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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
マイヤーに向けて

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77.マコト・ツルヤ

 シエルはマンティの翼に包まれて眠っている。

 バーキンは優しい顔でシーちゃんを見るとポツリポツリと話し始めた。

「僕の叔父さんはね、不思議な人だった…」

 そんな言葉で話始まった。

「いつもどこか遠くを見ているような、そんな人」


 その国では珍しい黒髪に黒目、その神秘的な色と憂いた表情はバーキンの叔母さんを魅了した。冒険者なのに穏やかな人柄で、良く本を読んでいたと言う。

 知らない言語で何やら書いていたり、知識も幅広くて粗野な冒険者とは思えなかったとか。


 故郷は遥かに遠く、一緒に来た仲間とは袂を分かって…1人で冒険者になった。苦労もしたようだが、戦闘向のスキルがあったらしく大成はしなかったが堅実に力を伸ばしたそうだ。

 パーティーを組んだ次期もあったらしいが、解散してバラバラになったと。

 その頃にバーキンのお父さんのお姉さん、叔母さんと出会い、熱烈なアプローチに根負けし遂に結婚した。しかし、1つ条件を付けたそうだ。


 子供は作らない


 バーキンの叔母さんは生い立ちに関連すると考え、頷いた。とはいえ、夫婦の営みをすればやがて授かる。

 マコト・ツルヤは怯えたような顔で、縋るように産まないでくれと言った。約束ではあったので、泣く泣く子を始末した。

 それが元で体調を崩して呆気なく22才で亡くなった。その時、マコト・ツルヤは25才。  


 その後は人と距離を置いていたようだが、幼少の頃から顔を合わせていたバーキンとは少ないながらも交流があった。

 そして、ある時、バーキンを訪ねたマコト・ツルヤは痩せ細って病気だった。ある物を渡すとそのまま帰ろうとしたので、引き留めた。明らかに重病だったからだ。

 その後はバーキンが亡くなるまで面倒を見た。


 ポツポツと話す内容は、分かるような分からないような…不思議な話で。

「もし、僕に会いに来る人がいたら…話を聞いて欲しい。そして、出来れば助けてあげて」

 もう一つ

「僕を訪ねて、銀髪に緑の目をしたきれいな男性が来たら、その本を見せて欲しい。そしてもし、黒髪の冒険者に会うことがあれば…この本を渡してくれ」


 手渡された本は読めない言語で書かれていた。彼は他にも僕に空間拡張カバンを渡してくれた。

「沢山入るし、時間は()()()()

 と。それから半年ほどでマコト・ツルヤは亡くなった。まだ45才。若すぎるその死の原因は分からないとバーキンは言った。


「シエルにも話をしたよ。とても驚いて、レイキと同じように呟いて。顔色が悪かったからね…少し寝たらいいと言ったんだ」

 俺たちを流し目で見る。

「夜明けまでもうすぐだな…する?僕はいつでも、いいよ」

 あからさまな言い方にレイキの顔が赤くなる。口元に手をやって首を振る。

「ふふっ可愛い…」

 赤い顔のまま本を眺めた。


「読む?」

 レイキは首を振った。

「シーちゃんと読みたいんだね?僕も混ぜてもらうよ」

「あぁ、もちろんだ」

 バーキンは優しい顔で笑うと

「僕も探していたんだよ、黒髪の上品な冒険者を…」

「バーキンは味方か?」

「そう、多分…敵じゃ無い。僕は知りたいんだ…叔母さんが、そして叔父さんが死ななきゃならなかった理由が」


 レイキは考えて

「俺たちにはまだ分からない。シエルの体調不良とそのマコトさんの病気。それが繋がるのなら…鍵はタフが握ってる」

 黙ってまた考えて

「その原因、マコトさんの病気の原因が分かれば…彼の苦悩も分かるかも知れない」

 バーキンは驚いてくしゃりと笑った。


「僕は叔父さんを恨みたく無い…仕方なかったと納得したいんだ。彼も苦しかったと、そう思わなければ。叔母さんが可哀想だ!」

「…」

 部屋が静かな空気に包まれた。

「ん…レイキ?」

 シーちゃんの目が開いた。レイキも俺もシーちゃんに駆け寄る。

「シエル!」

「シーちゃん!」


 マンティの翼から顔を出すと目をパチパチさせて

「もう朝?」

 と聞いた。

「おい、心配かけといて言うのがそれかよ…」

 レイキは崩れ落ちた。静かにレイキを見てその頭を優しく撫でる、いや掻き回した。

「おい、乱れるだろ!」

「そもそも跳ねてるし…」

「ぐっ…」

 確かに。俺もレイキの頭を撫でる。


「なんだよ!」

 おっ反抗期か?

