18:脆刃の剣
Japan shrine
摩醯首羅と摩侯羅迦は神社にいる、例の如く二人のホーリナーは鬼に囲まれている、摩醯首羅は表情が見えないので心境は分からない、摩侯羅迦は口を大きく開けている、それが捕食か興奮かは分からない。
二人は同時に腕輪に触れた、摩醯首羅の得物は槍、名は胤舜、摩侯羅迦の得物は鋭い爪と牙、名は狼嚇。
摩侯羅迦は低い声で唸ると四足になる、摩醯首羅は低い位置で胤舜を構えると腰を落とした。
「グルルルゥ」
「待てないのか?」
「ガゥ!」
「なら残さず食えよ、残したら死ぬぞ」
「グワゥ!」
摩醯首羅の合図で摩侯羅迦は走り出した、地面を爪でえぐりながら突進する。
一体目は心臓を一突きして殺す、そのまま鬼を投げ飛ばすと右から来た鬼の喉元を掻き切った。
左の鬼は裏拳を放つように喉元を切り裂く、そのまま両手を地面に着き、前方の鬼の顔に噛みつくとそのままえぐった。
摩侯羅迦の周りは喉元を切り裂かれた鬼、顔面をえぐられた鬼、心臓にぽっかりと穴を開けられた鬼、どれもが無惨に散らばる。
摩醯首羅は飛込んだ摩侯羅迦をぼーっと眺めている、見慣れた光景、見慣れた朱に染まる摩侯羅迦、聞き慣れた雄叫び。
「えげつないな、……………お前も俺の楽しみを邪魔するな」
配合から近付いて来た鬼を何も見ずに射殺した、心臓を一突きされた鬼はぐったりと倒れ込む。
それが合図になったかのように鬼が突進して来た、摩醯首羅は広い間合いで次々と心臓を突き刺す、キツツキの如く動く槍、それは避ける事も止める事も受ける事も出来ない、キツツキもとい五月雨、出来るは鬼の山。
「グルァ!」
摩侯羅迦は摩醯首羅の頭の上から摩醯首羅の前に飛び下り、摩醯首羅の鬼をも切り裂き始めた。
「人様の獲物まで盗るな、お前はお前の…………、って終わったのか」
摩醯首羅が後ろを向くとグチャグチャになった鬼の山、そしても目の前にはグチャグチャになるであろう鬼達。
摩醯首羅はめんどくさくなり摩侯羅迦が戦ってるのを観戦する事にした、凄まじい勢いで鬼が倒れていく、それと同時に摩侯羅迦の体は返り血で濡れる。
摩醯首羅が止まると周りには鬼の死体だけが転がっている、真ん中で爪に付いた血を舐めて綺麗にした。
「摩侯羅迦、大将のお出ましだ」
「ウゥゥゥゥゥ」
二人の前に現れたのは異常にデカイ鬼、2m50はありそうな巨体に異常なまでの筋肉、二人は気構えた。
「気を付けろ、今までの鬼とは違う、今までのが鰯だとしたらコイツは鮫だな」
「グルルルルゥ」
「行くぞ」
「ガウッ!」
摩侯羅迦がスタートするのと同時に摩醯首羅もスタートした。
摩侯羅迦は鬼の顔に跳びかかると鬼は手の甲で摩侯羅迦を弾いた、腕が開いた時に摩醯首羅は肩口に胤舜を突き刺すが途中で止まってしまった、理由はその強靭な筋肉。
「そういうこと」
「グルゥ!ガウ!」
摩醯首羅は胤舜を引き抜くと摩侯羅迦が再び跳びかかる、鬼は再び弾こうとしたが、摩侯羅迦は腕にしがみつき腕を噛んだ、歯は刺さったが噛み千切る事は出来ない、摩醯首羅が胤舜で摩侯羅迦を鬼から引き離すと間合いを取った。
「キュウゥン」
「落ち込むな、アイツの筋肉は異常だ」
「クゥン」
「手は考える、それまで動けなくならない程度に頑張れ、俺もフォローする」
「ワゥ」
摩侯羅迦は地面をえぐりながら鬼に突進した、それに続いて摩醯首羅も走る。
摩侯羅迦は跳びかからずに足下に潜り込んだ、摩侯羅迦が足に爪をたてると足は浅く切れた、しかしそれと同時に鬼は摩侯羅迦を蹴り飛ばす。
摩醯首羅は思いっきり胤舜で薙払った、一瞬鬼の動きがにぶったのを摩醯首羅は見逃さず、一度胤舜を引いて鬼の股を突き刺した。
