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星なし転移者と仲間たち〜逃亡中〜  作者: 綾瀬 律
マイヤーに向けて

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69.マイヤーに到着

 海沿いの街道から離れて、北へと進む。東にはヤールカ国があるけど、広大な湿原と低い山に遮られてここから見ることは出来ない。

 そろそろ日差しも本格的にキツくなり、涼しい顔をしているもののタフはやっぱり暑そうだ。


 タツキが

「シエル、タフ(そう呼んでと改めて言われた)にインナーをあげたいんだが。この暑さは堪えるぞ。年上だし」

「そうだね…彼方の品物はダメだからレイキに作って貰おうか。なんかひんやりする薬草?草とかが有れば…その繊維を練り込んで生地にするの!ちゃんと足跡が残らないように」

「そこまでするか?」

「警戒してるのはタフじゃ無いよ。タフの追っ手の方」

 あ、と言う顔をする。

「言い訳は出来るようにしておかないとね」

 タツキは真剣に頷く。


 その後は私が魔法通信でひんやりする草を検索。すると意外な事に


 スライム


 と出た。いや、生き物を練り込むのは…と思ったらスライムの体液だって。テイムして教え込めば、飲み込んで吐き出すらしい。

 すると、スライムの体液が付くからひんやりするって。スライムコーティングと言うらしい。

 で、布をひんやりさせるには?の検索結果が


(綿と麻の棍棒にミントの茎を混ぜて生地を作り、スライムコーティングする)


 と出た。スライムコーティングか…。でも見かけないね?定番のスライム。


(弱いので人前には出てこない)


 あちゃ…ウチは魔獣とか魔獣とか聖獣とかわんさかいるもんな。


(力と魔力を抑えてシエルが近づけば大丈夫、すぐに名前を付ければ消えない)


 消えない?


(弱いから人が触っただけでも死ぬ)


 よし!タフの為にスライムゲットだぜ!


「って事でちょっと出掛けるよ」

「おいっ何が「って事で」だ。途中経過が無いぞ!」

 タツキが何か言ってるけど何も聞こえないよーだ。

 あーちゃんもラビもお留守番。1人だよ?てくてくと街道から外れて進む。

 おっ…あれか。なんか予想と違う。

 まん丸か涙型だと思ったけど…平べったい。色もラベンダー色と透明の混ざったマーブル模様。凄くきれい。


 眺めていると近寄ってきた。うわ…近くで見るとさらに、なんてきれいなの。

 触らないようにしゃがんで見てるとツノがたった。メレンゲみたいなツノ。

 クネクネしてる。名前はミントって付けようと思ったけど、これならマーブルかな。

「マーブル!」

『はぁい!』


 ぷるるんと震えて返事が来た!おぅ、応えてくれた。

 ツノにそっと触れる。

 私の指に触れたそれはヒンヤリとそして柔らかくて…まるで指を絡めてるみたいだった。

 そして起き上がってくると形が変わり、丸くなった。


「ぴちょん!(ママ!)」

 おう?えっ…?

『ママ!』

 はい、幸子52才…白うさぎに次いでスライムの子供が出来ました…。

「私とおいで!」

『はーい』

 ぴょんっと跳ねると胸に収まった。ジャストサイズだね、マーブル。

 改めてマーブルを見る。


(くずれスライム→スライムプリーストへ昇華)


 …はい?


(シエルが名前を付けた事でシエルの魔力を取り込んだ。魔法が使える個体になった)


 なんですトン!?


 隠蔽だ、全力で隠蔽だな。

 うん、この子はごく普通の可愛いスライムちゃんだよーっと。

 るんるんしてみんなに合流した。

 私を見てマーブルを見て私を見て…みんな3往復はしたかな?

 レイキは

「ぐほっ…」

 崩れ落ちた。

 タツキは目が点になってる。

「マーブル模様…」

 サナエは

「可愛い!」

 タフは顔に手を当てて

「なんでそうなる…」


 ん?どう言う事??

「シエル…ぐほっ…ちゃんと見たか?」

 吹き出しながらレイキが言う。

 どゆこと?

