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8.初めての依頼

誤字の指摘、ありがとうございます…

コソッと訂正しました

「なるほど、たしかにミドルナリスは馬車の終点ではあるが小さな町だ。冒険者ギルドはあるにはあるが、依頼窓口がない。ここから護衛を雇うのがいいだろう。馬車はミドルナリスまででそこからは徒歩だな?」

「あぁ、ミドルナリスまでは乗り合い馬車でそこからは徒歩になる」

 チラリと私とサナエを見る。

「戦闘は護衛任せか?」

「そうだな、実戦経験が少ない」

「分かった。それなら依頼窓口は中央にあるからそこで伝えてくれ。中堅の、女性がいるパーティー希望ってな」

「分かった」

「気をつけてな、お嬢ちゃん」


 なぜか私を見てお兄さんは言った。手を振ると真顔で振り返してくれた。

「何で私?」

「チビだからだろ?」

 レイキ、言い方。チラッと見る。澄ました顔してるよ、むぅ。

「おい、じゃれてないで依頼の窓口に行くぞ」

 じゃれてないし。

 真ん中の窓口は若い女性だ。

「依頼ね?」

「あぁ、ミドルナリス経由でサウナリスまで。ミドルナリスまでは乗り合い馬車で、そこからは徒歩だ」

「4人よね?依頼は護衛のみでいいの?」

「護衛以外もあるのか?」

「野営全般も依頼出来るわよ。えっとね、野営に必要な装備一式の持ち運びも依頼出来るの」



(あ、あーマイクテスト、聞こえる?)

(((聞こえてる!)))

(こっちでの亜空間収納の位置付けは、絶対バレたらダメなヤツ)

((マジか))

(そうなの?)

(ただ、空間拡張バックはある。それぞれ小さなカバンを持って、そこに収納してるフリをすればオッケーだよ)

(なら野営の準備は頼まなくていいな)

(うん)(だな)(だね)



「あー、野営の準備は頼まなくていい」

「では護衛だけで」

「夜も護衛されてるでいいよな?」

「えぇ、道中は全て対象よ。ただ、指示を無視してその場を離れたらそれは護衛対象にならないから気を付けて」

「分かった。もし途中で困ってる人がいたら護衛はどうするんだ?」

 それね、気になるよね。

「相手が助けを求めて、応えられるなら護衛と雇い主の判断で助ける事も」

「基本は自分で何とかしろ、か」

「そうなるわね。その場合、必ず金銭か物などの対価を求める事」

「分かった。依頼は女性がいる中堅のパーティー希望だ」

 受付の女性は難しい顔をする。

「女性がいる中堅パーティーは少ないわ。女性だけのパーティーは護衛依頼は受けないし、男性だけのパーティーも含めるべきよ」


 ん?登録窓口のお兄さんは女性がいる中堅パーティーって依頼するように言ったよね?何で?

「こっちには子供と女性がいる」

 こらこら、私は子供じゃない。タツキの袖を引いて抗議の目線を投げる。

 チラッと私を一瞥すると

(こっちは大柄な人が多いからな、お前は子供に見える)

 なんですトン?残念なり…。しょんぼり。すると後ろからサナエがふわっと抱きしめてくれた。振り返ってぽよんに顔を埋める。よろしこー。背中をトントンしてくれて嬉しいよ。


「それだと時間がかかるわ」

 なぜか引かないお姉さん。

「紹介は受けてもいいが、多分選ばない」

「時間がかかるけどいいのね!」

 なんで依頼する側が脅されてるの?私はぽよんから顔を上げて受付の女性を見る。

「なんで?女性がいる中堅パーティーはそんなに少ないの?いくつあるの?依頼してる側なのにそんなにおかしな依頼なの?お姉さん名前は?」

 次々と子供らしい無邪気な質問をする。

(無邪気さゼロの質問だな…)

 レイキは黙ってて。


「わ、私はあなたたちを思って…」

 被せるように

「だから質問に応えて、女性がいる中堅パーティーはそんなに少ないの?いくつあるの?依頼してる側なのにそんなにおかしな依頼なの?お姉さん名前は?聞こえてないの?」

(怖ぇー)

(シエルいけいけー)

 ふん、前職でごねるおっさん相手に口先一つで収めた私の手腕を舐めちゃあいかんよ。


「わ、分かったわ。そこまで言うなら」

 また被せる。

「だからぁ、質問に応えて!聞こえないの?女性がいる中堅パーティーはそんなに少ないの?いくつあるの?依頼してる側なのにそんなにおかしな依頼なの?お姉さん名前は?」

 ダンッとカウンターを叩く。痛い…思いの外、硬かった。なぜかタツキに頭を撫でられる。

「な、7パーティーよ」

「少ないの?それ。全体では中堅パーティーいくつ?」

「15」

「半分は少ないの?」

「…」

「依頼は受けるのか?」

 タツキが聞く。

「う、受けるわ。中堅パーティーなら報酬は10万ガロンが基本よ」

 んー高いのか?でも安全には代えられない。

「ならそれで依頼を頼む」


 タツキが紙に依頼についてのサインしているのを横から見ながらお姉さんをガン見する。するとこちらを睨んだ。なぜ?

