87.病気の子3
気持ちは分かるがな、明らかに男子だろう。タフも分かってたし。まぁシエルはルシファー様すら平ら仲間かも?とか言ってたし当てにならないが。
シエルは無意識にリーン様の胸元を見て顔を見て頬を撫でて…絶句した。少し遅いだろ?
リーン様はそこで何故かシエルのおでこにキスをした。
「候補になりたいから…約束のキスだよ」
他人事ながら可愛い。男子なのにとても華奢で反応も可愛い。シエルは引き攣った顔をしている。しかし、見た目は儚げ少女、困惑してるように見える謎。
「早く元気になれるように…頑張るよ。シエルのそばはとても心地よい」
あ、シエルが密かに拳を握った。あれだな、元気にして貴族と婚約を結ばそうとしてるな。
「リーン、元気になれたら考えよう。もう少し休むといい」
リーンとそしてシエルもその言葉に抵抗せずに目を閉じた。何か考えてるな、これは。
俺はひとまず、あの湖に元の湖の水を一部転移させる。さっきやろうとして諸々でやれてなかったからな。
ここを繋いで…よし、出来たな。これでひとまず水鳥たちは安心か。しばらくは様子見が必要だろう。
*****
マイヤーの町をタツキと手を繋いで歩いている。冒険者ギルドに向かって依頼達成の報告だ。
ギルドに入ると受付の人に依頼達成の報告書を提出する。
「少しお待ちください」
と言って奥に向かった。バーバさんかな。
しばらく待つと
「奥にご案内します」
「ご苦労だったな」
「はい、まぁ概ね引き取って貰えましたから」
そう、概ね。
私の頭には完璧なバランスで鳥が座っている。そして後ろからヒナが付いてきている。ほとんどの子は新しい湖に移り住んだ。なのに、頭の子は私から離れない。
そしてもちろん、レアなスライムたちもわらわらと隠れている。
この大きな鳥さんにはどうやら番が居ないらしい。ボスなのか?
なので、ルシファー様にも
「その子はシエルと共にありたいのだろう」
と言って今に至る。
バーバさんは
「その水鳥も登録しとくぞ!ペット登録だ」
用紙を渡される。名前…。チラッと見上げて、さらさらと書く。ヒナはまとめてヒナ、7匹と書いた。
「目印になるもん付けとけよ!」
と言われた。エマゾンでリボンでも買おう。
こうして、依頼は終わった。
あのお屋敷で、色々と諦めてまさかの男子と同じベットで抱き付かれて眠った。と言ってもほんの30分くらいか。
不思議なことにリーンのそばは心地良くて、リーンも安らかな顔で目を瞑っていた。
先に目を覚まして、その薄い緑のまつ毛を眺めていたら、ゆっくりと瞼が開いた。目が合うとふわりと笑う。うん、可愛いぞ。
頬に手を当てて
「少し良くなった?」
と聞けば首元に顔を埋めて頷く。
「シエルのそばにいると安らぐ」
それは私も同じ。タフもそうなんだけど、不思議な感覚。揺蕩うようなふわりふわりとした何とも言えず心地良い感じで。
私を抱きしめる体は折れそうに細くて、だから少しでも心地良くなれたなら良かった。
「シエルは何才?」
「13だよ!」
ドヤって言ったら驚かれた。
「僕も体は小さいけど、シエルもだね…。僕の方が1才年上だよ!」
驚いた。見た目は10才くらいに見える。背もきっと低いだろうし。病気のゆえんか?
「僕は魔力不全症で…体に魔力が上手く回らない。なのに魔力は人よりもかなり多くてね…。魔力を巡らすのにとてもたくさんの力を使うから。だから成長が阻害されて背も伸びないし、体も細いまま」
ならタフとお母さんも?
「シエルといると、滞っていた魔力がするする流れるみたいな感じがして…ふふっ心地良いよ」
魔力が上手く体を巡らない。リンパみたいな感じかな。詰まると体が硬くなって…それが進行して体が動かなくなって、やがて自発呼吸が出来なくなる?
でも私がそばにいて魔力が流れるとは何でだ?私も同じく心地良く感じる。これは一度、レイキにも抱っこして寝てもらわないと検証出来ないな。
リーンとレイキ…湖でお昼寝とかで試すか。
「私も心地良く感じる…リーン様が楽になれるなら良かった」
「リーンと呼び捨てで呼んで?」
「でも…」
「シエル殿、頼む。友達もいなくて寂しい思いをしてるんだ。不敬なんて言わないから」
私は頷いた。
「リーン、すぐには無理だけど。また来るよ!」
こうして依頼達成の連絡を(通信の魔道具があるらしい)してくれた。
通信の魔道具…王都とも連絡が取れるかもしれない。マイヤーからは装備が出来次第、出た方が良さそうだ。
王様とかに見つかったらね?
その日はそのままお宿へゴー!
(ぐはっ、電車でゴーみたいに言うな)
あーあったね、懐かしい。
はてと、うんうん頷くタツキは置いといて…後でタフとレイキと話かなぁ。
まずはレイキとタフで検証する?でも数値化出来ないと比較検証が難しいよな。
うーん、後で考えよう。
まずは今日の晩ご飯だ。
私としてアレが食べたい。姫牛乳に小麦粉、そしてマンティが、採ってきたアレ。
生で作るのは初めてだけど、いつやるの?今でしょ!のノリで作ろう。よし、気合いを入れるぞ。
腕まくりしたところでちょうど宿に着いた。部屋に入ると装備を外してから料理だ。
「レイキ、タフ、タツキも手伝ってー!」
「「「おう!」」」
今日はサナエの出番はないんだ。
「サナエは後で盛り付けお願い」
「うん」
にこにこしてるサナエ可愛い。
さて、まずはアレの解体だな。大きな寸胴にお湯を沸かす。もちろん魔法でサクッと時短。
そこにタツキがザバザバと洗ってくれたアレをドボンと投入。お塩をひとつまみ。
茹でるのも時短でエイヤ!として、ほかほかの内に取り出して…風魔法で乾かすとタフの出番。
「中身だけだよ?しっかり取ってね!殻は捨てないで」
ん?と言う顔をしたけど、殻を空いたお皿に載せる。
じゃんじゃんね、流れ作業で。
茹でた身をパクリっ、んー美味しい!ヤバいね。お手伝い組はタフ以外、つまみ食い。タフは首を傾げてるから
「はい!」
もぐもぐしてから
「美味い!えっ、凄い。シーちゃん大好き」
私じゃないよ?マンティのお手柄。
「誰も食べないで邪魔だって漁師に嫌われてるんだぞ?」
マジで?勿体無いお化けが出ちゃうよ。
*読んでくださる皆さんにお願いです*
面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪
評価は任意ですが…もらえるととっても嬉しいです!
モチベーションになりますのでどうぞよろしくお願いします♪




