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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
マイヤーに向けて

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74/127

70.鍛治の町

 ダンディーブブカに案内されて冒険者ギルドに向かう。

 マイヤーの町は活気のある町でそこかしこに工房がある。と言うか

「南門から目抜き通りまでがいわゆる工房街です」

 とサーマル隊員。

 なるほど、私たちは南門から入ったから、まさにここが目指した場所か。

 左右に所狭しと並んだ店の、あちこちからトントンカンカンと音がする。やっぱり昔ながらの…なのかな。

 魔法の気配もするから、そういうスキルかな。

 タフと手を繋いでマンティを撫でながら進む。


「リーブランのレイノルドから聞いたのか?」

 タフがサーマル隊員に聞く。

「はい!正確にはブブカ殿です」

 なるほど。マイヤーに行くと伝えていたからね。

 およその日程を考えて伝えていたとしても、正確にいつ着くかは分からない…待っててくれたのかな?


 やがて大きな建物が見えて来た。あれか…冒険者ギルド。隣が商業ギルドでその隣が農業ギルドだな。

 珍しい形の馬車は人目を引く。それにマンティもいるし。黒馬3頭にダチョウに牛、なかなか目立っている。

 町行く人が二度見三度見する。

 さらには連結馬車もだ。


 そのまま注目を集めながら進んで冒険者ギルドに着いた。中に入るとサーマル隊員が職員に声を掛けて

「私はこれで!」

 と敬礼して去って行った。

 ブブカさんは隣の商業ギルドでお待ちしてます、と去って行った。

 そのまま取引に傾れ込むんですね。


 裏にある厩舎にリリたちを預けるとギルドに入る。

「その子の登録かな?」

 優しい顔のお兄さんが声を掛けてくる。

「あぁ、こっちの子と後は黒馬も3頭いるんだ」

「ほぉ…これはまた珍しい。黒馬は売るのか?」

 マンティとマーブルを見て驚いてから聞いてきた。えっ売るって何?タフを見上げる。

 タフは握った手を優しく指で撫でると

「売らないよ?」

 良かった。


「ん?そうか、仲間にしたんだな。お嬢ちゃん、黒馬はとても利口で高く売れる。魔法も使えるだろ?」

 頷く。

「まぁ魔法はオマケみたいなもんだがな」

 またタフを見上げる。あの子たちは雷魔法でビリビリバリバリだよね?クラーケン(?)も狩ってたし。

 また指で手をトントンすると首を振る。

(その話はまた後で…)

 もしかするとうちの子たちってば優秀?


「まずはそっちのライオンとスライムか?」

 お兄さんは私の腕に抱っこされたマーブルをガン見中だ。一応、相当貴重だから隠せと言われてローブに隠していた。なんか小さくなれるみたいで、ソフトボールくらいのちんまりしたサイズで収まってる。


 紙を出された。タフが名前を書いて種族欄はライオン、スライムとした。手を出すので冒険者カードを出す。

「ほい、と。うん、おっ魔うさぎと魔犬もいるんだな。で、黒馬はだれが登録だ?」

 タフとレイキもカードを出す。

 お兄さんは登録を終えると

「はいよ、完了だ。目印に馬は耳標、ライオンは首に何か…付いてるな。それでいいぞ!」

 そこで声を落とし

「そのスライムは人に見せちゃダメだぞ?攫われるレベルの希少種だ」

 高速で頷いた。こえぇ。


 これで登録完了。お馬さんの名前は私がチョコ、レイキがカーリス、タフがブルワ。

 私のチョコはチョコレートから、レイキのはカラスをもじって付けた。

 聞いた時は吹き出したよ!


「魔獣の買取もお願いしたいんだが?」

「構わないぞ」

 タフが私を見る。

「ちょっと大物かな」

 タフにはワイバーン1体は売ろうって言われたからね。張り切ってマンティが5体も狩ってきたし、タフも1体狩ってるからさ。

「なら解体場で」

 お兄さんに着いていく。タフは私の手を離さない。そのまま進んで解体場に着いた。


「ここに!」

 と言われたので出す。


 ドンッ


 でかいね。

「…」

「…あぁ?!」

 解体の職員さんに凄まれた。だってね?まだあるんだよ…しかも気を遣って小さめのを出したんだけど。

「従魔が張り切ってね?」

「「ワイバーンかよ!」」

 さいです。

「素晴らしい!」

「くっ腕がなるな!」

 良かった、強面さんに凄まれて焦った。


「査定に時間がかかるぞ?」

「しばらくいるから大丈夫だ」

「預かるぜ!」

「よろしくね」

 初めて喋った私の声を聞いて解体場のお兄さんと登録窓口のお兄さんが驚いた。

 ん?話せないと思ったのかな。

 首を傾げると

「「なんていうか…きれいな声だな」」

 困ってタフを見上げる。

「自慢の娘なんだ」

 2人の優しい眼差しが刺さる。


 ひとまずワイバーン1体ははけた。冒険者ギルドでの用事は終わったからお兄さんたちに手を振ってギルドを出た。



 シエルの声は不思議と心にスッと入るような、高くも低くもない心地良い音として聞こえる。

 手を振ったシエルに2人が密かに悶絶していたことをシエルは知らない。


「なんていうか…心に染み入るような声だな」

「あぁ。思わず手を振りかえしたぞ」

「その顔でか?」

「煩い!」

 解体場のお兄さんはコワモテだった。照れながら小さく手を振る姿は微笑ましかったとか。



 ギルドの前で待ってたブブカさんが、意気揚々と商業ギルドに入って行く。

 すかさず奥からシュッとしたおじさまが飛んで来た。

 こちらの渋メンは揉み手が常備されてるのかね?

