第1話
「王様!王妃様の陣痛が始まりました!」
サラ王国の宮殿に緊張と歓喜の空気が流れ始めた。
そこに、新たな生命が始まりを迎えようとしていた。
「やっと来たか・・」
一方では、ある生命に終わりが迎えようとしていた。
多くの”世界”を束ねる、中心世界イベルアを支えてきた指揮官は、ベッドに横たわる、もう動かなくなるつつある身体を動かして外を見る。もうこの生きた目では見ることのできないその景色は、今まで自らとともに生きてきた世界であった。
(なんて・・綺麗なのだろうか)
何百年も見てきたというのに、その景色は生命の力が溢れ、生きとし生けるものたちが懸命に生きようとしていた。
「皆・・」
外の景色を見つめながら、指揮官の最期を見届けに来た仲間たちに声をかける。
「お前たちには大変な重荷になるだろうが、最期の私のわがままを聞いてくれないか・・?」
サラ王国の宮殿の奥からは、王妃の苦痛の声が響いてくる。サラ国王ダウリュエスは、自らの手を組んで、王妃と生まれてくる子の無事を祈った。
サラ王国中が、その誕生を心待ちにしていた。
指揮官の最後の言葉を聞くために、指揮官亡き後に仲間を束ねる者が、指揮官に近づき、もう小さくなっていく声に耳を澄ます。
「この世界の・・”皆”を、守ってくれ・・」
消え入るように言われた言葉を聞き終えた時、指揮官は眠るように目を閉じた。
それと同時に、サラ王国では新たな生命の産声が上がった。