 改めてマーブルを見る。


(くずれスライム 特別弱い個体だが、生き残ると非常に能力の高い個体となる マーブル模様は超希少種)


 …目を擦る。

 ラベンダーと透明のマーブルだね。名前もマーブルだし。うん、見なかった事に。


「シーちゃん、念のために聞くけど…スライムを捕獲しにいったの?」

「うん」

「で、なんでそんなに生きてるうちに見られないような超希少種のスライムをゲットしたの?」

 さあ?首を傾げる。私が知りたいかな。

「はぁ…シーちゃんは存在自体が危ういんだよ?なのにマンティコアまでいるし、さらにはそんな超希少種のスライムまで…」

「う…でも選んだわけじゃ無いよ!1番先に見えたから…」

「はぁ。だからシーちゃんは目が離せないんだよ…」


「目立ちたく無い筈のシエルが1番目立つ謎…」

 くふっサナエの呟きがツボるね。


 マーブルが私の腕の中でぷるぷると震える。

『僕、要らない子?』

「そんな事ないよ!私にとっては大切な子どもだからね!どんな悪意からも守るよ!」

 ぎゅうぎゅう抱きしめる。

「だいたいね、タフの…」

「シエル!」

 うっそうだ、まだ秘密だった。くぅ言いたいのにぃ。


「シーちゃん?」

「なんでもない…もう仲間だから。タフが嫌なら別に構わないよ…」

 不貞腐れてやる!

「いやシーちゃんそんなつもりじゃ…」

 サナエにマーブルごと抱き付いた。よしよししてくれる手に擦り寄る。

 だってもう仲間だもん。タフの意地悪。


「きれいで可愛いね!でも珍しいなら気を付けないとね、シエル」

 撫で撫で嬉しいよ。ぽよん…サナエありがとう。

 大好きだよ…ふにふに。

「うふふっもう…甘えたさん」

 えへへっ

「うふふっ」


 その後しばらくタフのご飯は少なかったとか。

 そしてスライディング土下座をしてやっと許してもらえたとか…。


 スライムコーティングはどうしたかって?もちろん何もしてない!意地悪なタフはもう少し暑い思いをすればいいのだよ。私は心が狭いのだ。

 そんなこんなであっという間に見えて来たよ!マイヤーの城壁が。

 いよいよだね!鍛治の町…筋骨隆々なおじ様たちが汗をかきながら…良き。良きだよ!

 ワクワクする。


 レイキもサナエもワクワク顔で可愛いね。

 どんな出会いがあるのかな…?

 私は安定のおとんなタツキ、ではなくタフと手を繋いでいる。タツキはサナエと並び、レイキは御者台だ。

 御さないけどね!

 私がタフと手を繋いでいるのはマンティがいるから。ライオンが悠々と歩いてたら焦るよね?だから、私の隣をマンティは歩く。私はその背中に手を置いて歩く。


 ほら、こんなにおとなしいよー大作戦。

 門が近づく。まだ陽が高いから門には誰も並んでいない。でもね…やっぱりか。

 なんか人が走ってくる。タフを見上げる。

「止まろう」

 頷いてマンティを撫でる。ゆらゆらしっぽは楽しいと訴える。


 いかにも門番風の人が少し離れたところで止まった。

「私はマイヤーで門番を務める領軍第二部隊のサーマル隊員であります!あなた様はグスタフ殿とシエル殿とお見受けいたします!!」

 敬礼された。

 タフと顔を見合わせる。


 隣の人はいかにも商人なおじ様。

「私はリーブラン商会のマイヤー支店を任されているブブカと申します。レイノルド様より申しつかっておりまして、お待ちしておりました」

 軽くて頭を下げる。

 渋イケメンさんだ。あごひげがダンディーでスマート。なのにブブカさん。鳥人かな?

(ぶはっ…)

(鳥人…)

 レイキの吹き出しととサナエの呟きは健在だね。


「いかにも、俺はグスタフだ!」

 私のことは一旦触れないでおく。ダンディーブブカさんは納得したようで

「ようこそマイヤーへ。宿をご紹介しましょう。お取引も致したいので是非」

 ダンディーブブカのリアル揉み手…貴重かも。

(ぐはっ…やめろ)

(ダンディーブブカ)

(おい、ゲッツ風に言うのやめろよ!)

(やめてくれ…一発屋)

(ゲッツ…)


 カオスだね?

 タフはこの会話を聴いてないから

「よろしく、だよ?あぁこの子の名前は安易に呼ばないでくれるかな?僕の大切な子なんだから」

 やめて?サーマルさんが真っ赤になってるよ。もう。

「タフ、マンティの事聞いて?」

「あぁサーマル君、この子はどうしたらいいかな?」


 そこでようやくマンティに気がつくサーマル君。

「な、な、な…」

 緊張が走る。やっぱりライオンはダメかな。

「な、なんて凛々しい!」

 ガクッとな。意外な反応だ。

「従魔登録を冒険者ギルドでしてくだされば大丈夫です!」

「なら街に入るよ。ブブカ殿、先に冒険者ギルドに寄りたいのだが」

「もちろんです!ご案内します」


 ビシッと敬礼したサーマル隊員に付いていき、門のところで商業ギルドのカードをタフ以外は出した。タフは金色に輝く冒険者カードだ。

 すんなりと入れて冒険者ギルドに向かった。





ライオンは魔獣扱いなんだとか…



*読んでくださる皆さんにお願いです*


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