる。
霊は全く怯む事なく走って来た、上段から振り下ろされた棍棒を避け、左腕に鍔と鞘の間の抜き身の部分を当てる。
「左腕、貰うわよ」
そのまま抜刀する、鞘走りと押す力をフルに受けた左腕は、堅い装甲など無かったかのように斬れた。
大きな左腕は地面に落ち、霊は声にならない声で叫ぶ。
「もっと良い声で奏でなさいよ、死ぬときくらい美しくなければあんたも悲しいでしょ?」
緊那羅は走り出す、霊はがむしゃらに棍棒を振るが既に緊那羅は背後に回りこんでいた。
緊那羅は首めがけて抜刀するが少し入った所で止まった、緊那羅はそのまま羅刹に鞘を当てて蹴り飛ばして首を切断した。
「一丁上がり」
阿修羅は目の前にいる霊に的を定めた、敵の得物は大斧、ドスンドスンと大きな音をたてながら走ってくる、阿修羅は切っ先を斜め下に向けて構えた。
「はぁ、遅い」
阿修羅は霊が振り上げた腕に夜叉丸を突き刺す、つんざくような悲鳴を無視して首を斬ろうとした、しかし空いてる左腕が阿修羅を薙払おうとする。
「ワンパターンね」
夜叉丸を地面に刺して左腕の攻撃を防御した、阿修羅は一旦間合いを取り相手の出方を伺う。
霊は懲りずに走って来た、阿修羅は呆れながらも構える、そしてギリギリまで引き付けると霊の上段からの攻撃を避け、霊の背後に回り込み背中合わせになる。
霊は振り向き阿修羅を両断しようとした、それより先に夜叉丸が霊の喉元に突き刺さっている、阿修羅は背中を向けたまま霊の首から頭にかけて両断する。
「行動パターンが同じなら一度戦えば何をするか分かる、ステージ4も頭があれば強いのに」
阿修羅が残りのステージ4に目をやると緊那羅も丁度終わり狙いを定めていた。
「阿修羅、スピードなら負けないわよ」
「私にもとっておきがあるんだから」
「ふんっ、一発勝負ね」
緊那羅は腰に納刀した羅刹を当て、低くく構えた、阿修羅は夜叉丸を左後ろに向け、低くく構える。
「「ベロシティ【光速】!」」
二人同時に神技を放ち霊は全く反応出来ずに腰から下、胴から上へと別れ、3つになり地面に転がる。
「阿修羅も同じなんだ」
「みたいね、それより、これは私の勝ちよね?」
「しょうがないわね、ホラ、食べなさいよ」
阿修羅はタッパを貰うと美味しそうに団子を頬張る、しかし緊那羅は阿修羅に背を向けて何かしている、阿修羅は緊那羅の肩を掴み振り向かせた。
「はぁ、やっぱり」
「………バレた」
緊那羅はもう一つのタッパを開けて団子を食べている、阿修羅に負けたら保険、勝ったら総取りするつもりだったらしい。
「まぁいいよ、帰るよ、迦楼羅は山に入れないだろうし」
「はいよ」
阿修羅がバイクに跨ると後ろに緊那羅が乗る、阿修羅はフルスロットルで山を降りた。
村に着くと車の中で迦楼羅が寝ている、緊那羅は青筋を立ててキレると、迦楼羅の頭を思いっきり殴った。
「…………痛い」
「痛いじゃないでしょ!?あんた私らがどれだけ苦労したと思ってるの!」
「口の周りにあんこ付けて言われても説得力が無いんだけど」
二人は真っ赤になりながら口を拭いた、そして緊那羅は頭に血が上ったのか、恥ずかしいのか分からないが顔を真っ赤にしながら迦楼羅に怒鳴り続けた。
「奴らは群れだったんだよ!ステージ4も3体、これで余裕に思える?」
「服に埃一つ付いてないよ、どうせ二人なら余裕だろ」
「緊那羅、次の任務は迦楼羅一人にやってもらえば良いんじない?私達は傍観者の立場で」
「もしもステージ5とか出てきたらどうするんだよ?」
「「死んで」」
二人の爽やかな笑顔に迦楼羅は死を覚悟した、確実にこの二人なら自分を見捨てかねない、心底簡単な任務を祈った瞬間だった。
阿修羅の初任務、思い出は団子、成果は休暇。
突然タイトルを変えた事を謝罪します、続けるタメに分かり易くしただけです。
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