10:鬼
Japan VCSO Japapn branch office
摩醯首羅、摩侯羅迦、迦楼羅は部長室に集められていた、女3人は任務を兼ねた温泉に行っているので変則的になっている。
3人は金色孔雀を見て固まった、毛布にくるまりガタガタと震えている、顔には痣。
「どうんたんだよボス?」
「き、緊那羅に…………」
「緊那羅にセクハラでもしたの?」
「クモの人形見せたら…………」
迦楼羅だけ大爆笑した、この中でも迦楼羅は一際緊那羅の事を熟知しているからだ、クモが大っ嫌いなのも知っている。
「そりゃやっちまったな、緊那羅にクモは扱い次第じゃご法度だよ」
「迦楼羅、そんな事はどうでもいい、ボス、任務の説明しろ」
摩醯首羅がいつものように前に出た、全てを簡潔にやりたい摩醯首羅は無駄な事を嫌う。
迦楼羅は表情が分からない摩醯首羅が苦手だった、背中にしがみついてくる摩侯羅迦も。
「今回は楽しいよ、鬼退治だ」
「「「鬼?」」」
「そう、最近各地で鬼がやりたい放題でさ、双子ちゃんにも行ってもらってる、女3人も温泉が終わったら直行してもらう予定だし。
それで君達にも鬼退治に行ってもらいたいと思いまぁす、各地にいる協力者を頼りながら旅して、今回は大仕事になりそうだから隊編成その他は各々でやってもらう、近くにいる人と協力しても良いし一人ずつで相手してもらっても構わない。
火急的速やかに鬼を一掃する、親玉を見付け次第全員に連絡、軽く日本支部の威信をかけた戦いだね、よろしく!」
金色孔雀はそれだけ言うと3人に紙を手渡した、そこにはアバウトな日本地図と点、鬼による被害をポイントで示している。
摩醯首羅と摩侯羅迦は車庫に行くと無言で迦楼羅の車に乗り込む、既に迦楼羅の車と金色孔雀のバイクしか無いから当たり前だが、迦楼羅は引っ掛かった。
「お前らいつも任務行くとき誰が運転してるんだよ?」
「「摩和羅女」」
摩和羅女は見た目も歳も阿修羅より下だ、それに運転させてる事に迦楼羅は呆れた。
「毘楼勒叉と毘楼博叉がバイクに乗ってるんだ、不思議ではない」
「それもそうだけど」
「早く行くぞ迦楼羅!俺は鬼と戦うのが始めてなんだぞ!」
「(何で摩醯首羅隊はこんなのばっかりなんだよ)」
日本支部で鬼と戦った事があるのは金色孔雀だけ、だから現場に出てるホーリナーで鬼と戦った事のある奴はいない。
Japan mountain path
VCSOには各地に協力者がいる、協力者は人間の記憶に残るがホーリナーと普通に接する事が出来る特別な人々、主に食料は資材調達、そして様々な情報の収集源として使われている。
3人は協力者の情報をもとに山道を歩いている、情報によると大きな洞穴があるハズ。
「なぁなぁ!これじゃないのか!?ってかコレだ、決定!」
「摩侯羅迦の意見を取り入れる訳では無いが、コレだ」
錠前が付いている金網の奥にある洞穴、3人は警戒して腕輪に触れた、二人の手には得物が握られている。
摩醯首羅の得物は槍、名は胤舜、迦楼羅の得物は鎖鎌、名は首切、そして摩侯羅迦の得物は…………、鋭い爪、これはかき爪ではなく指先に付いてるだけのもの、両手足にある、歯は全て牙と化している、名は狼嚇。
「グルルルルゥ」
「まさに犬だな、コレは」
「とりあえず行くぞ」
3人は摩侯羅迦を先頭にして中に入った、4本足で歩くその様は犬そのもの、迦楼羅は分銅をグルグルと回しながら警戒する。
警戒に歩いていた摩侯羅迦の足が止まると摩醯首羅は足を止める。
「迦楼羅、その体制のまま右9度の位置にそれを投げろ」
「何で?」
「いいから早くしろ」
迦楼羅は渋々摩醯首羅に言われた通りに投げた、そうすると何かに当たり絡まる。
「ガウ!グルァ!」
一瞬で摩侯羅迦が飛びかかった、それに続いて迦楼羅と摩醯首羅も後を追う。
気付いた時には人間に似たようなモノの首元を食い千切っている、しかし人間と大きく違うのは額に角がある。
「人間そのものだな」
「迦楼羅、まだだ、準備しろ」
そういうと摩醯首羅は天井に何か投げた、それは天井にくっつくと強く発光しはじめる、コレも科学班の作品だ。
