5:双子
1ヶ月後
Japan VCSO Japapn branch office
真っ白なYシャツの袖を3回折り七分にし、第3ボタンまで開けている、それに合わせて白いカミゥムマーンの刺繍が入ったネクタイ、黒い制服のスカートの下にスパッツ、それが阿修羅の団服。
本人曰く『制服ほど動き易く様になるモノはない』らしい。
阿修羅は道場に篭っていた、得物は夜叉丸、石に囲まれた広さだけが取り柄の部屋。
対峙するは霊、得物は鋭い爪、形だけが人間で風貌はお世辞にも人間とは言えない。
阿修羅はイライラしていた、毎日毎日ほとんどの時間をココで過ごし、詰まらない相手とひたすら戦わされる、何度も金色孔雀に不満をぶつけたがノラリクラリと流される。
その金色孔雀は上から窓越しに眺めている、端から見たら阿修羅はモルモット。
「阿修羅、あと20体で終わりだよ、頑張れ」
「はぁ、全部いっぺんに出して、多少は運動になるでしょ」
「大丈夫?下手な鉄砲数撃ちゃ当たるっていう―――」
「うるさいわね、私がそうしろって言ってるの、言われた通りにして」
「ハイハイ、戦闘神の神徳は伊達じゃないですねぇ」
金色孔雀がボタンを押すと20体の霊が現れた、その光景に動じる事無く、むしろ口角を上げて喜んでいるようにも思える。
阿修羅は背筋を伸ばして凛と立つ、切っ先は斜め下、目を瞑り全神経を戦闘に注ぐ。
5体の霊が爪を振り上げ飛びかかってくる、阿修羅はギリギリまで引き付け、自分の間合いに入った瞬間体を一回転させて一刀で5体を斬った。
目の前から走ってきた霊は突き刺し、後ろから来た霊は逆手に刀を持ち変え、そのまま脇を通して突き刺した、横から来た霊は持ち変えるのと同時に斬り、反対側の霊はその遠心力を殺さずに斬った。
残る霊は11体、9体倒した今でも汗一つかいていない、阿修羅の中ではこれは運動にもならない、それが阿修羅の機嫌を損ねている。
「一体ずつ来ないで全員で来なさい、じゃないと私がつまらない」
「怖いねぇ阿修羅、戦うのは悪い事じゃないけどハマり過ぎちゃダメだよ」
「はぁ、違う、私は運動したいだけ、コイツらその欲求すら満たせない、欲求を満たす事の何が悪い?」
「まぁいいや、それなら全員で行くよ、頑張ってね」
何か超音波のようなモノが発せられると霊が一斉に襲いかかってきた、阿修羅は口角を上げて前に走る、一回で3体を斬りそのまま踵を返した、それと同時に2体を斬り残りは6体。
阿修羅が半身になり突くと2体を貫き、そのまま横に振ると1体を巻き込んだ。
霊が爪を剥き出しにして振り上げようとしたとき、胴の位置で受け止めると、そのまま強引に切り裂き回転と共に残りの2体も斬った。
「凄い凄い、修羅とよく言ったもんだね」
「はぁ、誉めるならもう少し手応えのある奴を連れて来なさい」
「これでもステージ3なんだけどな、でもコレだけは知ってて、ステージ4から全く別世界、正直強いよ」
阿修羅は多少興奮している、強い者を求める興奮よりも更に体を動かせる楽しみ、それが周りからは戦い好きに間違われてる。
「霊の最強は?」
「ステージ5、日本でコイツを倒せるのは緊那羅と毘楼勒叉毘楼博叉ペアくらいかな、それくらい強い、神選10階になる条件の一つになるくらいだからね」
阿修羅は軽く汗を拭くと道場を出ようとエレベーターに乗ろうとした、しかしエレベーターは使われていて下から上がってくる、阿修羅はそれを待っているとエレベーターには既に人が乗っていた。
「なんだ、阿修羅か」
「阿修羅だ、毘楼勒叉、阿修羅がいるよ」
「うるせぇな、黙れ毘楼博叉」
毘楼博叉と毘楼博叉は双子である、顔は全く同じなんだが性格が正反対、キツイ性格の方が毘楼勒叉、優しい性格の方が毘楼博叉、二人は個々の能力は高く無いが二人一緒だと神選10階レベルまで跳ね上がる。
「阿修羅、僕達と戦え、丁度暇してたんだ」
「貴方達じゃ強すぎるでしょ」
「僕達じゃ不満?僕は阿修羅と戦いたいんだけどなぁ」
「はぁ、やるわよ、運動にもなるし」
阿修羅達は腕輪に何かを付けた、腕輪を覆うようなモノ、コレを付けるとディアンギットの腕輪は霊体に当たらなくなる。
霊体とは全ての生物と霊にあるモノ、人間はこの事を魂と呼んだりする、霊を斬ると出る血は霊体が吹き出しているから。
「毘楼勒叉、毘楼博叉、いくら阿修羅が強くなったとは言え、まだ任務に参加してないんだよ、ちょっと無理があるでしょ」
「うるせぇ女ったらし!テメェは見てろ!」
日本支部長とは名ばかり、実質権限はゼロ、強く言われると萎縮してしまう。
