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計画停電

作者: Shakjin

『計画停電』

表では電力会社の不具合により電力供給が需要に追い付かなくなった時、大規模な停電を避けるために各区画ごとに計画的に停電を起こし、節電をすること。


しかしこの計画停電は様々な人にいろんな意味で影響を与える。

これはある計画停電実施区域に住む一人の男性の話だ……



男はいつ死のうか考えていた。


妻は子を連れて逃げて行き、会社にはリストラされ、何とか生きようと始めた派遣労働では勤務先の馬鹿な上司の不平を聞いては尻拭いをする。

男はもう限界だった。

派遣労働はやめ、完全に無職になった。

それからの事男は部屋に引きこもり、仕事もせず、ただ少ない貯金と食料が尽きて餓死するのを待っていた。


そんな時に起きたのが東北関東大震災。

さしてそれに伴う『計画停電』だ。

男の家も例外ではない。


ある日の事だ。

その日の停電は夜の7時から10時。空が全く暗くなる時間であるので、蝋燭が必要だった。

男がそれに気付いたのが夕方の6時であった。

男の家には蝋燭のストックがなかったのだ。

男が急いで買いに行こうとした時、インターホンが鳴った。

男がドアを開けると、そこには腰の曲がったお婆さんがいた。

何やら籠をぶら下げている。

そしてお婆さんは言った。


「蝋燭はいらんかぇ?」


男は戸惑ったが、どういう訳か蝋燭を買いに行こうとした自分のもとに蝋燭を売る婆さんが現れたのだ、しかも値段を聞くと格安だった。

こいつはラッキーだと思い、男は蝋燭を買って部屋に戻った。


7時になり、停電が始まった。

一瞬で辺りが暗くなるため、ビックリする。

男は慌てて先程買った蝋燭に火を点けた。

蝋燭は大きめで、3時間は確実に持つ大きさだ。蝋燭の火は思ったより明るく、手元もくっきり見える。

男は蝋燭を机に置き、椅子に座ってしばらく蝋燭を眺めた。

真っ暗な空間。音は殆ど無い中、蝋燭の火だけは自律的に光を放つ。

なんだか暖かかった。

男はぼーっと蝋燭を眺める。


男は妻を愛していた。子も愛していた。だが妻が男に飽き飽きしたのか、突然離婚を申し出された。

男は否定出来なかった。

自分の何が悪いのかは解らないが、自分が妻を幸せにすることが出来なかったのは確かだとわかっていたからだ。

離婚してから後も、妻と子を忘れずにはいられない。

妻と子は今どこだろうか。停電の暗闇に怯えているのだろうか。


熔けた蝋燭が垂れた。

男の目からも涙が垂れた。

蝋燭を見ると途端に泣きたくなったのだ。

男は号泣した。声を上げて泣いた。

男にとってこの停電による暗闇など、いつもの電球による見かけだけ明るい生活となんら変わりは無いのだ。

ただ男は、その中に佇む蝋燭と火を見て、自分を重ねてしまったのだ。

自分はこの火のように光っているだろうか。周りの物を照らす事が出来るだろうか。

だが照らす物がない。

ろくな仕事もない。

何より男には、火が点いていなかった。

男はこの蝋燭になりたいと本気で思った。

蝋燭にとっての仕事は暗闇の中、辺りを照らし、暖めること。

そして仕事を終えると熔けて消える。


電気が点いた。

停電が終了したのだろう。

男は3時間も泣いていたのだ。


男は部屋の電気を消して再び辺りを暗闇にした。

男はパソコンをつけて、求人情報を探した。

パソコンに向かう男の後ろで、暗闇の中、パソコンの光に負けじと蝋燭の火がゆらゆら揺れていた。




この男の心情をよく読みとってくれればありがたいです

蝋燭売りのお婆さんは正直関係ありません(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] 実にタイムリーで楽しく拝読しました。
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