表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
マイヤーに向けて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/127

80.助け合い

 崩れ落ちて泣く私にタツキは声を掛けなかった。なんで?そう思ったところで、私…慰めてもらうのが当たり前って思ってたんだと気が付く。

 ここにきて、前の世界でもここでも、私は辛かったら誰かが当たり前に慰めてくれると思っていたんだ。


 そんな自分に気が付いて愕然とした。シエルは?タツキやレイキは?

 そんな風に誰かに甘えたりしない。私は…?

 覚悟なんてしてなかった。結局、最後は誰かに助けて貰えるとそう思ってたんだ。


「1人で乗り越えなきゃ意味がない…」

 ポツリとタツキが呟いて、部屋に入って行った。分かってて手を差し伸べない、それはタツキの優しさだ。

 この先もずっと死ぬまでみんなと一緒にいるとは限らないから。

 私が自分で考えて乗り越えて行けるように。


 シエルが倒れた時、考えたのはこの先どうなるのかということ。それは自分の為。シエルの体調は気になったけど、私は自分のことしか考えなかった。

 きっとレイキには見透かされていたんだと思う。ふぅ、情けない。頼ってばっかりで、私なんて出来ること無いってそれは単なる逃げだ。

 何もしなくていい為の言い訳。狡いのは私。シエルは自分で解決出来る。1人でもきっと大丈夫だろう。マンティも黒馬もいる。タフとレイキはシエルのそばにいるだろうから。


 私は?


 この世界に来て、どこかお客さん気分で。まだ本当の大変さを実感していなかった、ようやく分かった。

 お金を稼げたのはシエルのお陰。服だって野営の道具だって食事だって。

 一方的に寄りかかっている。それじゃただの寄生だ。私に出来ることを真剣に考えなきゃ。

 切実に、そう感じた。


 その日は色々考えて良く眠れなかった。そして、ちーこが私への気持ちを隠していた理由も。私が自立しなくなると分かっていたんだ。

 そこまで思われて嬉しい気持ちと、情けない気持ち。やっと自分と向き合えたのかも。婚約者はクズだったけど、主体性が無いっていうのは当たってた。


 出来ること、少し何をすべきか…。

 目を覚ます。眠ってたみたいだ。よし、起きて体を伸ばすと着替えた!シエルに会いに行こう。そしてちゃんと謝ろう。どこにいるかな?見つかるまで探そう。

 部屋を出て…えっと、えぇーー!?


 ソファにはマンティの翼に包まれたシエルが眠っていた。銀色の頭だけが見える。もぞもぞと動くと顔を上げた。目が合う。

「シエルっ…」

「ん、サナエおはよう…」

「おはよう…あの、私…」

 四つん這いでソファを移動して私の元に来る。そのまま腰に抱き付いて来た。何かわからない、込み上げるような感情で私はシエルを思いっきり抱きしめた。


『潰れるぞ?』

 マンティに声を掛けられ腕を緩める。シエルがくったりとして鼻血を出していた。

「シエル!」

 タツキが居間に顔を出す。

「どうした?ってええ…」

 テキパキとティッシュを取り出すとシエルの鼻に突っ込む。

 状況は飲み込めたのか

「ん、その…な、ほどほどに」

 頷く。シエルは片方の手をタツキに伸ばす。タツキは私ごとシエルを抱きしめる。


 しばらくして離すと

「ちゃんと話しろよ」

 と私に声を掛けた。私はシエルに向き合うと

「昨日はごめん。私、自分勝手だった…」

 鼻にティシュを突っ込んだまま、静かに聞いているシエル。あぁやっぱりシエルはおかんだ。

「助けて貰ってるのは私なのに、自分の都合で。しかも、昨日の事はシエルは悪く無いのに」

「そうだよね、私は何もしてない」

「うん。だからごめんなさい」

 頭を下げた。


 顔を上げて

「何もにできないくせに、頼って寄りかかって。助け合いじゃない。ただの寄りかかりで。やっと気が付けたの…」

「うん」

「だから、また一緒に…これからも一緒に…お願いします」

 シエルの手が頭を優しく撫でる。


「そう。溜めるのは良く無い。でも言いたいことだけを言うのも違う。歩み寄ることが大事で。上っ面の関係でいいなら笑って許せるけど…これからも旅をしていくなら話し合いは避けられない」