筋肉と筋肉の間に入り込み骨まで達する、鬼は図太い悲鳴をあげながら胤舜を掴んだ、摩醯首羅は胤舜を離し再び腕輪に触れた。
「摩侯羅迦!」
「ガウ!」
摩侯羅迦は鬼の左側から鬼の顔に飛び付いた、右手首を左手で掴み力一杯顔をひっかく、鬼の左目は潰れてもがいている。
鬼は摩侯羅迦を殴ろうとするが拳を胤舜が遮る、鬼が胤舜を殴ると胤舜は鬼の首に打ち付けられた、鬼は自分の力が強い分首に加わるためダメージは大きい。
摩侯羅迦と摩醯首羅は横に並び鬼を睨む、摩侯羅迦の体は打撲が酷く肋骨等は折れている。
「大丈夫か?」
「クゥウン」
「奴を倒す方法はあるがお前が危険になる」
「ワゥ!」
摩醯首羅は摩侯羅迦に説明を始めた、鬼はこれから起こる事に楽しみをつのらせ待っている。
摩醯首羅の話が進むにつれ摩侯羅迦の表情が曇っていく、そして終わると同時に摩侯羅迦は息を飲んだ。
「出来るか?」
「ガウ!」
「悪いな、そしたら合図したらスタートだ」
摩侯羅迦は全力で鬼に向かって行った、摩侯羅迦は鬼の懐に潜り込んだ、下から突き上げるように喉元を狙うが軽々と弾かれる、摩侯羅迦は怯まずに再び跳びかかった、しかし何度やっても同じ事。
摩侯羅迦は大きく間合いを取ると下から掬い上げるように砂を鬼の顔にかける、鬼は使えない左目に加え砂のせいで右目も見えなくなった。
「今だ!跳べ!」
「グルァ!」
摩侯羅迦がジャンプする前に摩醯首羅は右手で胤舜を引いている、左手は先に添える程度、そして摩醯首羅が向けているのは刃ではなく柄の方、つまり当たっても打撲程度だ。
「エクステンション【延長】」
胤舜を突き出すと胤舜は伸びた、そしてその先にはジャンプしている摩侯羅迦がいる、摩侯羅迦は足の裏を胤舜に向けると胤舜に押されるような形になった、胤舜に押されながら鬼に向かっている。
摩侯羅迦が右手を突き出すのと同時に鬼の肩を貫いた、しかし鬼は摩侯羅迦を掴みそのまま地面に叩き付けた、摩侯羅迦はそこで意識を失い力なく倒れる。
摩醯首羅は唇を噛み締めながらポケットに手を突っ込んだ、摩醯首羅が一番恐れていた状態、この状態になった場合の対処法を摩醯首羅は一番嫌っていた。
「今度は何日かな」
摩醯首羅はポケットから取り出した薬を飲むと摩醯首羅の心臓のポンプ運動が急激に速まる、そして胸に手を当ててその場に膝を着いて倒れこんだ。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
強く胸を押さえると吐血した、摩醯首羅はフラフラになりながら立ち上がると胤舜を構える、意識が飛びそうになるのを必死で堪え、鬼を睨んだ。
「体がもたない、速攻で終らせるぞ」
摩醯首羅は軋む体を無理矢理押さえ付け、地面を蹴った、振動が加わる度に体がバラバラなりそうになる、呼吸をする度に肺が破裂しそうになる。
内出血した箇所は皮膚から血が流れ出している、体は紅潮して体温は急上昇、この一手を外せば摩醯首羅は死ぬ。
摩醯首羅が鬼の懐に潜り込むと鬼は薙払おうとした、しかし摩醯首羅が鬼の腕を殴ると楊枝のように折れてしまった。
摩醯首羅は鬼の喉元に胤舜を突き付け鬼を睨んだ。
「エクステンション【延長】」
胤舜が伸びるのと同時に鬼の頭が軽々と吹っ飛んだ、摩醯首羅はそのまま倒れると意識を失った。
摩醯首羅が飲んだ薬、それは筋肉増強剤、しかも短時間で人間のそれを遥かに超える力を得られる、それ故に代償も大きい、ホーリナーといえど1週間は体が動かせない、摩醯首羅の最長記録は20日、それほどのリスクが伴う薬、脆刃の剣とはこの薬のためにあるようなものだ。
大変です、書き貯めが無くなりかけてます、もうそろそろ終わるので根性で執筆しますのでこれからもよろしくお願いします。