(ぐはっ)

(揉み手常備…)

 レイキとサナエの呟きの威力よ…。吹き出しそうになるからやめて?

(元はシエルだろ!)

 レイキは相変わらずキレッキレだね!


 当然のように奥の部屋に案内される。

「タフもこの際だし商業ギルドに登録したら?」

「ん?そうか??」

「しばらく一緒なんだし、売れるものたくさんあるでしょ?」

「まぁあるけどなぁ。護衛だろう?立場は」

「一応ね?」

「考えとく」


 対面にブブカさんと渋メンさんともう1人のおじ様。

 こちらはサナエと私、タフが座ってタツキとレイキは後ろに立っている。 

 渋メンさんが

「ノースナリスで売って貰いました石けん各種と干し肉、ふわふわをこちらでもぜひ!」

 もちろん、用意してたよ。


「どれくらいが希望なの?」

 サナエが聞く。

「石けんは各200、干し肉は50、ふわふわは2種類ともに100が希望です」

 石けんは100で干し肉が30、タオルハンカチは普通のが100、高いのは30用意してた。


 どうしよう…タツキ?

(しばらくいるから、石けんはひとまず100でまた用意出来次第追加で、ジャーキーは30出して様子見、タオルハンカチはある分だけでいいだろう)

 サナエは頷くと

「石けんはまず各100、干し肉は30、ふわふわは普通のが100で高い方が30」

「もっとお願いしたい」

「今はそれしかないの。用意出来たらまた納品に来るわ」

「「ありがとうございます!」」

 よし、現金ゲットだ。


「また新しい商品がありましたらぜひマイヤーで!」

 ふと思いついて

「あの…どんな物があると便利?」

 聞いてみた。

 おじ様たちは驚いた顔で私を見ると

「鍛治の町ですからな、汗をかきます。大きな布があると助かります」

 なるほど、要検討だね。


「ブブカさん、農業ギルドにも寄りたいの」

「もちろんです!ご案内しますよ」

 丁寧に見送られて商業ギルドを出た。ダンディーブブカに

「シエル殿の声はなんというか…耳に心地良いですな」

 ん?

「だからあんまり喋らせたくないんだ」

 そうなの…?

「フードから除く銀髪もきれいですしね…」

 タフの手をぎゅっと握る。


 タツキ、レイキ、サナエの緊張が伝わってくる。

「フードの中で髪の毛をまとめた方がいいかもしれませんな。みなさんの大切なお嬢さんでしょうから。お守りしなくては。もっともそこの子が黙ってないでしょうが」

 その子でマンティを見る。

「ガウ」

 と牙を剥いた。


 良かった、ダンディーは味方だ。

(くほっ…おい、ブブカが無くなったぞ?)

(ダンディー)

 もうなんかね、レイキとサナエの呟きがさ…最高だよね?タツキにペシリと叩かれた。さーせん。


 農業ギルドに入る。ダンディーにタツキ、レイキの順だ。

(おい!たからダンディー呼びするな!)

 分かりやすいかと…。

 サナエが可愛く睨みながらメッだって。いや、おかわり希望で!

 ペシリッ

 タツキは呆れながらも頷いている。ほわほわしたサナエは癒しだよねー!


 そんなやりとりの合間にも、ダンディー×ダンディー(農業ギルドのおじ様)が談笑している。

 思わず拝んだらレイキが

「ぐほっ…」

 リアルに吹き出した。そしてぷるぷるしてる。

「お疲れですかな…」

「い、いえ…ちょっと喉につかえて…」

 サナエが背中をさすっている。私もー!と思ったら睨まれた。

「シエル、メッだよ?」

 サナエ可愛い。ぽよんにダイブだ。ふよふよー!


 そのままサナエにいーこいーこされてやりとりを見守る。

「なんと!魔鳥の卵…本物ですな」

「魔牛の牛乳…しかもなんと濃い」

 いつもの反応だね。で、やっぱり高額買取。あざーす!


 やっと用事が終わってやっぱりダンディーに深々と頭を下げられてギルドを出た。手を振ると優しく振りかえしてくれる。ダンディー素敵!

 と感動してたらレイキに梅干しされた…痛いよ!

「俺の腹の方が痛いわ!」





*読んでくださる皆さんにお願いです*


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