4:阿修羅
Japan VCSO Japapn branch office
小町が連れて来られたのは、山の中にあるコンクリートというよりは石で出来た塔、いかにも怪しいが、この山に普通の人間は近付かない、これも神の力の一種だ。
中もゴツゴツとした感じで、一階には受け付けのような場所とエレベーターの乗り口しかない、エレベーターは剥き出しになっていて遺跡のような印象だ。
エレベーターに乗り最高層に行くと、そこだけは一つの層がまるまる部屋になっている、エレベーターを降りるとすぐに階段があり、10段ほど登るとカーペットがひかれたお偉いさんの会議室みたいになっている、一番奥には大きなデスクに大きな椅子、反対側を向いていて顔は見えない。
「ボス、新入り連れてきたよ」
「ボス?」
「あぁ、正確には日本支部長の金色孔雀って名前なんだけど、本人がボスって呼べだって」
ボスこと金色孔雀は椅子を180度回転させて小町を睨んだ、襟が高い白いコートの襟に刺繍、逆立った銀色の髪の毛に銀のフレームの眼鏡。
金色孔雀は小町を自分の元に呼んだ、デスクの目の前まで来た固まった小町の前に、デスクの上に立ちしゃがむと同時に顔を近付け睨んだ、この時点で小町の金色孔雀の印象は‘怖い人’。
「迦楼羅」
「はい?」
「この娘メチャメチャ可愛い!俺気に入った!」
金色孔雀はデスクの上にしゃがんだまま小町を抱き締めた、小町は状況が理解出来ずにただ呆然とするのみ。
「あっ、緊那羅、君も可愛いよ」
「うるさい、女ったらし」
「酷いなぁ、小町ちゃんだっけ?バイバイ小町ちゃん」
「えっ?」
小町は今の金色孔雀の一言が理解出来なかった、強制入団なのに‘バイバイ’は矛盾である。
「バイバイって何ですか?」
「‘小町ちゃん’とはお別れ、今日から神様の名前を名乗ってもらうから」
金色孔雀はデスクの上のボタンを押すと部屋全体が暗くなった、そしてモニターが降りてきてモニターが光りだす。
映ったのは金髪オールバックで金色孔雀と同じコートを着た外国人男性だった、チーズケーキを頬張ったまま椅子に座りひょうきんな顔でモニターに映る。
「はぁ、迦楼羅、VCSOにはこんなのしかいないの?」
「奇人変人の集まりだな、俺達見れば分かるだろ?」
「私を貴様と一緒にするな」
緊那羅は迦楼羅の頭を思いっきり叩いた、いや、殴った、迦楼羅は部屋の隅で頭を抱えて悶絶している。
「久しぶり!」
「金色孔雀って事は日本か」
「カミゥムマーン使える?」
「大丈夫だ、新入りか?」
「そう、この娘。可愛いでしょ」
金色孔雀は小町を前に出した、画面に映った外国人男性は画面いっぱいに顔を近付ける、チーズケーキを食べるクチャクチャという音が大音量で聞こえ、小町はため息を一つついた。
「金色孔雀」
「何?」
「コイツ超可愛いぃ!神選10階に欲しい!」
「ダメェ!この娘は日本支部に置いとくのぉ!」
二人の男性はクネクネと奇妙な動きをしながら小町を取り合っている、小町は頭が痛くなり、緊那羅に助けを求めたがスルーされた。
「じゃあ診断するから頼んだよ」
「了解了解!じゃあココに得物を解放して乗って」
小町は丸い板のような乗り腕輪の宝石に触れた、長刀が現れそれを握る。
「じゃあ行くよぉ!」
「キャッ!何これ?」
小町の足元が光り始め、全身を光りが包みこんだ。
暫くの間光り続けると光りは治まり小町は開放された、小町は板から降りるとモニターでは男性がパソコンで何かをしている。
「金色孔雀、帝釈天といい、もしかしたら大変な事が起こるかもな」