「寝癖を直してる」

「ぐっ…」

「あははっ仲良しさんだね!」

 バーキンの朗らかな笑い声が響く。



 夜明け前に起きて、また寝ちゃった。なんか色々といっぱいいっぱいで。マンティが翼にくるんでくれたらスコンと落ちた。高い体温と柔らかな体、ふかふかの羽。

 いつ寝るの?今でしょ!のノリで眠った。


 と言っても意識は覚醒していて、3人の会話をちゃんと聞こえていた。神様の話を思い出す。救済者…。わざわざ若返られた私を早死にさせるとは思えない。

 胡散臭いけど神様だ。ならば、タフもバーキンも信じよう。


「レイキ、心配掛けてごめん。色々と話したいことがあるんだ。みんなも、それからタフとバーキンも。みんなある意味関係者だからね!」


 ぐぅぅ…きゅるう…


 うっカッコよくて決めたところでそれはない…私のお腹。普段は慎ましいくせに、なんで今?

「くはっ…あはは」

 タフが吹き出した。

「ぐほっ…マジかよ…」

 レイキはまた崩れ落ちた。

「べふっ…可愛い顔して、豪快だね!」

 バーキンまで壁に手を当ててまで笑うの?


「腹が減ってはなんとやら…食べるぞ!」

「ぐふっ…」

「お、おう」

「あぁ食べよう」


 私はバーキンの厨房を借りてご飯を炊いて味噌汁を作って鮭を焼いた。お漬物もあるよ!

 ざ、和食。

 それを見てタフもバーキンも懐かしそうな、そして悲しそうな顔をした。


 レイキと顔を合わせる。頷くと手を合わせて

「いただきます!」

「いただきます!!」

「「いただきます?」」

 疑問系なのは許そう。さあお食べ!


 はむっ…むしゃむしゃ。ご飯うまっ。ズズーっとな、はぁ朝から味噌汁最高ー!お漬物はポリポリといい音だ。

 正しい朝の音だね、うんうん。

「げほっ…ごほごほ…」

(おい、何が正しい朝の音だ!不意打ちはやめろ)

 さーせん?

 レイキの背中をトントンする。


(でも、安心したぞ?沢山食べろよ、チビちゃん)

 むっだれがチビちゃんだ!

(圧倒的にチビだろ)

 ぐっ反論できない。膝の上のあーちゃんを見る。

 レイキにドヤってみた。


「ぐほっ…」

(おい、あーちゃんに勝って自慢するなよ!)

 この際、種族は問わないよ?ふふん。

 爆笑しながらも粛々と食べ進めるレイキ。器用だな?

 私は味わって…あ、はいはいおかわり?ただ今、はいどうぞ、あーちゃん。たくさんお食べ?

 えっラビも?美味しいって?だよねーはい、おかわりね。マンティはまだまだ、いけるね?おかわり入れとくよー!


 さて、鮭を…タフも?早くないか、食べるの。ちゃんと噛んでるの?ん、噛んでるって。ならいいけど、はいおかわり。

 えっバーキンとレイキもなの?早くない、早食いはダメだよ!味わって食べ…あーちゃんまたおかわり?

 えっママの料理は最高?だよねー沢山どうぞ!


 賑やかに朝食を食べたのだった。

 ぐじぐじ悩むのは性に合わない。この世界で生きると決めたのだから、前向きに行くぞ、おー!


(くほっ、だから不意打ちはやめろー!)


 慣れて?


(無理だ!)





謎が解けてきましたね…

シリアスは一旦終わります



*読んでくださる皆さんにお願いです*


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