6:食事会
Japan VCSO Japapn branch office
最後に食堂に着いたのは阿修羅だった、約一名を抜いて全てのホーリナーが椅子に座っている。
座っていない一名は扉の隣で犬のように座り、阿修羅を見上げている、阿修羅はあえて気にせずに席に座った。
しかし犬みたいな男性は阿修羅に着いてくる、それを見かねてフードとサングラスの覆面男性が立ち上がった、覆面男性は犬男性の隣に立ち見下す。
「摩侯羅迦、席につけ」
「いやぁ、阿修羅は今日も可愛いよな、摩醯首羅、俺はコレで飯3杯はいけそうだぞ」
「すまない阿修羅、邪魔は排除する」
覆面男性こと摩醯首羅は摩侯羅迦の首元を持ち、そのまま持ち上げて摩醯首羅と摩和羅女の間に座らせた、椅子に座っても犬座りは変わらない。
「じゃあ阿修羅の迦楼羅隊入隊祝いという事で―――」
「ちょっと待て!阿修羅が俺の隊に入隊ってどういう事?まだ一ヶ月しか経ってないよ」
「だって阿修羅強いんだもん、個人だったら摩醯首羅と同じくらい強いよ」
全員驚きの表情を隠せなかった、帝釈天が抜けて今の日本支部最強は緊那羅、その次に摩醯首羅という順番だ、故にこの時点でトップ3に入っているという事。
「だから、次の迦楼羅隊の任務が終わったら阿修羅は迦楼羅隊入り決定、異例の速さだけど大丈夫、本気じゃないとはいえ毘楼勒叉毘楼博叉ペアを倒してるから」
一名を除き驚きと納得の表情のオンパレード、その一名とは摩侯羅迦、待てが出来ずに既に食事に手を付けている、身を乗り出してあちらこちらの食べ物を食いあさる。
「まぁ犬が我慢を出来ないみたいだし、食べようか!」
その合図と同時に全員が食事に手を付け始めた。
迦楼羅は丁寧に色々な食材を取り、その隣から緊那羅に横取りされる、毘楼勒叉は毘楼博叉に取らせて自分は王様気分、摩醯首羅は摩侯羅迦の暴走を止めつつついでに自分も食べている、摩和羅女は阿修羅に取り分けてそこから自分も食す。
「摩和羅女、いつもこんななの?」
「そうだ、楽しいだろ、特に摩侯羅迦とかは楽しい」
「隊は3つだけ?」
「そうだ、アタシと摩侯羅迦と摩醯首羅の摩醯首羅隊、迦楼羅と緊那羅と阿修羅で迦楼羅隊、あとは毘楼博叉毘楼勒叉ペア」
計8人のホーリナー、金色孔雀もホーリナーだが戦う事はほとんど無い、緊急事態や人手不足の時にしか戦わないのでカウントそれていない。
「アタシは阿修羅と同じ隊になりたかった、でも我が儘は言ってられない、ココに来れば阿修羅に会えるんだから」
「ありがとう、嬉しいわよ」
阿修羅は摩和羅女の頭を撫でた、摩和羅女は小動物のように小さくなり満面の笑を浮かべる。
「阿修羅は姉様みたいだ!」
「緊那羅は?」
「緊那羅も姉様だ!アタシは嬉しい、入団出来て良かった!」
ココにいる者達はこの世界を楽しんでいる、阿修羅はまだ今までの生活に未練があったが、摩和羅女のお陰でそれが無くなった。
「摩和羅女、嫌だったら答え無いでいいわよ。
摩和羅女には記憶がある?」
「あるぞ、アタシは11歳までかか様と山で暮らしてた、でもかか様はある日病気で死んでしまった、その時にかか様はアタシの腕輪になったんだ、だからアタシは悲しくない、いつもかか様と一緒だ。
それに一人だったアタシを拾ってくれたココにも感謝している、アタシは今の生活が楽しい、阿修羅は嫌か?」
「ううん、私も楽しい、摩和羅女がいれば楽しいよ」
「そうか!阿修羅も楽しいか、それは良いことだ、うん!」
阿修羅の迷いは完全に無くなった、摩和羅女の迷いの無い笑顔や、皆の楽しそうな顔、自然と阿修羅の顔にも笑が浮かんだ、溢れるような笑、それは今まででは無い事だった。
