80.助け合い
崩れ落ちて泣く私にタツキは声を掛けなかった。なんで?そう思ったところで、私…慰めてもらうのが当たり前って思ってたんだと気が付く。
ここにきて、前の世界でもここでも、私は辛かったら誰かが当たり前に慰めてくれると思っていたんだ。
そんな自分に気が付いて愕然とした。シエルは?タツキやレイキは?
そんな風に誰かに甘えたりしない。私は…?
覚悟なんてしてなかった。結局、最後は誰かに助けて貰えるとそう思ってたんだ。
「1人で乗り越えなきゃ意味がない…」
ポツリとタツキが呟いて、部屋に入って行った。分かってて手を差し伸べない、それはタツキの優しさだ。
この先もずっと死ぬまでみんなと一緒にいるとは限らないから。
私が自分で考えて乗り越えて行けるように。
シエルが倒れた時、考えたのはこの先どうなるのかということ。それは自分の為。シエルの体調は気になったけど、私は自分のことしか考えなかった。
きっとレイキには見透かされていたんだと思う。ふぅ、情けない。頼ってばっかりで、私なんて出来ること無いってそれは単なる逃げだ。
何もしなくていい為の言い訳。狡いのは私。シエルは自分で解決出来る。1人でもきっと大丈夫だろう。マンティも黒馬もいる。タフとレイキはシエルのそばにいるだろうから。
私は?
この世界に来て、どこかお客さん気分で。まだ本当の大変さを実感していなかった、ようやく分かった。
お金を稼げたのはシエルのお陰。服だって野営の道具だって食事だって。
一方的に寄りかかっている。それじゃただの寄生だ。私に出来ることを真剣に考えなきゃ。
切実に、そう感じた。
その日は色々考えて良く眠れなかった。そして、ちーこが私への気持ちを隠していた理由も。私が自立しなくなると分かっていたんだ。
そこまで思われて嬉しい気持ちと、情けない気持ち。やっと自分と向き合えたのかも。婚約者はクズだったけど、主体性が無いっていうのは当たってた。
出来ること、少し何をすべきか…。
目を覚ます。眠ってたみたいだ。よし、起きて体を伸ばすと着替えた!シエルに会いに行こう。そしてちゃんと謝ろう。どこにいるかな?見つかるまで探そう。
部屋を出て…えっと、えぇーー!?
ソファにはマンティの翼に包まれたシエルが眠っていた。銀色の頭だけが見える。もぞもぞと動くと顔を上げた。目が合う。
「シエルっ…」
「ん、サナエおはよう…」
「おはよう…あの、私…」
四つん這いでソファを移動して私の元に来る。そのまま腰に抱き付いて来た。何かわからない、込み上げるような感情で私はシエルを思いっきり抱きしめた。
『潰れるぞ?』
マンティに声を掛けられ腕を緩める。シエルがくったりとして鼻血を出していた。
「シエル!」
タツキが居間に顔を出す。
「どうした?ってええ…」
テキパキとティッシュを取り出すとシエルの鼻に突っ込む。
状況は飲み込めたのか
「ん、その…な、ほどほどに」
頷く。シエルは片方の手をタツキに伸ばす。タツキは私ごとシエルを抱きしめる。
しばらくして離すと
「ちゃんと話しろよ」
と私に声を掛けた。私はシエルに向き合うと
「昨日はごめん。私、自分勝手だった…」
鼻にティシュを突っ込んだまま、静かに聞いているシエル。あぁやっぱりシエルはおかんだ。
「助けて貰ってるのは私なのに、自分の都合で。しかも、昨日の事はシエルは悪く無いのに」
「そうだよね、私は何もしてない」
「うん。だからごめんなさい」
頭を下げた。
顔を上げて
「何もにできないくせに、頼って寄りかかって。助け合いじゃない。ただの寄りかかりで。やっと気が付けたの…」
「うん」
「だから、また一緒に…これからも一緒に…お願いします」
シエルの手が頭を優しく撫でる。
「そう。溜めるのは良く無い。でも言いたいことだけを言うのも違う。歩み寄ることが大事で。上っ面の関係でいいなら笑って許せるけど…これからも旅をしていくなら話し合いは避けられない」