毘楼勒叉と毘楼博叉は同時に腕輪に触れた、腕輪から銀色の液体が現れ、得物と化した、得物は2本のハンドアックス、小振りで持ち手も細い、名は毘楼勒叉が右京、毘楼博叉が左京。
阿修羅も腕輪に触れる、得物は長刀、名は夜叉丸。
「行くぞ!」
阿修羅はいつものように構えた、二人同時に地面を蹴り、左右に別れた、阿修羅は毘楼博叉の方に跳ぶ、横薙に斬るが毘楼博叉は軽々と防御する、阿修羅は毘楼博叉を軸にして背後を取った。
しかし毘楼博叉はしゃがみ、上からは毘楼勒叉が右手を振り上げている、阿修羅は頭の上で防ぐが右から毘楼勒叉の左手が飛んできた。
「取ったぁ!」
「甘いわね」
阿修羅は毘楼勒叉を直接蹴り飛ばした、毘楼勒叉は宙に浮くが毘楼博叉が受け止めた。
毘楼勒叉と毘楼博叉は、お互いのハンドアックスの刃の付け根を引っかけた、そのまま走って阿修羅に突っ込む。
「行くよぉ!」
「おう!」
毘楼博叉が軸となり毘楼勒叉を大きく回して投げ飛ばした、毘楼勒叉は阿修羅の頭上を飛び越え着地する、それと同時に阿修羅は横薙に斬りかかるが、受け止められた。
「阿修羅、僕達の勝ちだな!」
「はぁ、当たり前でしょ、2対1なんだから」
阿修羅の首元には毘楼博叉のハンドアックスが突き付けられている、傷付かないとはいえ振り抜く必要性が無い。
「毘楼勒叉、僕は死んだよ」
「どういう事だ!?刀はこっちに向いてるぞ!」
「それは俺が説明しちゃうよ!阿修羅は毘楼勒叉を斬るまえに毘楼博叉の足を斬ってるんだ、だから毘楼博叉は戦闘不能。
毘楼勒叉も分かるだろ、タイマンでやったら阿修羅に勝てない事くらい」
毘楼勒叉は右京を投げ捨て、その場にふてくされて座った、そしてイライラしてる毘楼勒叉を毘楼博叉が慰める、それがいつもの光景だ。
「阿修羅!調子乗るなよ!僕達は本気を出してないんだからな!」
阿修羅は毘楼勒叉の前にしゃがみ、毘楼勒叉の頭に手を置いた。
「分かってるわよ、子供だけど気を使ってくれたのよね?」
「僕は子供じゃない!13歳は立派な大人だ!」
「そうね、大人よね」
阿修羅は汗を拭いて道場を出た、二人との戦いに笑が溢れそうなのを抑えて。
阿修羅がいるのは脱衣所、汗を洗い流すタメに風呂に入る、先客が二人、阿修羅は団服から誰だか判断出来た。
中に入ると髪をほどいた緊那羅と、元気な女の子が一人、女の子は阿修羅を見つけると胸に飛び込んで来た。
「阿修羅!アタシは会いたかったぞ!」
「ありがとう、摩和羅女」
摩和羅女と呼ばれた女の子、短い髪の毛に真ん丸の目、そして屈託の無い笑顔、若干歳相応に見られない事がある。
「阿修羅、今日の訓練はどうだった?」
「つまらない、双子が来なきゃ運動にもならなかった」
「双子ちゃんと戦ったのか!?どうだった!?」
「一応勝ったわよ」
「本当に?貴方どれだけ強くなるのよ」
「阿修羅は凄い!アタシも見習わなくてわ!」
阿修羅は摩和羅女を引き離し体を流した、阿修羅が髪の毛を洗っていると摩和羅女が背中を洗ってくる。
「阿修羅は頑張った!だからアタシからのご褒美だ!嫌か?」
「ありがとう嬉しいわよ」
阿修羅は気にせずに続けた、摩和羅女は背中だけではなく全体を洗い始める、阿修羅はまだ我慢し続けた。
「ちょ、ちょっと摩和羅女!そこは念入りに洗わなくていい!」
「ダメだ!かか様がココはよく洗えと言っていた!」
抵抗する阿修羅を見かねて?緊那羅が摩和羅女に耳打ちをした、その瞬間、摩和羅女の手が止まる。
「本当か?」
「本当だよ、阿修羅も喜ぶぞ」
「阿修羅が喜ぶのか!?それならやるぞ!」
摩和羅女の手は徐々に上に行き、胸で止まった、頭を洗っている阿修羅に抵抗する手段は無かった。
「こ、こら!揉むな!緊那羅!何を教えたの?」
「谷間とかは蒸れるから洗ってやれと言った」
「阿修羅、気持良いか?」
「摩和羅女、阿修羅は喜んでるよ、だからもっとやってやれ」
阿修羅は手で摩和羅女の手をどけようとしたが、緊那羅に手を捕まれ抵抗できなくなった。
「あ、ちょ、ちょっと!お願い!やめ、辞めて!」
「分かった、阿修羅がそこまで言うなら辞める」
「つまんないわね、摩和羅女、出るわよ。
それと、今日はホーリナーが全員集まったから貴方の歓迎会やるから、団服で食堂に集合よ」
毘楼勒叉毘楼博叉戦より汗をかいた阿修羅は、肩で息をしている、それを横目に笑いながら風呂を出る緊那羅、不安になりながらも緊那羅に手を引かれて摩和羅女が風呂をでた。
最近必死に書き置きを作ってます、学校が始まったらあまり時間が割けないので今のうちに、目標としては毎日更新するので楽しみにしてて下さい。
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