辺りが明るくなると周りを鬼に囲まれていた。
「ウウゥゥゥゥ」
「迦楼羅、大丈夫か?」
「タイマンより大勢向きだから大丈夫だ」
そういうと迦楼羅は分銅を思いっきり投げた、分銅は鬼の胸を貫き一列全てを一掃する。
分銅が手元に戻って来るのと同時に鬼が走ってくる、人間よりも多少速いくらいだがそんなのは関係ない。
迦楼羅は鎌を逆手に持つと鬼を横薙に斬り捨てた、振り抜いた所で持ち直し踏み出しながら奥の鬼を斬った。
「鬼って弱いんだな」
迦楼羅は分銅ではなく鎌を回し、そのまま投げ入れた。
「行きは良い良い…………」
一番置くに達すると思いっきり引っ張る。
「帰りは怖い!」
鎌の通った跡は両断された鬼で溢れている、そして一体だけ残っている2mの巨体の鬼。
「親玉か」
「貴様ら何の用だ?」
迦楼羅はフリーズした、独り言のつもりが鬼が喋った。
「喋れるんだ」
「目的は何だ?」
「君達の掃除、って言いたいんだけど悪さしないなら見逃すよ」
「笑止、仲間を殺した奴は仇、殺す」
「残念だな」
迦楼羅は分銅を鬼に向かって投げた。
迦楼羅の戦いに安心した摩醯首羅は前方に目を向けた。
鬼の群れに飛び込む摩侯羅迦、摩侯羅迦は喉元を中心に攻撃している。
摩醯首羅も観戦は飽きたので槍を構えた、丁度逃げ出して来た鬼の頭を貫く、そして引き抜くと同時に走った。
目の前の敵を貫き、抜くと同時に右の鬼を薙払う、鬼の体は槍のスピードに耐えきれずに脇腹がえぐれた。
大きく捻った体を戻すついでに目の前の鬼の頭吹き飛ばす、殆ど摩侯羅迦が倒してしまったので相手は壊滅。
二人が一息つくと何かがドスンと摩醯首羅の隣に落ちる、それは血まみれの迦楼羅。
「迦楼羅!」
「グルルルルルゥ」
摩醯首羅が後ろを向くとそこには巨体の鬼がいる、摩侯羅迦は既に臨戦体制、摩醯首羅も迦楼羅の前に立ち構えた。
「貴様らも仲間を」
「喋れるのか、それなら話しは早い、お前らが人間を襲う、だから俺達はお前らを殺す、何も無差別な訳ではない、むしろお前らが仕掛けて来た事だ、被害者面するな」
摩醯首羅の表情が分からない分余計に威圧感が増す。
「生きるタメに餌を食って何が悪い?貴様らの好きな『弱肉強食』だ」
「捕食される側も武力を行使する、食う相手を間違えたな、人間には強い自我と高い知能がある、『目には目を、歯には歯を』って言葉があるんだよ」
摩醯首羅は飛込んだ、それに続いて摩侯羅迦も走る。
摩醯首羅は顔に向かって胤舜を突き出す、鬼はサイドステップで避けるが、そこには壁を蹴って爪を振り上げてる摩侯羅迦がいる。
鬼は動じる事なく摩侯羅迦を薙払う、摩侯羅迦は地面に叩き付けられる前に受け身をとった。
「ガウ、グルゥ」
摩醯首羅は右脇腹めがけて突く、鬼は右足を引いて避けた、摩醯首羅はその瞬間右手を逆手に持ち変え、左手を軸にして右手を引いた、胤舜は弧を描いて鬼の腹を切り裂く。
「グガァァァァァァ!」
摩侯羅迦は鬼の胸に飛び込み、胸を大きく切り裂き、間合いを取る。
鬼はフラフラになり血がとめどなく流れ出す、その瞬間、摩醯首羅の隣を分銅が通り、鬼を完全に縛る。
「ハァハァ、後は頼んだぞ」
「摩侯羅迦、準備しとけ」
「ワウ!」
摩醯首羅は左手を前に突きだし、右手で胤舜を持ち右手を大きく引いた、そして左手を軽く添えて体を沈める。
「エクステンション【延長】」
右手を突き出すのと同時に胤舜が伸びる、胤舜は鬼の胸を貫き鬼の動きを止めた。
「グルァ!」
摩侯羅迦は胤舜の上を走り鬼に向かう、最速に達した時思いっきり胤舜を蹴った、摩侯羅迦は右手を大きく引いて左手で鬼の口を掴む、勢いを殺さずに右手で鬼の頭をぶち抜いた。
摩侯羅迦は鬼の頭を貫通して真っ赤に染まった自分の腕を舐めた、返り血等を浴びて摩侯羅迦の体は真っ赤になっている。
「こわっ」
「迦楼羅、動けるか?」
「大丈夫だ、打撲と切傷だけだからね」
傷だらけの迦楼羅と血まみれの摩侯羅迦を従えて、埃一つ付いて無い摩醯首羅は洞穴を出た。
ついに10話達成です、あっという間でした、この話は20話くらいで終わって次に続くと思います。
ラストスパートがんばるんでよろしくお願いします。