それでも、想っていたい
たぶん、このままの距離がちょうどいい。
近づけば壊れるものもあると、知ってしまったから。
だから私は、何も言わない。
この想いは、まだ渡せない。
誰かの一番になりたいわけじゃない。
ただ、その彼にとって、
私が一番大切に想っていてあげられる相手でありたい。
そう思えたのは、人生で初めてだった。
「人を本当の意味で思いやること」
そんな気持ちを、彼が気づかせてくれた。
でも私は、彼の心のほんの一部分すら知らないのだと思う。
何気ない会話だって
何も思っていない相手になら、言葉を選ばずに話せる。
なのに、彼に対してはうまくできない。
大切だからこそ軽くしたくない。
好きだからこそ雑に扱いたくない。
やっと見つけた、「たった一人の人」だから
そんな簡単な関係じゃないのもわかっている。
ゆっくりでいい。
少しずつでもいい。
緊張して、何も話せなくなる私に気を遣って会話をふってくれる。そのさりげない優しさが、ただ心地よかった。
「あれ、私の恋愛偏差値ってこんなに低かったっけ?」
そんなことに気づいてしまった。
それは、遅すぎる初めての恋だったから。
もしあの時、あの瞬間に戻れたなら?
せめて後もう一言、彼に何か言えたら?
帰り際に、いつもそんなことを考えてしまう。
私が彼に見合う女性になるまでは、この気持ちを伝えることはできない。
彼に見合う女性にはなれなくても
たとえ叶わない恋だとしても、後悔はない。
この気持ちに気づけたことに意味があって、彼を好きになれたことに意味がある。
彼を想う時間が、無駄だとは思えない。
そう思える相手に出会えたことがただ幸せなんだ。
彼が辛い時に一番最初に
「大丈夫?」
と声をかけてあげられるような関係になれたなら
それ以上に幸せなことはないのかもしれない。
少しずつでいい。まだ慣れていないから。
心臓が脈を打つたびに、胸の奥が何度も高鳴る。
一度だけ手が触れた時、どうしようもなく恥ずかしくなった。
「もしかして、彼は私の気持ちに気づいているのかな?」
そんなことをふと思いながら私はまた、ひとりで考えてしまう。
微笑む笑顔も
さりげない優しさも
全部が恋しい。
またいつか会える日まで
この気持ちは大切にしまっておこう。
この想いは
私だけの、かけがえのない宝物だから