「うん」

「分かったならそれでいい。なかった事にはならないし、私はとても傷付いた。それを忘れないで。気づきは大切。気づけたなら変われるから」


「うん、ありがとう…見捨てないでくれて」

 シエルはソファに立ち上がると私の頭を抱きしめた。

「見捨てたりしないよ…もう家族みたいなもんだし?」

「幸子お母さん…うわぁぁん…えぐっぐすっ…」

 頭をよしよししてくれる温もりに涙が止まらなかった。


 ドアを叩く音。タツキがドアを開ける。

「シエル!」

「シーちゃん!」

「「…」」

 崩れ落ちた気配がする。私はシエルの細い体に抱きついてて見えなかったけど。

「はぁラビとあーちゃんがママは宿に帰ったって…」


 シエルが

「そんな事言ってないよ?様子を見に行くって言っただけで」

 ラビとあーちゃんを見ると

『帰ってこないと思ったし』

『思ったし?』

「はぁ、ま、良かったな」

 タフはシエルの髪を撫でた。レイキもシエルの頭をこづく。

「まさかあーちゃんたちがそんな風に言うと思ってなくて、ごめん。あ、2人ともおはよー!」


「おはようシーちゃん!」

「おはようシエル」

 レイキは私の方を見る。

「レイキ、私…甘えてた。というか寄りかかってた。変わろうと、変わりたいと思うの」

 必死に言葉を探す。レイキは軽く首を振るとふわりと私の髪を撫でて

「分かればいい。まだ一緒にいるんだからな。出来ることを出来る範囲で、だ」

 あぁやっぱりレイキは周りをちゃんと見てる。



 ぐぅ…ぎゅるぅ…



 えっと…?

「タフってばもう…いいところなのに。ドラマなら感動の再会シーンだよ!ここで2人が寄り添ってチューとかさ、そんか場面なのに」

 タフは目をパチパチさせると

「そうなのか?」

 と言って…。



 ふぅ満腹。

 食べ盛りに沢山食べさせた。タフとマンティとあーちゃんだけどね?

 食べ終わると私の横に順番待ちするんだよ、もう。マンティとあーちゃんはしっぽふりふり付きで。

 そりぁ大盛りにするよね?可愛いからさ。で、朝からガッツリと沢山作った。


 その後に、みんなで携帯食作り。私が倒れても、みんなが困らないように。食材も分散させたよ!

 タフは大丈夫だよねって言ったら捨てられたような顔で見るので、鬱陶しいのでタフにもすぐ食べられる食事を渡しておいた。


 タフには私のジョブの詳しい話はしていない。いないけど、あちらのものを取り寄せられると伝えた。なにが危険か判断できないから。そしたらウニクロのシャツに感動していた。

「これはセーフだ!」

 キリッとした顔で言うけど鼻の穴広がってるよ?まぁね、肌着は見えないから。




 はぁ、さっきは酷い目にあった。

 2人が寄り添ってちゅーはシチュエーション的にサナエとレイキなのに、あの後タフに抱きしめられてちゅーされた。耳元で

「心配させたからね、お仕置き♪」

 だってさ、もう。イケメンは狡い。


 そんなこんなで、今回のサナエの騒動はいつかは来ると思ってたこと。いい意味でふわふわしていたサナエはどこか他人事のような、そんな感じに見えたから。

 自覚できたのなら良かった。まだ旅は続くからね。


 で、スライムだよ。従魔登録はしてもしなくてもいいんだって。最弱だから。でも良かったよ、あまりにもね?花柄って何って感じだしね?目立つから。

 単色の子もいたんだけど、水色の。これぞスライムって思ったら


(治癒魔法が使えるスライムプリースト 上位種)


 見えないかな、私には何も。


(治癒ポーションも任せて!だとか)


 その情報いるののかな?明後日の方向を見つめた私だった。




助け合いとはお互いが支え合うことだと思うのです…



*読んでくださる皆さんにお願いです*


面白い、続きが読みたいと思って貰えましたらいいね、やブックマーク、↓の☆から評価をよろしくお願いします♪

モチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