95.オークション
私たちはその日、冒険者ギルドに来ていた。いつものギルマスの部屋だ。そこでオークションの結果を聞いた。
バーキンも無事にワイバーンとリバイアサンの素材を競り落としたようだ。
「おう、盛況だったぞ!」
開口一番、バーバが言う。
「どれほどだ?」
「これほどだ!」
ドンッ
机の上には大きな袋が置かれた。さらに
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
…マジで?
「マジだ」
ニヤリと笑う強面のバーバ。ギルマスと知らなければ完全に悪者の顔だ。
「一袋に1千万ガロン。1万ガロン硬貨で揃えたが、それでもこれほどだ。はっはっは」
リバイアサン…マジか。マンティの獲ったどー!がこんな事になるなんて。足元のマンティのドヤ顔よ。首元を撫で撫で。ゴロゴロ聞こえてるんだけどね?
ちょうど5袋あったから1人一袋だね。とみんなを見たら首を振られた。何で?パーティーでしょ?
ドヤったら微妙な顔で見られた。解せぬ。
「みんな、ほら収納して!」
「そうだぞ!俺の気が変わって懐に入れる前にな。ガハハ」
私はサッと一袋をポーチにしまった。それぞれみんなも一袋収納した。
「バーバ、そろそろ出る」
鋭い目付きながらも優しさのこもった目で私たちを見ると
「おう、早く出てけ!もうワイバーンはいらんぞ」
憎まれ口を叩く。
「言われなくても出てくさ!」
タフとバーバは拳を合わせ、タツキ、レイキ、サナエと握手し、私は頭を撫でられた。
「頭の鳥も立派だな」
なんでかね?
ギルドを出るとバーキンの工房に向かう。
あれ?なんで閉まってるの?看板もない。驚いてタフを見ると笑った。普通にドアを開けて中に入る。
シンとしていた。どうしたんだろう。お店の品物も無くなってる。襲われた?!
「くふふっ違うよ」
奥からバーキンが出て来た。
「僕はね、受けた仕事は最後までやりきるんだ」
タフを見ると笑っていた。膝から崩れ落ちたよ。そんなのアリなの?
「ありだよ。やっと出会えたからさ…」
見上げれば優しく頭を撫でられた。屈んで目を合わせると頬を撫でて素早くキスされた。
「はい?」
「油断したらダメだよ?」
もう、ほんと敵わない。
こうして私たちは明日、マイヤーを出ることにした。
だから今日のうちに商業ギルドと農業ギルドに行って品物を卸し、リーブラン商会も訪ねた。
「お待ちしておりました」
何も聞かず、何も言わずに。ただ、予定より多くの品物を納品して(させられて)
「我々は味方です。あの商品は捨てがたい」
嬉しかった。単なる親切なら疑わしい。
でも商品が欲しいと言われれば納得出来る。分かっていて言葉を選んでいるブブカさんには感謝しかない。
最後に尋ねるのはルシファー様とリーンだ。もっと色々検証したかったけど、迷惑はかけられないし時間切れ。
ルシファー様から聞いていたのか、私を見ると飛びついて来た。
「走れたんだね」
と言えば泣きながら
「そんかことより…ひっく」
「そんなことじゃないよ?良く頑張ったね」
と言えば号泣された。
「僕がもっと元気になったら必ず探しに行くよ!」
最後は涙で、目を潤ませながらも力強く言った。
私はオークキングの魔石を加工したペンダントをリーンの細い首にかけた。
「レイキと私の魔力が籠めてある」
キラキラと青に輝く魔石は揺らめいて見える。レイキと私の魔力が混ざり合って揺らめいてるらしい。
レイキがリーンのそばにいる時もやっぱり2人とも心地良さを感じたんだとか。なら何か、引き合うものがあるんだろう。だからリーンに私たちの魔力を託すと決めた。
魔石に2人の魔力を籠める方法は魔法通信で調べてね。
最後にリーンは私を見てそっと触れるだけのキスをした。
「待ってて…」
約束はできないけど、気持ちは有難く受け取った。
「早く元気になって」
待ってるとは言えない私のせめてもの餞の言葉だ。元気になったら迎えに来てくれるんだから、それは待ってると同じ意味。
それが分かったリーンは花が綻ぶような笑顔で見送ってくれた。
屋敷を出た後に悲痛なリーンの泣き声が聞こえたけど、もう振り返らない。乗り越えるのはリーン自身だからね。
ルシファー様からは貴重な魔道具を貰った。正確には「貸出」だって。こちはもまた会うよって言う意思表示だ。
大切にポーチにしまった。
さあ、最後にマイヤーの食事と買い物をしたらいよいよ出発だ。
結局、マイヤーでは10日ほどの滞在だった。いや、濃いな。私たちはまだ旅の途中。
マイヤーではハンドメイドもあまり出来なかったし、ヤールカではもう少しゆっくりしたいなぁ。
最後だからと水餃子をたくさん注文し、お持ち帰りで20人前追加。みんなもそれぞれたくさん注文してたよ!
市場では共用のとは別で、それぞれが食材やら調味料を購入した。タフもだよ!と言ったら
「僕はシーちゃんにしがみ付いて離れないから」
とキッパリ言われた。いっそ潔いな。
買い物をして宿に戻る。タフもこれからしばらく(本人曰くずっと)いるならば、と部屋に籠って色々ね。
夕方まで休憩しながら作業して、居間に向かう。
タフは私に気がつくと見えない筈のしっぽがブンブン揺れた。
期待に満ちた目で私を見る。タツキとレイキは部屋にいて、サナエがソファに座っていた。
珍しい組み合わせだ。
「シーちゃん…その、何かくれるの?」
我慢できなかったようだ。私はポーチから箱を取り出してタフに渡す。
「開けても?」
頷くと丁寧にリボンを解いて箱を開けた。目をまん丸にして驚くとくしゃりと笑った。
「お揃いだね…」
そう、お揃いだよ。みんなと一緒の指輪。ブレスレットは翡翠。淡い緑でグレードとしては低いやつ。でもミルキーな色が可愛くてお気に入り。
タフが箱ごと渡して来たので、指輪を取って
「どこの指?」
「左手の小指」
細くて長い指に嵌める。うん、似合うね。ブレスレットも嵌めるとじっと見つめた。
「仲間として認めてくれた?」
分かっているのに聞くのは、きっと言葉が欲しいから。だから
「うん、タフは仲間だよ。仲間で、私に取っては家族みたいなもの。だからね…これも」
箱の下に隠すように入っていた片方だけのピアス。タフの耳には穴が開いてるけど、何も嵌ってなかったから。
私は自分の左耳を見せる。
目を瞑って左耳を見せるタフ。立ち上がって付けると腰を抱きしめられた。
「離さないよ…」
言葉だけ聞くと熱烈な愛の告白なんだけどね?
その日の夕食はロールキャベツを作ってみんなでたくさん食べてお風呂に入って寝た。
明日は朝早いからね!
*読んでくださる皆さんにお願いです*
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪
評価は任意ですが…もらえるととっても嬉しいです!
モチベーションになりますのでどうぞよろしくお願いします♪