突然、摩醯首羅の携帯が鳴った、摩醯首羅は摩侯羅迦を抑えながら携帯に出る、あいずちだけの会話、そして携帯を閉じた。
「摩侯羅迦、摩和羅女、任務だ」
「了解!」
「ちょっと待った!まだ満腹じゃないぞ!ダメだ、戦えないぞ!」
「うるさい、大皿でも持っていけ」
摩醯首羅はそのまま摩侯羅迦を背中に抱えた、摩侯羅迦は大皿を抱えながら摩醯首羅の背中で食事を続けている。
「阿修羅、帰って来たら話そう、アタシは阿修羅の事も知りたいぞ!」
摩和羅女も摩醯首羅の脇に抱えられ部屋を出た、阿修羅はそれを小さく手を振りながら見送った。
「毘楼勒叉、僕達も任務の時間だ」
「チッ、分かったよ」
毘楼勒叉はふてくされながら部屋を出た、既に食べ終えていた他の4人も部屋を出る準備をする。
「阿修羅、今日は俺も用事があるからホーリナー一人になっちゃうけど大丈夫だよね?」
「特にやる事は無いでしょ?」
「モウマンタイ!暇だったら科学班の人に言えば道場使わしてくれるから」
「分かった」
科学班、日本支部が集めた有能な科学者達、いろいろな乗り物や建物自体の機能、そして神の力の多目的な使用方法などを研究している。
阿修羅は支部の中を探索していた、一ヶ月間ひたすら道場にこもっていたタメに中を見る機会がなかった、だから迷いながらも支部を見ている。
今は迷いながら行き着いた先は研究所、色々な乗り物やよく分からないものが沢山ある、阿修羅は気にせずに中に入った。
「あ、阿修羅様!何かご用でも?」
慌てて科学班の人が立ち上がって阿修羅に向き直った、阿修羅はビックリして思わずお辞儀をしている。
「ちょっと迷っちゃって、見ちゃダメですか?」
「大丈夫です、触らなければ見てください」
阿修羅は色々見て回った、研究員の後ろに行くと研究員は手が止まり阿修羅に一礼する、阿修羅はそれがいやだった。
阿修羅はガラス張りの前で足が止まる、中には真っ赤なオートバイがあった、阿修羅はそれに目を奪われ手をついて覗き込んだ。
「どうしました?」
「ヒッ!すみません!」
阿修羅は悪い事をした気分になり、いつのまにか謝っていた。
「いえいえ、コレは現在開発中のモノです」
「………綺麗ですね」
「それなら阿修羅様、使いますか?」
「良いんですか!?」
「はい、ホーリナーの方々に使ってもらうのが目的ですから、今から地下で乗ってもらっても結構ですよ」
「じゃあお願いします!」
阿修羅はバイクと共にエレベーターに乗り込んだ。
阿修羅が地下の多目的スペースに入ると、上部のモニターに説明が映し出された、阿修羅はそれを全て理解しエンジンをかけた。
「………凄い」
『阿修羅様、何かご不満等がありましたら申し付け下さい、どのような事でも直しますので』
「はい」
阿修羅はバイクに股がり走らせた、バイクに乗った事が無い阿修羅でも簡単に乗れる。
阿修羅が完全に慣れ遊んでいた時、大きな音でサイレンが鳴り響く。
『阿修羅様!お戻り下さい!霊が敷地内に侵入して来ました、ステージ4の強敵です』
「はぁ、ココから霊の所まで直接出れないの?」
『しかしまだ阿修羅様は―――』
「命令です、早くそこまでのルートを出して、あるんでしょ?」
『お気を付けください』
多目的スペースの壁の扉が開いた、阿修羅はバイクに乗りフルスロットルでソコに入る。
中は緩やかなカーブの登坂になっている、そして徐々に目の前が明るくなり、外に飛び出した。
やっとホーリナーが全員出てきました、隊もメチャクチャに決めてる訳じゃありません、何となく気づいて頂けたでしょうか?
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