「何何?どんな名前?」
モニターの男性はパソコンのキーボードを押すと、画面に文字が現れた。
《戦闘神・阿修羅・夜叉丸》
小町以外の全員が驚いた、あのおちゃらけていた金色孔雀までも険しい表情をしている、迦楼羅は苦笑いを浮かべ、緊那羅は呆れた表情だ。
「もしかして阿修羅?」
「いや、発音が違う阿修羅だ」
「それに夜叉丸って、こんな事あり?」
「ちょっと、私に説明してよ」
モニターの男性が近付いてきた、チーズケーキは置いて、本日一番の真剣な顔だ。
「君の名前は今日から阿修羅だ、神徳は戦闘神、そして得物の名前は夜叉丸。
これは16年前に起きた事件に登場するメインキャラクターにそっくりなんだ」
「事件?」
「それは俺が話とくよ、バイバ〜イ」
金色孔雀はモニターを切って部屋を明るくした、そして金色孔雀椅子に座り、両肘をデスクにつき手を合わせて顎を置いた。
「16年前、悪魔と神の大きな戦争が起きた、その戦争で悪魔は尽きたが神選10階は壊滅的打撃を受けた、VCSO史上最悪の戦いだ。
その時の戦争の引金となったのが《天竜の巫女・阿修羅》だ、目的は分からないが悪魔は阿修羅を求めた、天竜の巫女の情報は何も残っていないので詳しい事は分からないがな。
そしてその阿修羅の得物の名前は《夜叉光》、長刀だ、君に全てがそっくりなんだよ」
小町もとい阿修羅は絶句した、本人も少なからず分かっていた、これが意味するのはただ事ではない、自分が何か大きな流れに巻き込まれている事が分かった。
「でも私は何も知らない、天竜なんかも聞いた事がない、タダの偶然でしょ?」
「そうだと良いね」
金色孔雀はスキップしながら阿修羅を見回した、その光景は実に邪魔。
「あのモニターの人は誰ですか?それとカミゥムマーンって神様の名前ですよね?」
「あの人は通称《元帥》VCSOの最高指令官、そして名前は《カミゥムマーン》、カミゥムマーンは最高指令官の名前でもあり、さっきの神を識別するマシーンの名前でもある、みんなあの人のことは元帥、識別機の事をカミゥムマーンって使いわけてるけどね」
阿修羅はココが徐々に軍隊に思えてきた、元帥に指令官、完璧に軍隊用語である。
「阿修羅か、ボス、帝釈天がいなくなったから阿修羅は俺達の隊だろ?」
「そうだね、迦楼羅が隊長で良いでしょ?」
「私は隊長向きではない」
阿修羅は迦楼羅と同じ隊、毎日この3人で一緒にダークロードと戦う事に、阿修羅は完全に抜けられなくなった。
「迦楼羅、まだまだ先の事だ、私達はまだ二人だけだ」
「どういう事?試験でもあるの?」
「違うよ、阿修羅にはこれから修行をしてもらう、進み具合にもよるけど大体3ヶ月、霊とみっちり戦ってもらうよ」
阿修羅は練習や努力、そういう地道なモノが大っ嫌いだった、実戦あるのみ主義の阿修羅には苦痛な3ヶ月が約束された瞬間だ。
「でも霊と戦うのと実戦に出るのは変わらないんじゃない?どうせ外に出るんでしょ?」
「いや、この下に道場があってそこに貯めてるよ、戦う時は一匹ずつだけどね」
阿修羅は地獄への階段を登り始めた、密閉空間で体を動かすのが嫌いな阿修羅は、開放感が無いとノイローゼになる。
しかし、日本支部のホーリナーは戦闘神の力を思い知る事になる。
『バイバイ小町ちゃん』の理由が分かって頂けたでしょうか?『ようこそ阿修羅』みたいな感じですね、今後は阿修羅で話が進みます。
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