 制服の胸元に名札があった。ふーん、名前書いてあるんだ。

「これで依頼の受付は完了。応募があったら宿に連絡するわ」

「あぁ頼む。登録料分の働きを期待してるぞ」

 タツキが念押しした。

「女性のいる中堅パーティーだよ?インクリス」

 お姉さんはハッとして名札を隠した。もう遅いもんね?


 サナエに手を取られてギルドを後にした。しばらく無言で歩く。

(何なんだ?あれ)

(さぁな?紹介したいパーティーがいたんだろうが)

(男性のパーティーは嫌だわ)

(ねぇ?私の質問には応えないし)

(注意した方が良さそうだな)

(普通に若い男性ばかりのパーティーとか紹介されそう)

(あぁ、ただ早くここを出たいのもあるからな)

(ギルドもなんだか信用出来ないね) 

(仕方ない。弱肉強食なんだろ)


 日本人の感覚としては辛いよね。

(にしてもお前な、また俺の腹筋を試したな)

(えっ何で?)

(なにが無邪気だよ…邪気しか感じない質問だったぞ)

(えー酷いな)

(でもカッコよかった)

 やっぱりサナエはめっちゃいい子だね!

(おい、俺が嫌なヤツみたいだろうが)

(違うの?)

(まぁまぁ、ひとまずは紹介待ちだからな。その前に、だ。野営の準備だな)

(すぐに買うかは別として、お店を見に行きたい)

(そうだな)


 大通りを歩いて行く。商店は宿から南に行った方向だ。お店ももう開いている。

「やっぱり野営に必要なテントとか毛布とか、食材に鍋とかお皿かな?」

「そうだな…おっ、こことかどうだ?」

 冒険者御用達風のお店だ。

「ここはやめよう」

 みんなは何も聞かずに頷いてくれる。もう少し進んだ先にある狭くてボロいお店を指してみんなを見る。

 タツキは躊躇なくお店に入って行った。


(さっきのお店、若い冒険者からぼったくる。しかも全体的に値段が高い)

(調べたのか?)

(うん、お勧めはここ!)

 ふふっ、魔法通信に寄るとここがお勧めなのだ。初心者が買うのにお勧めのお店5選!のトップだ。


 お店の中は雑多な感じで天井近くまで商品が置かれている。

 中程にテントや椅子が置いてあった。この辺かな。

 テントは1人用と2人用、後は大人数用かな?買うなら1人用がいいの?でもやっぱりサナエと一緒がいいな。

「テントは何人用がいいんだろうな」

「そうだな、安全面を考えると2人用がいいが…万が一に備えて1人一つは欲しいよな」

「そうだな、値段だけ見ておくか」


 安い物は2人用1万ガロン、高いのは3万ガロン。違いは何だろ?

「防水の性能と、魔除け効果の違いだ」

 奥から声がかかる。うわぁ、大きい。見上げるほどの大きさだ。コワモテのおじさんが腕組みしてた。

 私たちを見渡すと

「命が惜しいなら高性能のを買った方がいい。初心者や女子供なら尚更だ」

 魔物避けは確かに必要かも。

(2人用の高い方だけ買おう!)

 みんな頷いて

「魔除け効果のある2人用のを2つ欲しい」

 おじさんは頷くと

「椅子もあった方がいいぞ。折りたためるのがある」

 それはシンプルは背もたれのない木の椅子。あ、これいいんじゃない?お値段もなんと1500ガロンと安い。


「欲しい」

「必要だよな、これも4つ」

「野営するなら後は毛布や寝袋。食器と余裕があるならコンロだな」

「コンロ?」

 食いついてしまった。

 奥からゴソゴソして持ってきた。

「これだ、魔石が動力となって火が出る。お湯を沸かせるだけでも楽だぞ?森の中は無理だがな。街道沿いなら使える」

 見た目はまんま卓上コンロだ。でもやっぱりいわゆる魔道具なのかお高い。2万ガロンだ。

 これは無しかな。


「絶対いるもんじゃない。ゆっくり考えればいい」

(うわ、いい店主だな)

(初心者にお勧めなだけある)

 その後は毛布とか寝袋の性能や値段だけ確認して保留にした。他にはお皿とカップにカトラリーセットを買うことにした。

 お皿は1500ガロン、カップとカトラリーセットはそれぞれ1000ガロンだった。


 包んでくれたテントや椅子、お皿などを渡されてお金をサナエが払った。

「また必要な物があれば来な。大体揃うぞ」

 大きなコワモテ店主は最後にそう言って私の頭を撫でた。何で私?




※読んでくださる皆さんにお願い※


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刹服の胸元に名札があった。ふーん、名前書いてあるんだ。 →制服 面白いです。
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