「うん」
「分かったならそれでいい。なかった事にはならないし、私はとても傷付いた。それを忘れないで。気づきは大切。気づけたなら変われるから」
「うん、ありがとう…見捨てないでくれて」
シエルはソファに立ち上がると私の頭を抱きしめた。
「見捨てたりしないよ…もう家族みたいなもんだし?」
「幸子お母さん…うわぁぁん…えぐっぐすっ…」
頭をよしよししてくれる温もりに涙が止まらなかった。
ドアを叩く音。タツキがドアを開ける。
「シエル!」
「シーちゃん!」
「「…」」
崩れ落ちた気配がする。私はシエルの細い体に抱きついてて見えなかったけど。
「はぁラビとあーちゃんがママは宿に帰ったって…」
シエルが
「そんな事言ってないよ?様子を見に行くって言っただけで」
ラビとあーちゃんを見ると
『帰ってこないと思ったし』
『思ったし?』
「はぁ、ま、良かったな」
タフはシエルの髪を撫でた。レイキもシエルの頭をこづく。
「まさかあーちゃんたちがそんな風に言うと思ってなくて、ごめん。あ、2人ともおはよー!」
「おはようシーちゃん!」
「おはようシエル」
レイキは私の方を見る。
「レイキ、私…甘えてた。というか寄りかかってた。変わろうと、変わりたいと思うの」
必死に言葉を探す。レイキは軽く首を振るとふわりと私の髪を撫でて
「分かればいい。まだ一緒にいるんだからな。出来ることを出来る範囲で、だ」
あぁやっぱりレイキは周りをちゃんと見てる。
ぐぅ…ぎゅるぅ…
えっと…?
「タフってばもう…いいところなのに。ドラマなら感動の再会シーンだよ!ここで2人が寄り添ってチューとかさ、そんか場面なのに」
タフは目をパチパチさせると
「そうなのか?」
と言って…。
ふぅ満腹。
食べ盛りに沢山食べさせた。タフとマンティとあーちゃんだけどね?
食べ終わると私の横に順番待ちするんだよ、もう。マンティとあーちゃんはしっぽふりふり付きで。
そりぁ大盛りにするよね?可愛いからさ。で、朝からガッツリと沢山作った。
その後に、みんなで携帯食作り。私が倒れても、みんなが困らないように。食材も分散させたよ!
タフは大丈夫だよねって言ったら捨てられたような顔で見るので、鬱陶しいのでタフにもすぐ食べられる食事を渡しておいた。
タフには私のジョブの詳しい話はしていない。いないけど、あちらのものを取り寄せられると伝えた。なにが危険か判断できないから。そしたらウニクロのシャツに感動していた。
「これはセーフだ!」
キリッとした顔で言うけど鼻の穴広がってるよ?まぁね、肌着は見えないから。
はぁ、さっきは酷い目にあった。
2人が寄り添ってちゅーはシチュエーション的にサナエとレイキなのに、あの後タフに抱きしめられてちゅーされた。耳元で
「心配させたからね、お仕置き♪」
だってさ、もう。イケメンは狡い。
そんなこんなで、今回のサナエの騒動はいつかは来ると思ってたこと。いい意味でふわふわしていたサナエはどこか他人事のような、そんな感じに見えたから。
自覚できたのなら良かった。まだ旅は続くからね。
で、スライムだよ。従魔登録はしてもしなくてもいいんだって。最弱だから。でも良かったよ、あまりにもね?花柄って何って感じだしね?目立つから。
単色の子もいたんだけど、水色の。これぞスライムって思ったら
(治癒魔法が使えるスライムプリースト 上位種)
見えないかな、私には何も。
(治癒ポーションも任せて!だとか)
その情報いるののかな?明後日の方向を見つめた私だった。
助け合いとはお互いが支え合うことだと思うのです…
*読んでくださる皆さんにお願いです*
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